「編集者の読書論」

日本は、書店や図書館等、ネットも含めて、読書ツールは充分過ぎる程に揃っており、先進国だろう。しかし、読者という視点から見ると、“読める人”が少なくて、遅れた後進国なんじゃないだろうか。

ということで、本を作る現場にいる編集者から、読むべき面白い本を紹介する。

これまで著者が出会って来た各国の編集者の仕事を紹介するが、俺が納得したのは、出版を成功させる条件は、「とても面白い」ことと「とても安い」ことで、大衆にとって、難しい高尚な文学は無縁であって必要ない、ということだ。そもそも、第一級の作家の作品は、大衆に親しいし、理解できるものである。

そして、例えばロシア文学のように、やたらと長くて大作といわれる文学も多いが、大作に臨む前に、比較的、大衆向けに書かれた、優しい短編から読むことを勧めている。短編を読んで作家の“クセ”を知れば、次の大作に臨みやすいと。

次に、魅力的な読書論について、とにかく大量に時間を取って、片っ端から何でもかんでも、猛烈に乱読し、蔵書へのこだわりも壮絶だったという毛沢東から、やはり大変な読書家であったマルクスやレーニン、トロッキー、何よりも、読む者が主体で楽しく読めること、を第一の条件としたモーム、「できるだけ少なく読みたまえ!」といったヘンリー・ミラー、多読・乱読を戒めるヘッセ、そして、「まずは自分の頭で考える」読書を勧めたショーペンハウアーと、興味深いエピソードだった。

世界の編集者や作家の読書シーンから、個性ある書店と図書館、古典文学・自伝文学・児童文学の魅力を紹介した新書だが、俺が本と出会うのは、こういった紹介によるところが大きいかもしれない。

俺は比較的、昭和の日本文学が好きだけど、街に一件の大型書店とAmazonなどネット書店、ブックオフを含む中古本店、そしてデカい図書館があれば良いね。本を取り巻く環境よりも、本そのものに興味があるから。

知性は権力に勝る!
読書はスポーツ、いや武道だ、いや戦争だ!


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。