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水をこぼした娘を、僕はどう見守ればいいのか。

ガチャン

朝、洗面所で顔を洗っていたらダイニングで何かが倒れる音が聞こえた。
ダイニングでは4歳の娘がひとりで朝食を食べていたところだった。すぐに「あ、コップを倒して水こぼしたな」と解る。

そのうち困って、「パパ〜」と呼ぶ声が聞こえるだろうと思っていたがガタガタ音はするけど呼び声はいつまで経っても聞こえてこない。

「あれ? 水こぼしたんじゃなかったのかな」

歯を磨きながら、そっとダイニングを覗き込む。
娘は椅子の上に仁王立ちになり、腰に手を当てたまま何やら思案中。テーブルの上にはこぼれた水と、ちゃんと立ててあるコップ。朝ごはんのお皿と、タブレット。

わが家では、食事中はTVは見ないようにしている。そもそもテーブルの配置的にTVが見えなかったりもするのだ。
もちろんタブレットで動画を見るのもなし。
だけど、いまは妻が単身赴任中ということもあり、この期間だけという約束で朝食時のタブレットを解禁している。僕が顔を洗っていたりシャワーを浴びたりしていると寂しくなってこっちに来てしまったり、朝ごはんを食べないで遊んでしまったりするのだ。

つまり、タブレットで動画を見ながら朝ごはんを食べていてコップを倒して水がこぼれた、という状況である。

慌ててコップだけは倒れたのを直したけど、その後どうしたもんかと思案中なのだろう。

朝は忙しい。
だから僕は、さっさとそっちに行って文句のひとつでも言いながら、テーブルを拭いてしまいたい衝動にかられた。

「助けを求めずに椅子の上に仁王立ちになって思案しているということは、自分でどうにかしようと思っているんだろうな」
その時、僕の頭の中に子どもと接する時の3つのスタンスが思い浮かんだ。

それは、以前読んだ「こんな学校あったらいいな」と言う大阪の箕面子どもの森学園の取り組みや創立までのストーリーが描かれた本にあった。

子どもと接する時の3つのスタンス

親や教師が子どもと接する時のスタンスは3つのスタンスがある。

① 前に立つスタンス
② 側に立つスタンス
③ 後ろに立つスタンス
参照:こんな学校あったらいいな

①の”前に立つスタンス”は、やり方を教え、子ども達の手本となるように示すスタンス。
②の”側に立つスタンス”は、子どもと対等な立場になってともに考えるスタンス。
③の”後ろに立つスタンス”は、子どもの主体性を尊重し、なるべく口を出さないスタンス。

これらは、どれがいいと言うわけではなく状況によって使い分けていくのがいい。
娘が何かを思案している顔を見た時に、僕の頭の中にこの3つのスタンスのことがよぎったのです。

僕は、”後ろに立つ”スタンスで娘をしばらく見守ってみることにしました。

見守る楽しさ

こうなると、娘の次の行動が気になってきます。
何をするのかな、とワクワクしながら見守っているとテーブルの上のティッシュでテーブルを拭き始めました。
だけどティッシュは、すぐにベチャベチャになってしまう。これ見よがしに大きなため息をついた娘は「しょうがないなー」と独り言をいいながら幼稚園用のお手拭きタオルを自分で持ってくると、改めてそれで拭き始めました。

全然テーブルの上は水浸しだったけど、一通り満足したのか席に戻ると、今度はタブレットの位置を再調整。彼女なりに、もうこぼさないように工夫していると思われます。
正直、あんまり置き場所も変わっていなかったけど納得したのか大きくうなずくと、また何事もなかったかのように食事を始めたのです。


「出ていって、テーブルを拭かなくてよかったな」
再び歯を磨きながら、僕は心からそう思いました。
子どもの失敗に、大人が手を貸して助けてあげるのは簡単です。いや、この場合は助けてあげると言うよりは、後処理をする、の方が正しいかもしれない。

だけど子どもは「誰も頼れないんだ」と思えば自分の力で何とかしようとする。それは、中途半端かもしれないし事態を悪化させることもある。
そうだとしても、その中途半端や失敗をしないで、子どもはいつ「自分でできるようになるための練習や工夫」をすればいいのだろう。

3つのスタンスを臨機応変に使い分ける

今回のケースでは、僕は”後ろに立つスタンス”をとりました。

でも”前に立つ”のであれば、台拭きの場所を教えたり、拭き方を教えたりするでしょう。
”側に立つ”なら、「こぼしちゃったね。どうすればいいかな?」と一緒に解決策を考えると思います。

娘が、慌ててテンパっていたりしたら出ていったかもしれません。
だけど、仁王立ちになりながら思案している様子を見たら「ここは出て行かないで、自分でやらせてみよう」と思いました。できなかったら、僕を呼ぶだろうし呼ばれてから出ていったって遅くはありません。

***

「あー、もう、喉乾いちゃったなー!」
歯磨きを終えた頃、でっかい声で娘の独り言が響き渡った。
「ねえ、パパ。ちょっとお水くれない?」
自分でこぼしたくせに、偉そうに呼びつける。
「しょうがないなー」
僕が洗面所から出ていくと、
「あ、パパごめんな。ちょっとお水こぼしちゃって。でも、ほら、ちゃんと拭いたからいいやろ! ひとりで拭いたんやで!」
と、超ドヤ顔で自慢してくる。

水をこぼしたことなんてどうでもいい。ひとりで拭けたっていう自信が彼女の中に育まれたんだったら。

だけど、これが水じゃなくて牛乳だった場合。僕は同じ対処ができたかどうかは、かなり怪しいと思っている。


今日も、見に来てくれてありがとうございました。
だいたい、忙しい時に何かやらかすんですよね、子どもって。日頃のゆとりってだからこそ大事だなーって思うわけです。
ぜひ、また見に来て下さい。



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