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スマホや倍速では消化しきれない極上の視聴体験「VIVANT」

2023夏ドラマも出そろって1ヶ月。

その中でも(業界的に?)ひときわ注目度の高かった作品が、本作「VIVANT」。

パヤオの「君どう」と同じく、事前の情報がほとんど明かされなかったせいか、視聴率的には期待したほどではなかったようだが、無料配信の再生数がTBSドラマ史上最速で1000万回再生を突破するなど、後追いで注目を集めている。

ただ、注目されてから見られたことで変なバイアスが掛かり、何か高尚なものを見ようとして戸惑っている嫌いもあるので、これらから視聴する方のガイドになればと思い、記事にしてみました。


▼ロケだけじゃない本気の撮影

堺雅人を主演に、ドラマ『半沢直樹』シリーズで演出を手掛けた福沢克雄氏が原作も手掛けるオリジナルストーリーという触れ込みの作品で、共演に阿部寛、二階堂ふみを始め、役所広司や松坂桃李など、それぞれ主演級の俳優陣が名を連ねるなど、期待を煽りつつもドラマのあらすじなど内容については明かされず、謎なままだった。

そんな中、放送直前に番宣のスペシャル番組が放送されていて何の気なしに見始めたのだが、2か月半に及ぶモンゴルロケを敢行し、俳優陣が乗る馬は事前に撮影場に向かった調教師が現地の馬を数か月掛けて調教したとか、羊の群れに囲まれるシーンもトレーナーが長いこと訓練して道を覚えさせたとか、訳の分からないエピソードが語られるも依然内容は明かされず、その本気度に俄然興味が湧いて、本編も鑑賞した。

▼大画面が生きるスリリングな映像

ストーリーは007かM.I.シリーズかといったまさかのスパイものさながらのスリリングなアクションドラマで、1話はほぼ逃げているだけの内容ながら、モンゴルの壮大な映像が印象的で、ワールドカップや東京オリンピックを見越して購入した4KTVがコロナもあって今一つ活用しきれなかった中、初めて大画面のTV買っといて良かったわ~と感動した。

他にも、時折もう一人の自分が出てくる堺雅人や、誤送金の犯人は誰なのかといった謎解き、執拗に追ってくるバルカ警察や主人公たちをサポートしてくれるドラムなどの新鮮なキャラクターと、エンタメに徹した作りで飽きさせない。

▼俳優陣も生き生きとしている

自分は『半沢直樹』シリーズは見ていたが、俳優としてはどちらかというと阿部ちゃんの方が『結婚できない男』など、役柄に興味を引かれて見ることが多いのだが、今回は序盤同じくらい出番の多い二階堂ふみが良かった。

というか、正直これまで二階堂ふみの出ている作品をガッツリ見ておらず、失礼ながら出だしの頃の「宮崎あおいに似ている俳優さん」みたいな印象で止まっていたので、堺、阿部両名に挟まれてなお、現地になじんでる感のある堂々と落ち着いた演じ振りで、ともすれば荒唐無稽に見えてしまうストーリー展開をうまく引き締めていたように思う。

▼大らかな気持ちで楽しもう

すごいドラマの割に視聴率がそこまで振るわず、中身がないとか難しいとか分かりづらいとか難癖付けられているようで災難だが、そういう人は派手な映像と意味ありげな伏線に構えすぎているのではないかと感じる。

そもそも、バルカ警察のしつこさも強引だし、日本に戻ってからのサーバルームでの潜入劇も特別室で見つからなかったのはさておき、その後の脱出するまではスパッと描かれないなど、細かいところを言い出したらキリがない。

それよりも、自分も旅に出たつもりで見渡す限り砂の広大な砂漠に思いを馳せて、主人公たちと一緒に発生するトラブルにハラハラドキドキと一喜一憂して、新たな事実が明らかにされる度に「な、なんだって~!!」と気持ち良く騙された方が精神衛生上健全というか、楽しめると思う。

▼肩ひじ張らずに頭空っぽ

実際、何もない砂漠をさまよう映像で、中身がないとか話が進まないとか言われても、作り手としても「そうですけど?」という感じだし、これをあらすじだけ聞いてつまらんと言うのも(そこだけ切り取られると)「そうでしょうね」としか言いようがなく、時代には挑戦していると思うので応援したい。

時短、ファストドラマの観点でいうとタイパが悪いというということになるかもしれないが、1時間そこらでモンゴル2か月半の熱が得られると考えればこれほどタイパの良い体験は無いと思うので、知識としての履修ではなく、人生を豊かにするバカンスとして楽しめたら良いよねという印象でした。

▼ビバンババンバンバン

そんな「VIVANT」も、主人公たちが無事に日本に戻って、物語も後半戦に突入。
新たな出演者も発表され、これまでとまた違った展開も期待されるが、変に気負って見る必要はないと思う。

作り手が”ただの娯楽”として贅沢に時間と予算を使って作っているんなら、自分もこれまで通りライブ感のあるリアクションでその場その場を楽しみたい。

意外と「VIVANT」の意味も、「ハァ~ビバノンノ」くらいのものだったりして?

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