変わらないものなんて何ひとつない。
みなとみらいには、いつも気持ちがよい風が吹いていた。空が広いのがすき。そう思って歩いていた、20歳の頃。
あれから10年(え……笑)経っても変わらない風の匂い。近くなるランドマーク見つめながら、ゆっくり歩みをすすめる夕暮れの数十分。
こんなゆったりとこの場所を歩いたことないかもしれない、とそれでも原稿に追われながら頭の中で文字を拾う私は穏やかに思っていた。
けれどふと気が付く。あぁ、昔よりも空が狭くなったなぁ、と。
開発されゆく新しい土地。当たり前の風景、当たり前のこと。世の中は少しずつ変わっていくし、今と同じものなんてない。みんなも、私も、知ってる。
変わらないことなんて何もない。自分の心の変化すら時につかめないのに、その周辺がいつまでも変わってほしくないなんて傲慢かな。
遠くなってしまうと心までも離れてしまう。つなぎとめておいてくれる何かを探してもなくなっていたりして。
変わっていってしまうものが基本だからこそ、二度と同じ風景には出会えないとわかっているからこそ。それでも一緒にいようと変化してゆく人生をともにしようと言える友だちだったり、恋人だったり、仲間だったり家族だったりを私は、私たちは求めてしまうのかもしれない。
だからこそ、どこでだっていつだって変わらないハイクオリティを提供してくれる、なんて謳い文句やモノたちに、私たちはもう心奪われゆくことがなくなってしまったのかもしれない。
心のどこかで、気付いているから。
変わらないものなんてない。
不均一。いびつさ。目には見えない速さで変わってゆく季節や温度。
あぁすべてはいっときの個性になって。愛しいなんて言うけれど。
変わっていってしまうものたちと分かり合えない辛さや寂しさ。
手をつないで歩いていけたら。何を話そう、どこへゆこう。
心が何かが違うと叫ぶのならば、一度掴んだ手、離す勇気も時にはきっと必要で。
みなとみらい、ネオン光る夜の街の水辺、水面、あなたの目に映る観覧車。
そばで見守れないなら、遠くからふわりあなたの幸せを願っているわ。学生時代過ごしたこの街、久しぶりに歩けばいつも変わって。
あぁもう二度とあの頃の横浜には会えないと、そこに居た人たちの今にも想いを馳せる。
戻れない。戻らない。結局「今」から前に進むしか、人生には残されていないのなら。
進めばいいじゃない。
そうね、そうする。空虚見つめながら思う、春の風吹き始めそうな2月のおわり。ひとつの小さな、決意。
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