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伊佐 知美
2017年1月31日 21:55
朝起きて、あぁ今日も世界はまだぼやけている、と思って上半身を、ベッドから起こす。そういえば少し前、「伊佐さんは起きてすぐに、勢い良く立ち上がるからびっくりします」とみさきちゃんが言っていた。私たちは、よく仕事の話をじっくりみっちりするために、合宿という名で数泊の旅に出る。同じ部屋、同じ時間、同じ季節の風を感じて、ねぇこれは美味しいねとか、これは好きねとか、あぁあそういえば昔あれに夢中で、それが
2017年1月29日 23:06
好きな音楽をイヤフォンで聞きながら、会社の人たちとくだらないやりとりをslackでして、11インチのMacBook Airを見つめながら、海沿いのカフェでハイビスカスティーを少し飲む。「私この音楽が好き」「これからもっと、歌い手さんを取材したい」「あ、次のオーストラリアの取材は、ジャズシンガーさんだった」どうでもいいことを言い合いながら(正確には私が一方的に言っているだけ)、これから何
2017年1月26日 22:58
ひとり、オーストラリアの広い大地で、涙流しそうになる。空を見上げればフルムーン、星は瞬き、人々は笑う。あなたは、なぜたくさんの、本当にたくさんの国々から来た人々と酒を飲み交わさずに、ひとり。ひとり机に向かって、斜め下を向いて。ペンを持って、朱字を入れて、iPadを持って、電話をしながら。パソコンに向かって、原稿をカリカリ、パチパチ。薄い壁を隔てて、言語が交じり、グラスが小さく当てられる
2017年1月16日 22:06
「それはまるで、夢の景色のように」と、船に乗った帰り道、星空へと変わっていく夕焼け空を見つめながら、心の中で何度も、なんども繰り返す。昼から夕へ、夕から夜への、息を呑むような空、波、音の変化と調和。誰もいない無人島の海のビーチで、ひとり立ち尽くすのは私。止まらないのは、シャッターを押す指だけ。降り注ぐ陽射しに肌を焼いていたのは、ほんの1時間ほど前のことだった。信じられないほど透き通った、海
2017年1月12日 23:11
窓の外、通り過ぎてゆく人たち。足をそのまま出したような短い丈のワンピースを着た女性、なぁにそれ?と思わず聞きたくなるようなカラフルな動物が描かれたハーフパンツ姿の男性。上半身なにも着ていなかったりする彼や、それ欲しい、と思うようなバッグを持っている彼女。溢れる、色、いろ。美しくカービングされたパイナップルを、短い楊枝で一生懸命食べる、白い肌を焼いて少し赤くしてしまった肩を出した、西洋人の青
2017年1月10日 22:14
DVDが出たらもう一度観ようと思っていた映画『君の名は。』が、機内で観られると分かって『観ようかな』と思ってディスプレイの操作を始める。その日私は、中国・北京とタイ・バンコクを経由して、クラビからピピという島へと向かっていた。すべての航空券を予約したのは前日の21時頃だった。「明日の15時には成田空港から出発するのだ」と思うと、今からすぐに荷物を詰めなきゃ、という焦りはもちろん、ついにタイ
2017年1月4日 23:11
■Tomomi Isa|Travel & Photography書くことで生きていきたいと思って、実際に文字を書き始めたのは、今からちょうど3年くらい前のことだった。初めて手に入れた「ライター 伊佐知美」という名刺。そこから徐々に増えていく、「◯◯編集部」「◯◯編集者」「◯◯記者」「編集長」「サロンオーナー」という肩書たち。文字が書きたい。文章を綴りたい。誰かの心を動かすとい
2017年1月3日 21:35
「トミスラブ」という名前の黒いビールが、本当は一番美味しくて人気なんだよ、とその人は笑いながら言う。背景はクロアチアの首都・ザグレブの中心部、美味しいお店が並ぶ、緩やかな坂。「あ、あとお皿を2枚くださいね」と、あらかた注文を終えたあと、その人はウェイターに告げる。「これは、ジャパニーズスタイルだね」と言われて、一瞬何のことだろう、と首を傾げそうになる。「隣を見てごらん。ね、家族でも、カ