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誰かと一緒に生きる旅と世界は、きっともっと綺麗だろう【イタリア・ローマ→日本】

美しくて、美しくて、うつくしい。心の底から震えるような、光きらめく世界を毎日のように見てきた。

空の色が移り変わっていくのが好きだった。太陽の光を受けて様々に表情を変える雲、その日の感情を反射するかのように色濃い夕焼けを映す波、やっと今夜も私たちの出番がきた、と少しずつ存在感を強めていく月と星。

雲の上から眺めるヨーロッパの山脈や、オセアニアの渇いた大地、インド洋の輝きに、移動するたびに変わっていく時差やことば、肌の色。私を見る眼差し、ファインダーの向こう側で進む未来。

たくさんの国過ぎゆくたび、捨ててきた「もしかしたらここで生きていくのかもしれない」という可能性。

サハラ砂漠の民の妻となり、ゆったりと歩くラクダの背の上、燃えるような朝陽と夕陽を毎日見よう。

夜は砂の上で焚き火をして、目を見張るような細かい刺繍がほどこされた絨毯に囲まれて眠る。

きっと君はその刺繍のやり方を、時がすぎるのに比例してたくさん覚えていくだろう。

そして僕は君に毎日愛していると言う。

……とモロッコのフェズ、遺跡の丘の上で夜景を見せながらその人は言った。(※ロマンチックではなくてこれを真に受けたらただの冒険野郎である)

「もしここで生きていくなら」と、本気で考えた街がいくつかある。

オーストラリアのバイロンベイ、チェコのプラハ、スペインのバルセロナ、そして安定のタイのどこかの街。

「君がもしもこの街を出ていかないでくれるのなら」と、彼ら彼女はいつも少し困ったように笑っていた。

数千枚、もしかしたら数万枚に及ぶかもしれない写真の束。気に入った土地で納得した値段で購入した、薄くてペラペラしたカラフルなワンピース。

世界中の作家が作ったピアスにバッグ、旅がしやすいぺたんこのサンダルや、時折ヒールを履いて出歩く夜。

自由にわがままに生きる」というよりも、私は「いつ死んでも後悔しないように」ときらめく世界を日々追いかけて。

手に入れたものや、自覚した自分がいつくかあった。その代わり、するすると手のひらからこぼれ落ちていってしまったモノやコト、手中に収めることができなかった、大切な恋や出会いもいくつかあった。

砂のようだ、と時折想う。

世界をめぐりながら日本から海の向こうへと移住した女性に、少なからず会ってきた。昨日、スペインで「明日月に帰るとしたら何をする?」と問うた時、彼女は答えを言った後、「あなたならどうするの」と尋ねてきた。

「明日、私が、月に帰ってしまうとしたら―――?」

とっさに「まだ地球に未練がある」と私は言う。1年前に聞かれた時は、「地球の裏側に飛んで(ブラジルかペルーあたり?)スカイダイビングでもしますかねぇ」と言ったんだけど、

なんだかもう「とにかくまだ見ぬどこか遠く」という気持ちの最大は、過ぎたように私は思う(よかった、やっとか…)。

落ち着いて暮らしてみたい、と心に決めて帰れそうでなんだか気分がちょっと軽い。

私がこの1年で訪れたのはたった20数か国程度だけれど、それぞれ1週間程度滞在して、街の数は国の数の倍以上あると考えたら、きっと20〜30年分の休暇くらいは、私は旅をしたのだろう。

愛する仕事と、カメラと共に。日本に会社がある状態で、なんて幸せな1年だったのだろうと、美しい景色に紛れこませてきれいにまとめようと試みる。

ありがとう、とことばを連ねるのは簡単だけど、これからの日々は去年を回収していく意味を持つのだろう。それをもって、やっとありがとうねと言える日が来たら、いい。

甘えに甘えて、自分を慰める時代は過ぎた。本当に大切なもの、失くす前に帰れそうで(いや一回失くしたんだけどまぁあれは、あれで)、間に合いそうでよかったと地中海の空の上超えながら考える。

さて、そろそろ31歳が見えてきた。なるほどなるほど、それは旅に出てから1年が経つわけだ。「いやだぁぁぁぁぁぁ」とか言っている場合でない。

女の賞味期限はクリスマス? 29歳のお姉さんに「見えません」なんて言わないで|伊佐 知美|note(ノート) 

次にやりたいことも、いつか実現させたいライフスタイルも、まだあるのだ。もしかしたらもう2回3回くらい、人生を大きく動かす日が近い未来にくるのかも、しれない。

その日まで、もう一度積み重ねることをはじめよう。追いついた、と私は思う。私がなりたい私に、追いついたぞ、と私は自己満足して、最後の夜はローマを歩く。

***

きっと私は旅を捨てることはできない。いつまで経っても「海の向こう側とともにある私」でありたい。けれどできたら、「私」を「私たち」に、私もしたい。

いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。