ファミマで買った物はローカル商店で見つかるのか
刮目してほしい。西暦2022年5月26日、とうとう我がまち中種子町(なかたねちょう)にファミマが開店した。
これで種子島にある大手コンビニは3店舗となる(全てファミマ)。
僕の自宅は島の中央部。これまでは夜中にアイスや激辛カップ麺が食べたくなったら車で往復60分すっ飛ばしていた。もうその必要もなくなるのだ。文明の進化とは利便性の進化である。この小さな島もまた、ひとつの文明開化を迎えたのだ。
なんでも揃うし24時間営業、こんなに便利でバチが当たらないだろうか?
そんなことを思いつつ商品を眺めている時に思った、ここで売ってる商品、個人商店でも買えるんじゃないか?
ファミマファミマと喜ばれてはいるが、我が中種子町には各地に地元住民に愛されるローカルな個人商店がいくつも現存する。大手コンビニほどの品数はないが、そこにはきっと人のぬくもりがある。温故知新。温めるべき古きは、ローカル個人商店にこそあるのではないだろうか。これこそ、コンビニの始祖なのではないだろうか。
そう思って僕は妻に「コンビニっぽいもの3つだけ買って」と心理テストさながらの指示を出す。そこで買ってきた物に類似している商品を、現存するローカル個人商店で買えないだろうか?全く同じは無理でも、同じような商品があるはずだ。
妻は意図の分からないおつかいに首をかしげながらも商品を選び始める。僕は車で待とう。
チャラチャラチャラ~ン、チャラチャララ~ン
店に吸い込まれていく客。おなじみの入店音。文明開化の音だ。車で待機する僕。三色の看板。開けた窓からタバコの匂いがする。これぞコンビニだ。
離島で体験しうる「なけなしの都会っぽさ」を五感で確かめながら、店を出ていく客を見守る。
~数分後~
妻が戻ってきた。
買ってきたのはこの3つだった。
良い、センスだ。「コンビニっぽいもの」というオーダーを満たしている気がする。同時に、なんだかワクワクしてくる。これらを僕は、ファミマ以外で探すのだ。ローカル商店のポテンシャルと品揃えを世間に見せてやることができるのだ。刮目せよ、中種子町の個人商店の品揃えを。
「さあ、反撃開始だ」
僕は車を走らせる。
ひとつめ:ウインナーパン
一つ目のお題は『ウインナーパン』である。コンビニのウインナー挟んだパンって、なんか美味しい。パキっとした快音が響くと満足度も比例して高まる逸品だ。さて、早速向かうべき個人商店を考える。こちらのデータベースを舐めてもらっては困る。僕は移住してまだ3年目ではあるが、山手線ゲームのお題を『町内の集落名』にした時の勝率は10割である。
10分ほど車を走らせ、心当たりの商店に到着した。
アイショップ石堂店だ。こちらの店は、あの『君の名は』『天気の子』などで爆発的な人気を博している新海誠監督が手がけた映画、『秒速5センチメートル』における聖地なのである。
そんな商店で見つけたパンはこれだ。
全く同じ物はやはりなかったが、これで代役は十分だろう。なんたって、パンで、間にウインナーが挟まっているのだ。ファミマでもし何かの買い占め騒動が起き、ウインナーパンが無くなったとしても安心だ。ここに代わりが居る。むしろこちらを買ったってなんらの遜色はない。
さぁこの調子だ。満足感を得るのも束の間、次の商品を探そう。
ふたつめ:コーヒー牛乳
コーヒー牛乳として言わずと知れた『マイルドカフェオーレ』である。これはスタンダードな商品。小さい頃から飲んでいる。なんともイージーな物を妻は選んだものだ。「こいつも楽勝だな」余裕に溢れた表情で次の店へ向かう。
辿り着いたのは日高商店。
ここは町の西海岸沿いであり、店のすぐ裏に日が沈む絶景スポットだ。
景色など気にもかけずに僕は店内へ進む。「いらっしゃい」おばちゃんが他のお客さんとの雑談を止めてつぶやく。頷いて入店し、お目当ての棚を探る。あった。
これだ。上述の映画『秒速5センチメートル』でも登場したというローカルコーヒー牛乳、「デーリィコーヒー」である。ただ単に同じ商品ではなく、類似して、かつ社会的な話題性も加味したチョイス。これは芸術点が高い。自信がどんどん湧いてくる。
飲んでみれば甘ったるいコーヒーの香りが口内に広がり、言われがたい癒やしを与えてくれる。これぞコーヒー牛乳。風呂上がりに飲みたいというよりは、学校の休み時間にちょっと遠い体育館の自販機まで買いに行って啜りたいような、そんな味。
なんという満足感だろう。これはお題のマイルドカフェオーレではない。ではないのだが、充足感でいえば引けをとらない。2店舗目にして気づいたが、個人商店ではファミマとちょっと違う商品が手に入るのが嬉しい。全く同じ物に対する消費など浪費でしかないが、これならば違う。僕はこの体験に支払う価値を存分に感じられる。
恍惚とした思いで車に戻る。さぁ、いよいよ最後だ。
みっつめ:銀鮭の塩焼き
最後にして、明らかにこれまでと違う顔つきをした商品が僕の前に立ちはだかる。
「生鮮食品はさすがに・・・」
思わず口の中でつぶやく。これはファミマのプライベートブランドだ。確かにコンビニに行くなら押さえたいジャンル。ファミマへ行った!という揺るがない証であり勲章。僕が何らかの事件に巻き込まれて容疑者になったらこれを探偵の眼前に突き付けながらこう言い放つ「ほらみろ!俺にはファミマに居たアリバイがある!」。そうして警察は地団駄を踏む。
・・・そんなことは言っていられない。銀鮭の塩焼き、銀鮭の塩焼き。ああ難しい。こんなものを置いている商店があるだろうか。人もまばらな個人商店で生ものを扱うだろうか?このままでは、、、あ!
そうだ、あるじゃないか!あそこにあるかもしれない!!
☆
ここが最後の戦いの場、すなわち、「終点」。
店内を抜けて右奥へ。
ここに・・・。
ここにきっとあるんだ・・・。鮭、鮭・・・!
っく・・・!ここまでか・・・。
これで許して。
★ ★ ★
結果
結果として、お題に対してこのように商品が集まった。
全く同じものを揃えることはできなかったが、終わってみればそれはむしろ良い点だった。こうして振り返ると、わが町の個人商店がいたく誇らしい。不思議だ。ファミマと争う必要なんてないんだ。みんな違って、みんな良いんだ。
この記事を読んでくれたみんな!ファミマももちろん最高だけど、こうしたローカル個人商店も、同じくらい楽しんでくれよな!
以上、
現場のマツモトキヨシからお送りしました。
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