見出し画像

飲みかけのコーヒーはまだ暖かかった

飲みかけのコーヒーはまだ暖かかった
一瞬のような
長い年月が過ぎたような
生ぬるい
まどろみの後で、
悲しかったような
楽しかったような
気がするものの
よくわからず
ただただ眠く
何もない一日、
まっしろな世界、
あぁ、
恋しいあなたはどこへ行ってしまったのか。

それはまるで色のない絵画みたいで
つまらない
日曜日が来たって
あなたがいなければ
退屈なだけで
湿った薪みたいに
燃え上がらない。

僕は時に
何とも嫌らしく笑い
嫌われる
ここはどこなのだ?
と問いかける
時には
良い人そうな顔をして
まじめそうに
演じながら
空白な部屋で、
音のしない時計を見て
白で描かれたカレンダーを見て
僕の思い出を
白く塗りつぶす
たまに
僕の良い人そうな演技を
見破ってくる人がいる
そのたび
僕はどきりとする。

本は途中で読むのをやめる。
コンドミニアムを1か月
借りてみる
何も残らない
ことを
知らない人は
もったいないと言う
おそらく
それはどうでもよいこと。

残る半日
映画は一人で観るのが良いと思うし
できれば暗がりで息をひそめて観ようと思う。

自分の日常は観ることも
残すこともできないが
映画は何度も観ることができる
暗闇で光る
日常
はなんだか
宙に浮かんだように夢物語だ。

私は良い人でもないが
良い人のように思わせている
スパイのようにだまして
私は愛想良くしている
そして
たまに
人に見破られる。

生きてきた人生は長いようで短く
短いようで長いが、
今に比べると純度が落ちるのは当たり前だ、
僕たちは
今生きて、今死ぬのだ。
おそらく、
確実とはいえないが
ほぼ間違いなく、
まだ今は死なないだろうと思いながら
今を生きている、純度百パーセントで。

あっという間だけれど、うたたねから目が覚めて、
コーヒーを飲む。
そう、
テーブルの上の、
コーヒーは、
まだ暖かかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?