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35歳からのウソ日記124『チョモランマを越えたピエロ』

2020年9月29日

あなたから見て右側は、誰かから見て左側である。

あなたが見ているピエロは、あなたがピエロに見えている、かもしれない。

滑稽な格好、行動、言動で人を楽しませるピエロ。

初めて見たとき自分がこんなにも笑うことができるんだと涙を流しながら思った。

涙が出るほど笑っていたのと涙が出るほど笑えていることに感動したのが混ざって流れた涙である。

私は極度の恥ずかしがり屋で自分の感情を解き放つことが出来ない。

なぜかと言われても分からないものである。

よく感情の起伏がないと思われるが、表現できていないだけで心の中では喜怒哀楽が大暴れしているのだ。

そんな私の喜怒哀楽の楽を解き放ってくれたのがピエロだった。

そして私はなりたいと思った、ピエロに。

私のような人を涙が流れるくらい笑わすことができるなんて、素敵やん。

そう思った。

それとピエロになれば喜怒哀楽の全てを解き放つことができるようになれるかもしれない。

マクドナルドのキャラクターみたいな格好すれば違う自分に変身できるに違いない。

しかしそう簡単なものではなかった。

極度の恥ずかしがり屋にとって、あの格好をする恥ずかしさという壁がチョモランマ高いのである。

買いに行くにしても店員さんに私みたいな人がピエロの格好買うんだと思われると思うと恥ずかしい。

なら自分で作ってみればいいと思ったが、出来栄えが良くなかったらより恥ずかしい。

そもそもだが、どうやったらピエロになれるかも分からなかった。

調べてみるとなんとピエロの養成学校がある。

これしかないと思った。

でも恥ずかしくてピエロの養成学校に行くとも言えない。

私が出した解決方法は服飾の学校に行くというウソだ。

服飾なら変な格好をしていても課題で作っているだとか、ピエロのようなメイクをしていてもメイクアップを勉強している人の練習台になっているとか色々と言い逃れができるからである。

ピエロ養成学校ではメイクの仕方から大道芸やらいろんな表情の作り方なんかも習う。

学校にいるときには喜怒哀楽が解き放たれているとまでは言わないが、表に出ている。

楽しかった。とにかく楽しかった。

しかし学校の外に出た途端にいつもの自分に戻ってしまう。

そんな私を見かねたのか養成学校の同じクラスの女の子が学校の外でも仲良くしてくれた。

クラスの女の子なので外でもいつもの自分よりはピエロな自分になれる。

楽しかった。とにかく楽しかった。

そして楽しませたいと思った。

その気持ちは恋心だと後に気づく。

二人とも晴れてピエロの仕事ができるようになり、別のサーカス団だったがよく会って話をした。

その頃の私はもう極度の恥ずかしがり屋とはオサラバできている。

その子のおかげだ。

みなさんのおかげではなく、その子のおかげでした!である。

私は告白を決心する。

自分の大舞台があればよかったのだが、そんなにうまく事は運ばれないもので。

けれどその子の大舞台があったので、その後に告白をしようと思った。

舞台は無事に終わり、楽屋に挨拶をしに行った。

おめでとうと激励した後に少し外で話そうとまだピエロ姿の彼女を呼び出した。

ピエロの格好をした彼女と緊張いている私。

自分がピエロの格好をしていれば緊張もなくすんなりと告白できたのかもなと思いながら告白をドギマギしながらした。

彼氏がいる。

ごめんなさいとセットでそう言われた。

ピエロの格好でそんなセットを出されるとマクドナルドのセットを思い出す。

涙が流れていた。

ピエロに泣かされたのはこれで2度目だなと思う。

違う感情の涙だ。

いろんな感情を引き出してくれるピエロはやはり、素敵やん。

私から見た彼女はフリーだったが、彼氏から見た彼女は彼女であった。

私が見ているピエロの彼女は、私が弄ばれたピエロに見えている、かもしれない。

それでは また あした で終わる今日 ということで。

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