結局ひとは、無い物ねだり。
暗くなっていく空を見ながら、ガラス張りの部屋の中、広い天井の下、私は今日もパソコンを開く。
灯る明かり、回るシーリングファン、隣で笑う、知らない言葉の知らない人。
日本にいたって海外にいたって、今の私はとても自由だ。好きな時に好きな場所で、愛すべき仕事に囲まれて、また新しい目標をつくって。
けれどどうして、いつまでたっても心のすべてが満たされることがないんだろう? 「ねぇ今の自分も認めてみたら」と遠く過去に言われた言葉、もうずっと前のことになってしまって。
もっともっと、あれもこれも。ずっときっと、求め続けてゆくのだろう。けれどそれでいいのかな。今持っているものも数えて、大切にして、抱きしめないと、またすぐに手のひらから漏れていってしまったりして。
***
毎日まいにち、同じ場所へ、同じ電車で。3年先の未来が見えて、あぁきっと5年後も10年後も、私は同じ仕事をしてるのかなって。そう思っていた22歳の頃。
ふらり出かける海外の青い空、青い海。いつだって心の向くままに、と暮れる空の色の変化追いかけてまどろむ時間。焼けた肌からのぞく白い歯、ありきたりなことになぜか心惹かれてしまって、こんな生き方が地球にあるなら私だってしてみたい、しなきゃ死ねないと思った時。
ねぇあれから月日は経って。認めてあげても良いんじゃない。
***
家なんて安定なんて要らないのと叫んだって、1年放浪してみたら、また家がほしくなるなんて。
ふらりずっと、好きな時に、好きなように。
できればそこに、好きな人と、好きな場所で。
落ち着いて暮らしたい、とこんなに強く想う日がくるなんて。旅に出た日は思い付きもしなかった。そうだ私、旅が好き。この生えそうな根、ここから私、どうしようかなぁ。
今の土を、踏んで固めて。その上にもう一度積み重ねて、強く、深く。
大切なものを確かめながら、信頼と安心を重ねてゆけるように、もう少し今はきっと、進まなきゃ。
あぁこれ何の、話だっけ。隣の芝生はいつまでも青く濃く。すべてが手に入る日なんてきっとない。あれがいいなこれがいいなと言ったって、目の前にあることをぎゅっと抱きしめ、その道を歩くことが大事なのかな。
今の希望は、落ち着いて暮らすこと。
けれど放浪も取材も旅も、捨てたくない。
あれ?(笑) まぁいいか、なんだか最近いろいろあって目まぐるしくて、少し気持ちがぐるり回って。
結局ひとは、無い物ねだり。ただあなたに、会いたいだけかもしれないけれど。
いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。