大浴場の湯舟に 天井から一滴、水滴が、 落ちるときに残る 余韻が いつまでも 耳に残る。 夜の深い時間に 眠れず悩む少年が スマホのブルーライトの中に夜の透明な海を見るとき、 コーヒーペーパーから 滴が ポタポタ落ち マグカップに黒い液体がたまる。 燃えるような昼間に 白い 砂漠が干上がり 全部、上昇し始め、 濃い青空に吸い込まれるとき、 木製テーブルにある 少年が書きかけた ソネットの紙のうえを 未完成なまま 風がすり抜け 端っこまで届くと 決して触れることのない 永遠
汗をかかずに 走り続け 生きていく 1回生まれて 1回死ぬまで 地球の上。 どこへでも行こう 私たちが人生 さよならだけが人生 だから 私は、 それより 早く 走り抜けて。 そう ときにはメロスのように ときにはカールのように 走り 走り抜けて 一生懸命 だけど 決して 汗はかかずに。 クールな顔で 燃え盛る灼熱をくぐりぬけ 無意味に 熱い海岸をのたうち回り 激しく叫び走る! ぐるぐるまわる 太陽は真上にあり 見つめる ぐぐっと 目をつぶらずに。 まあ、 されど 青
田舎の家を通り抜ける風が さりげなく 窓際にぶら下がる風鈴を鳴らし 飛び出していく 時は過ぎ去り 幾年も幾年も 経ったみたいに 長くだらだらと 布団の中で眠る僕は、 いつまでも起きない いま、緑色の草原を駆け抜ける風の中では、 遠い記憶が薄れていく そう、 バイクで夜中を駆け抜ける16歳の日々は 夜の街の尖った光みたいに、 油断したら絶望が襲い掛かる 目玉のような闇を照らすフロントライトは いつでも派生形だ、 ガードレールめがけて突っ込んでいく スピードの中で、 だけ
あっと言う間に 私の心を魅了した あの新しい言葉の連なりは、 思いついた瞬間に 飛んで行き もはや 手が届かないだろう 世界の果てで それはもう、 美しい 一輪の 花を咲かせたという。 丘の上で発見した風景は、 まるで新しい光の建築物、 イメージが舞い、 新たなひらめきが ひだまりの 始まりの 真っ只中で 息づき 成長する。 脳回路がどんどん拡大して 電流が駆け巡ると、 いくつもの古い時計が次々とまり、 人間の記憶も次々と失われ、 だが、そのおかげで、 次の日、 新しい物
新しい言葉の連なりの ワクワクするような 響きとストーリーをのせた あの風がが好き あの風は そのまま 世界の果てまで 届いたのち ぱっと ぜんぶ 花開いたという きみのイメージは、 きみの輝くひらめきは、 ナビロンの川を越えたところで あたたかく 体験したことのないやさしさで 大いに 祝福される かちゃっと 物音がして、 パタッとドアが開き、 隙間から入ってきた 風が、 肘かけ椅子をさらっと、 揺らし、 うとうとした 少女は にっこり 幸せな夢を見た
近頃、家中が静まり返っている、 1つ1つの音が妙に響いている、 それでしばらくして またいつもみたいに 朝のアラームが鳴り響く。 呼吸、きしむ足音、 食べ物を咀嚼する音、 くしゃみ、 鼻をかむ音、 カサッという音、 詰め切る音、 静寂だから どんな音でも 聞こえてくる 呼吸の音。 ドアの開く音、 冷蔵庫を開ける音、 コップを出し 水を注ぐ音、 かすかな咳、 ガスコンロの火がつき、 それから消され 歩く足音。 顔色は良くはない 若干、青白いだろう。 サプリメントが日に日に
「勇次」は長渕剛により1985年に作られた。 この曲を聴くと 10代の頃によく見た風景や感情がよみがえる。 広い原っぱやガソリンスタンド、 タバコの自動販売機、 ビールやジュースが置いてある小さな酒屋、駐車場、 学校のグランド、 下校の道、公園、駐車場、 学校の生徒たちが夕暮れ時を歩く、黒影と眩しい赤い光。 私は取り残されたまま、家に帰りたくなく、だけどやることもなく、 会う人もおらず、 ぼんやりするばかりだが、 勇次は汗をかき全速力で 走り抜けるだけ。 私はちょっぴりノ
目が覚めました いつの間にか カーテンからもれる 月の光が まぶしく とても 綺麗で。 ゆっくり ゆっくり 風が 入ってきては、 やんわり とおり すぎていく。 ベランダに出ると 強く、 見たこともないほどに 月の 光が ぱっと輝き、あらゆるものが溶けて、 世界は とても やさしく 静かで。 とおい道端で ニャーと鳴いた 猫は、 黒い影 残し どこかへ さっと 去ってゆく。 残された 夜は とても 長く ずっと 深く 所属もなく そのまま浮かび。 そういえば わたし
なぜ 懐かしいと思うのだろうか なぜ あのときに帰りたいと思うのだろうか 過ぎ去った日々 どこにもない世界、 忘れられる世界、 匂いや声や形、 手触り、温度、 ぜんぶが消えていく 忘れていく 吐息も くちびるも なくなっていく 笑い顔が 泣き顔が、 すべての表情が、 消えていく 忘れていく 忘れられていく
飲みかけのコーヒーはまだ暖かかった 一瞬のような 長い年月が過ぎたような 生ぬるい まどろみの後で、 悲しかったような 楽しかったような 気がするものの よくわからず ただただ眠く 何もない一日、 まっしろな世界、 あぁ、 恋しいあなたはどこへ行ってしまったのか。 それはまるで色のない絵画みたいで つまらない 日曜日が来たって あなたがいなければ 退屈なだけで 湿った薪みたいに 燃え上がらない。 僕は時に 何とも嫌らしく笑い 嫌われる ここはどこなのだ? と問いかける 時
ご飯ならゆっくり 噛み味わい、 決して食べ過ぎず、 お酒なら 味わい 飲み過ぎず。 起きて寝るまでの 限られた 時間の中で、 自分というものをしっかり捉え、 生きていく。 一つ一つ 諦めず 作っていく。 言葉を紡ぎ 心を寄せて 愛し、 敬い、 感謝し。 太陽が昇り 太陽が沈み 風が吹き 風がやみ 毎日を そんな風に 繋がって 過ごしていきたい。
ああ、こんなときには 優しい歌を聴かせてほしい、 春の夜の 生ぬるい 風みたいに、 音なくハラハラおちる 桜みたいに、 どこまでも続く 海の、 波立つ 音みたいに、 遠く見える 漁船か、 見知らぬ国の明かりみたいに、 真夜中に めくられるページの音みたいに、 犬が ときたま つく ため息みたいに、 優しい 歌を 聴かせてほしい ああ、 こんな、 ときには、 夜の 空すら まぶしく、 すべてが 繋がったようにして 関係性を 構築し 深海の 構造物を夢見る、 きっと 明日は
とうとう終わりだ、 まるで、 夜の淵に落ちたような、静けさで、 カーテンの向こうでは雨が降っているから、ゆらり、 ゆらり、 湿気を孕んだ、ぼやけた 月明かりのなかで 生ぬるい風が入ってくるから、 一体 どうしたことか、 君の目にはまるで生気がないじゃないか、 肌は青白く、不吉そうに未来を見ている だけでは そうさ、 震えてしまうから いま こうして 抱き合うか? 大丈夫だ きっと 大丈夫だ 人知れず自分が情けなく泣いたこともあった、 力が入らず食欲もなく、だけど、君には
日の当たる窓際でまどろみつつ、 外の流れる風、揺れる葉っぱ、 どこかしらから反射する光を見つつ、 過ごす 昼過ぎには 今日は昨日に比べていかにがんばっているかを列挙し、 自分を褒めた 朝を1時間も早く起きた 腕立て伏せを20回多くした 犬にご飯をあげた 家族の食べた食器を洗った クライアントとの会議でおっ!ときっと思わせたであろう ナイフのような発言を3度した 昨日よりも今日、ささいではあるが、 悪くなるよりはいい 一日、一日がどんどんつまらなくなってくることは 私が
あぁ、 私は恋について語ろうと思う! 七つの海を渡り、38の国を旅してきた サファイアのように輝く恋、 花火みたいにはかない恋、 マンゴーみたいにぬるぬるした恋、 私に語られた甘い言葉の数々、 あなたに見せたかった 美しいドレスを纏った私を 王族たちがこぞって惚れた私を まるでオイディプスのママのように悲しげに夜を見つめ、 月光に照らされて ときには まるで楊貴妃のように華麗に舞った、 この私を。 あぁ、 流れる星はいつもきれいで、 世界はとてつもなく広く、 体を通りすぎる
坂道で、 君へ話そうとしたけど、 話せないでいた。 今日のことや昨日のこと 未来のことを 話そうと思ったけど。 そんなとき、 街路樹は 不吉そうに 黒く 笑うように揺れていた。 なぜだか ずっと震えてしまって 一人でいると 嫌な予感がしていた。 坂道で、 歩いていて あとまだもう少し、 終わるまでには 時間があるから。 きっと、 坂道が終わるまでには 君に何か話せるだろう。 人生は夢みたいに過ぎていくし、 忘れては覚え、 覚えては忘れていくけど。 きっと このま