見出し画像

絵本『ぼく』を通して感じた生のこと、死のこと

詩:谷川俊太郎さん、
絵:合田里美さんによる、
「自死」をテーマにした絵本、『ぼく』。
2022年1月31日初版発行、闇は光の母シリーズの3作目です。

先日注文していたこの絵本が届き、読んだ感想を記しておきたくなったのでここに残しておこうと思います。

〜〜〜

この絵本にはカタルシスなどはなく、ただ穏やかに淡々と描かれる日常と、「ぼく」の視点から静かに繰り返し語られる言葉が印象的でした。
「死」は覆らないという重みをずしりと感じる作品でもありました。

死んでしまえば
その事実が残るだけで
死の意味だの理由だの
どれだけ想像しても
それが真実かどうかなんて
永遠に確認のしようもありません。
でも、遺された人たちは、死んだ人たちの思いを何とか理解したくて、答え合わせのない問いを繰り返しながら、故人への想いや「死」というものと向き合っておられるのかなと思います。私自身も身内を自死で亡くした経験があるので、遺された者としての視点でこの作品を読みました。

本人にしか分からない
本人もよく分からないかもしれない
いろいろな感じ
いろいろな思いを懐にしまいこんで
だれにも打ち明けずに
その選択をした12歳の「ぼく」。
誰かの声だったかもしれない、
「ぼく」の声は、色々なことを考えさせてくれます。

鮮やかな、でも少し冷たさも感じられる絵と
淡々と語られる言葉とに触れながら、
感じて、「ぼく」に思いをはせ、理解しようと努める
そうした体験で自分なりの「生」や「死」を見つめていくことは、私たち一人一人にとって大切なことなのかもしれません。

日常の延長線上に
生きるも死ぬもあるのだということ。
生きていて
友達もいて
楽しい嬉しいと感じる瞬間も確かにある
けれども
ここからいなくなりたい
漠然と消えたい
そうした駆り立てられる思いもまた同時にあって
死は日常に近いところに漂っているのかもしれないという思いを抱きました。

と同時に、死んだら「楽」になるかもしれないというのは幻想で、果てのない宇宙に放り出されてしまうのか、何もない「無」になるのか‥いずれにしても死してなお終わりのなさ、途方もなさ‥そういう果てのなさを仮定するとそれもとても苦しいことだなとも思いました。

だからこそ、かけがえのない、けれど逃れたくもある「生」をどう生き抜くか。そこに踏ん張り続けることが大事なんだと思います。

この作品が今苦しみの最中にいる子や大人に届いて、何か救いのきっかけになるといいなと感じるとともに、
個人的には、苦しみや悩みがある子や人と、そばにいる人が一緒に読むといいのかもしれない、とも思ったりします。

読んだ後、この絵本ごと相手をぎゅっと抱きしめたくなる、そんな思いになる絵本でした。

https://www.iwasakishoten.co.jp/smp/book/b596583.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?