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心地よい風、鴨川に吹けば【日本・京都】

梅雨入りしたはずなのに、からり晴れ渡る京都の空。日が暮れるのに合わせて少しずつ曇っていったけれど、夏に向けて青々とし始めた緑と、ぼやけた白とオレンジのマーブルは美しくて、私はこのまましばらく眺めていたいなぁ、とその建物のなかで思っていた。

最近発売されたという京都のおしゃれなガイドブックは、知っている人たちの名前が誌面をところどころで賑わせていた。

あまりこの土地に詳しくない私は、行ってみようか、と足を向けたその先で、期待していた以上のすてきな外観と内装に「うわぁ」とひとり声を上げそうになる。

家を出たすぐそばに、その昔教科書で見たような絵画や、お寺、川の流れに、見慣れない字面。ちりめんじゃこが売っているよ、と知らせる看板に、花魁、舞妓、祇園、五重塔、八坂神社。

ここで暮らしていく人生は、どんなだろう? と、今までたくさん想像してきたけれど、どうしてかな。すごくリアリティを持った未来が見える気がしたのは、まだ昨日のお酒が残っているからかしら。

「ねぇ」と話しかけた3人はそれぞれにまったく違う顔を見せる。世界はいつも美しくて、けれど何かを決めるときは、いつだって「そこに誰がいるか」が最後のひと押しをする。

もう少し。もう少しだけ長く、この街の景色や風、温度や質感に触れていたいとあなたが言う。許すのならば、ここにいてみましょうかと、誰に許可をとるでもない私は、明日より先の世界に想いを向ける。


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