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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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2016年12月の記事一覧

手離して良かったと思える日が来たこと。

手離して良かったと思える日が来たこと。

街を歩いている時に突然、音がふっとすべて消えて。

まるで、そう。

映画館の最後列の真ん中で、ひとり。大音量で、爆音で音がするはずなのに、体が震えるほどの音が鳴っているはずなのに、すべての音が。消えて。

わああああ、と、振動だけが体に伝わってくるような、そんな感覚を、この夏、2回3回。いえ本音を言えばもう少し、覚えていた。

その時見えている画像は、目の前に広がる日本の美しい夏の風景だった。そ

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2016年に形作った「私のスタートライン」。

2016年に形作った「私のスタートライン」。

大学生を過ぎて、22歳、23歳、24歳。過ぎていく重ねていく日々を見つめて、ひとつ気付いたことがあった。

「あぁそうか、ここからの人生、自分から何かアクションを起こさなければ、肩書が変わっていくことはない」。

中学生、高校生、大学生。「学生」というラベルに守られていた私たちは、春夏秋冬、1年、2年経つごとに、3年生、4年生と肩書が変わっていく。

毎日、まいにち。同じ景色を見ていても、必ず次の

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物語を紡ぐひとになりたい。

物語を紡ぐひとになりたい。

物語を紡ぐひとになりたい、と思った。

晴れた日に歩く知らない街、知らない道。けれどここは日本だ、と思いながら、今その通りを歩く不思議を憂う。

何がしたいんだろう、何を目指したいんだろう、次は何をするんだろう。

考えても答え出ない日々たちは、考えることをやめて世界を感じることに徹したいと願う。

物語を紡ぐひとになりたい、と、とある晴れた日、日本語がよく通じる知った街を通り過ぎながら、思う

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旅の始まりにさぁ還ろう【ニュージーランド→オーストラリア】

旅の始まりにさぁ還ろう【ニュージーランド→オーストラリア】

オセアニアで過ごした約2ヶ月は、よくジェットスターに乗ってこの風景を見ていたな、と少しずつ振り返りを始める。

再びの旅の終わりの気配が濃くなってきた。明日私は、一旦日本へ帰る。予定していたわけではなかった。けれどふと、12月の半ばに、月末、帰ろう、と思ったのだった。(年越しの海外to海外の移動が、こんなにコスティーだったなんて……)

***

昨夜、午後21:30。日が暮れた直後のニュージーラ

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人生で一番を更新する花畑とドライブロード【ニュージーランド・テカポ→マウントクック】

人生で一番を更新する花畑とドライブロード【ニュージーランド・テカポ→マウントクック】

テカポからマウントクックまでの片道100キロの道のり。心奪われる景色の度に車を停めていたら、いつまでも前に進めないと思って途中から停まるのを止める。

いろんな花畑を見てきたけれど、満開のルピナス。どこまでも続く。こんなに長く。

花の盛りが好きな私(若者の頃からおばあちゃんのようである)。ヒマワリ、芝桜、藤、コスモス。今までたくさんの花の盛りを見てきたけれど、ルピナスのむせ返るような香りには何者

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そこはまるで夢の中を歩いているような。【ニュージーランド・テカポ】

そこはまるで夢の中を歩いているような。【ニュージーランド・テカポ】

そこに着く直前に、血を吐くような1年、と形容したことがあって。「では来年は血湧き肉踊る年に」と言われた直後で、私はそれだからなのか、到着した瞬間に「体内の血液が蒸発して、浄化されて、そして入れ替わるような」イメージを抱いた。

どこまでも続く真っ直ぐな道。「70キロ先を右折」右折したらば、「40キロ先を左折」。そんな風に真っ直ぐな、真っ直ぐな一本道を、300キロ走ってきた先に見えてきた、テカポの湖

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北半球と南半球をつなぐもの【ニュージーランド・クライストチャーチ】

北半球と南半球をつなぐもの【ニュージーランド・クライストチャーチ】

飛行機が到着して、CAに挨拶をして到着ゲートに向かおうとするその一瞬、外気を感じる。

寒っ…と思う夜中1時のクライストチャーチ。初めて降り立ったニュージーランドは、まだ空が暗くなりきって間もない夜のことだった。

明るくなるまで空港で待つか、と考えながら、WiFiをつないでこれからの行程を考える。眠くて頭が働かない。けれど、今日の宿すら決めていなかった私は、せめてどの方角へ向かうかを決めなければ

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さよなら大好きになった国【オーストラリア→ニュージーランド】

さよなら大好きになった国【オーストラリア→ニュージーランド】

流れていく時間を掴みたいと、何度努力を重ねてみても、止まってはくれない。

美しいなと、嬉しいなと思っても、やっぱりすべては流れていってしまうから。であれば今この瞬間を精一杯楽しんだほうがいいなって、いつもいつも、思っている。

雲一つない空が広がるオーストラリア。もちろん曇りの日だってたくさんあったけれど、思い出すのはいつだってきれいだったその日、その瞬間、光っていた何か。美味しかった、楽しかっ

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幸せな数日間を過ごしていた【オーストラリア・バイロンベイ】

幸せな数日間を過ごしていた【オーストラリア・バイロンベイ】

誰も居なくなった家の中を通り抜ける風は、なんだかいつもより涼しい気がして、ベッドの広さも際立って見えた。

同じ街に戻って旅をする。ことは、こんなに楽しいことなのか、と私はまた新しい人生の遊びを見つけた気分でこの数日間を過ごしていた。

バイロンベイ。

いつかどこかに、腰を据えて暮らしてみたいと。私はこの旅を妄想するよりもずっと前から、思っていた。

遠くから吹く風。刻一刻と変わる海と空の色。ゆ

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一言ではとても言い表せないけれど【オーストラリア・シドニー】

一言ではとても言い表せないけれど【オーストラリア・シドニー】

シドニーという街は一言ではやっぱり言い表せなくて、何かを言うためにはもう少し、この街で暮らさなくてはいけないなぁ。と思うほどには、どうしてもここは今までの場所に比べて都会だった。

歩いても、歩いても街が続いて、けれど港街だからか、夏の始まりの季節だからか、風はとても気持ちよかった。

何かを食べようと思ったら、オージービーフのハンバーガーから美味しくておしゃれなパスタのお店、道を歩けばタイ、マレ

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