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リアルタイムのリモートセッションの成功例1

葛藤からの提案

 ミュージシャンの仕事、と聞いてどんな内容を思い浮かべますか?

 歌手や楽器演奏、作詞作曲など、楽曲制作が分かりやすいかもしれません。しかし昨今の音楽ビジネスは、それら作った音楽を発表する場=コンサート、ショー、イベントの仕事が売上に関しても大きな位置を占めています。現在、新型コロナ感染拡大防止としてコンサート、ショー、イベントの自粛が行われているのは、皆さんも聞き及んでいるかと思います。
 この自粛制限により仕事ができない人は、ミュージシャンだけではありません。コンサートには、舞台監督、演出、照明、映像、音響など、多種多様なセクションのプロフェッショナルが集まり、その上でミュージシャンがステージで最高のパフォーマンスを発揮して1つのエンターテインメントを作り上げているのです。
 つまり、とても多くのミュージシャンやスタッフが、生活の基盤を脅かされているのです。多くのプロフェッショナルがフリーランスとして、自分の能力を頼りに戦ってきた結果であり、知恵と情熱で積み上げてきたものが実行できないばかりか、大きく崩されてしまうかもしれません。
 私もまだまだ若手の域を出ませんが、10年以上この音楽業界にお世話になり、プロフェッショナルな技に魅了されてきた自分が、何かできることは無いのか?  少しでもみんなを元気づけることはできないか? と思ったのです。
 そんなことは、おこがましい、自分がやるべきなのか、葛藤もあってなかなか1歩を踏み出すことを躊躇していましたが、この業界には沢山の恐るべきプロフェッショナル達(敬意を込めて)がいるのをいつも目の当たりにしてきたこと、そのプロフェッショナル達とまた一緒に最高のエンターテインメントを作りたいと、この自粛期間ずっと考えていました。
 だったら自分ができる事は何なのか? 自粛の中でもプロフェッショナル達と一緒にエンターテインメントは作れないのか? 指をくわえて見ているよりは梨の礫となってしまってもいいじゃないか、まずは現時点で考えついたアイディアを投げかけてみようと思い、この記事を書くことにしました。

”生”のライブをリモートで

 今回私が考えたのは、コンサート、ショーなど、先述のとおり、多くの音楽家、スタッフが関わるエンターテインメントを、自粛の中でも(離れた場所にいても)に実現できないかということ。緊急事態宣言が解除されたとしても、恐らく、我々のエンターテインメントが元の状態に近づくことさえ、長い時間がかかると予測されます。
 多くの人が音楽に勇気を与えられ、またライブを見たいという声も聞くと、リアルな会場ではなくとも、リモート・セッションによるライブを届けることで楽しんでもらいたいと思いました。確かに、現時点でも”リモート・セッション”という、多くの動画を見ることはできます。しかし現状でできるリモート・セッションとは一人のミュージシャンが録音した音を次の人に渡し、それに対してまた録音して音を重ねる・・・を繰り返して構築した”レコーディング”なのです(もちろん素晴らしいセッションは多くあり、私も楽しませてもらっています)。
 我々が目指したいのは、”生”のライブです。つまり、アーティストはもちろん、サポートミュージシャン、演出、音響、照明、映像などのプロフェッショナル達の力を結集させた、これまで作り上げてきたエンターテインメントを、リモートでやろうということ。やはり、生のライブをすることによって生まれる一体感、一度きりのステージ、予測不可能なハプニングを含め(期待し?)、多くのファンが足を運んでいたのではないでしょうか? そんな熱い想いとプロフェッショナルたちの作り上げたステージとのぶつかり合いを、形は変われど目指したいです。
 これは、ファンの皆さんも楽しんでもらえる一方で、我々音楽家も活動ができて、ミュージシャン、スタッフの生活の支えになると思っています。この形は、自粛が溶け、また多くの人達がコンサート会場に集まれるようになったあとでも、1つの表現の形として残っていくものと予測しております。

リモート・セッションの実現

 さて、実際にどのように”生の”ライブを、リモートで実現したら良いでしょうか? 先に書いたとおり、ミュージシャンが順番に録音していくことはそれほど難しいことではありませんが、遠隔によるリアルタイムの演奏を実現するのは、かなりハードルが高いです。
 みなさんも、最近はZOOMなどでミーティングやオンライン飲み会などしたことがあると思いますが、複数人が同時に喋ったときの声のかぶりや遅延が気になったことはありませんか? 試しに手拍子しながら、同時に合唱などしてみてください。恐らく放送事故並みの状況が生まれると思います(笑)。
 その理由としては、インターネット上では、基本的に音の遅延が発生する、ということです。多くはネットワーク回線の問題ですが、我々がパソコン上で音楽を作る際に、デジタル上の処理で音の遅延を減らすことができます。しかし、それを行うにはパソコンのスペックも必要とし、低スペックのパソコンですと、音の処理が間に合わず、ノイズが乗ったり音が途切れたりしてしまいます。
 そもそもリモートによるセッションが実現できないことには、今回の企画は成立しません。この数週間、色々調べてきましたが、なかなか目指した事例が見つかりませんでした。我々がまず目指していたのは、バンドによるリモート・セッションです(2人など、少人数でしたらうまくいっている事例もありました)。
 そんな中で目をつけたのが、YAMAHAからリリースされている、リモート・セッション用のソフトウェアNETDUETTO β2でした。このソフトウェアは、ネットワーク上のセッションでできるだけ音の遅れを少なくすることを目指し、リアルタイムによるセッションを実現可能なものです。このソフトは、どちらかというと、”セッションを楽しもう!”という方向性で作られたものだと思います。もちろん、そのまま使ってみると、セッションを楽しむことができますが、我々が目指すのは、”プロフェッショナルなセッションを魅せる!”ということ。つまり、音の遅延をなくすのはもちろん、演奏技術や音質までこだわりたかったのです。
 そして、我々はひと工夫もふた工夫も研究を重ねることで、”セッションを楽しむ”ではなく、”セッションを魅せる!”レベルまで構築することができました。
 ここに、一つの私達なりの例をお見せしましょう。こちらはよく見る、分割された画面の動画ですが、すべての人間が別々の場所にいた上で行った、リアルタイムによるリモート・セッション動画です。各楽器の音を後から重ねたり、編集したりすることは一切していません。

いかがでしょうか。
 この音質、音数でのリアルタイムによるリモート・セッションは珍しいのではないかと思います。 それくらいの自負を持って、本動画を公開しました。
 次回は、本セッションの詳細について書いていこうと思いますので楽しみにしててください。

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