日本文化の大きな特徴は「LIVE文化」!寿司屋と履物屋の共通点とは!?
メディアやコンテンツのプロデュースと地域・企業の「メディア化」を支援するトミタプロデュース株式会社の富田剛史です。LIB Lab(ローカル・インディ・ビジネス・ラボ)の主催もしています。
専門ジャンルを横断してこそ見えてくる「文化」の特長
トミタの研究テーマのひとつに「日本の文化」があります。
「文化」といっても幅広いわけですが、トミタの場合は、学者のように何か1つのジャンルを専門とするわけではなく、番組制作者の発想で専門を横断して考えるのが特徴です。
文化とはつまり「生活地域や嗜好を同じくする人たちの価値観や行動様式が、長年積み重なり形に現れたもの」ですから、衣・食・住から遊びに至るまで一見関係ないと思われるものに意外な共通点があったりします。
こうした多様な面を持つ「文化」の本質を考えるには、案外「専門」を外して眺めてみる方がよく見えることも多いんですよね。
トミタがプロデュースするネットのライブ番組の1つに浅草の老舗和装履物店 辻屋本店さんが月に1度配信する「ニッポンのポン」という番組があります。
毎回テーマを変えて、日本文化の芯にある何かを探るといった内容で、和装履物辻屋本店のメンバーが、テーマに添った別ジャンルの日本文化を担う方と公開で雑談します。
江戸前寿司は元祖料理ライブショー!?
先日、5月の回で取り上げたテーマは「江戸前寿司」。東京恵比寿の食通に人気のお寿司屋さん「鮨屋小野」の大将とのセッションでした。
その番組を制作して改めて思ったのですが、江戸前寿司ほどライブショーのような高級料理は世界にも類がないのではないかと。
お寿司屋さんとして小野さんが一番大事にしているのは「その日ハッピーになってもらうこと」だと言います。
会話しながら、体調や腹具合はどうか、何か記念日や大事なことはないか、一緒にいる人はどういう人か…などを読み取りながら、最適な提案やリクエストに応えて正にLIVEで握っていく…それが寿司職人という仕事なのだなぁと、改めて気づかされるわけです。
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https://youtu.be/iE261umT1DU?t=922
もちろんカウンターごしに見る手さばきや所作の美しさも重要で、お客は会話と手さばきと味の3点セットで「江戸前寿司の時間」を楽しんでいるのに違いありません。
オープンキッチンは、最近は西洋料理のレストランにも増えてきましたし、調理を見せるライブショーのようなコンセプトは広がりつつあるでしょう。
しかし、大体のレストランははじめにコースやメニューが決まりますから、例えるなら「セットリストが決まっているコンサート」のようなものです。
一方で寿司屋の場合はお客さんのリクエストを取り入れながらライブを展開する「ライブハウスのバンド」のようなものではないでしょうか。
下駄草履のお店とお寿司屋さんの共通点
台はシャリ、鼻緒はネタ!
そして実は、和装履物のお店も同じなんです。
出来上がっている商品を販売する靴屋さんと違い、下駄や草履を販売する和装履物の専門店は、本来はその場でお客さんの足に合わせて挿げる鼻緒の挿げ職人が居るものです。(最近はそういう店が少なくなりましたが)
下駄草履の足を乗せる部分を台、指を挟む紐を鼻緒と呼び、それぞれ別のメーカー、別の職人が作っていて、それを各履物屋の好みでバラバラに問屋から仕入れ、最終的に履物屋の挿げ職人が合わせて完成させるのが下駄や草履や雪駄の特徴。
ね〜、似てると思いませんか?お寿司屋さんと履物屋さん!
そう、台はシャリで鼻緒はネタなのです。
別々に仕入れた素材を店のセンスで組み合わせて、お客さんに合うものをお勧めしたりお客さんからのリクエストにその場で応えながら最終的な商品を目の前で仕上げていく商売。
この間お客様は職人の見事な手さばきを見ながら、自分だけの履物が出来上がるのをワクワクと待ちます。
そして、鼻緒をすべてきれいに整えた左右の下駄や草履を「はい、お待たせしました!」と向きあったお客様にポンと揃えて差し出す様は、まさに二貫ちょんと出されたお寿司屋さんのカウンター!
お寿司と同様に、和装履物を誂えるのもまたLIVEショーなんです。靴を買うのとはだいぶ違うと思いませんか!?
落語家も俳人もライブアーティストだ!
同じような事は落語にも言えます。
ホールなどの独演会では演目が決まっていますが、寄席の場合は師匠は楽屋でその日のネタを決めます。
自分より前に演じた落語家がどんなネタをやったのか、今日の客入り具合と客層の雰囲気を楽屋から見ながら、その日のネタを決めるのです。
時には「マクラ」と言われるネタに入る前のくすぐり部分をやって、反応を見てとっさに噺を変えることすらあるそうです。
これほどライブな「物語を伝えるエンタメ」ってほかにありますか〜?
さらに言うなら、「俳句」や「和歌」はライブ文学の極みでしょう。
その場で詠んだ作品が、即興と言うだけではなく、永遠に残るだけの芸術性を持ちあわせている。
こちらは漢詩の方が先輩かもしれませんが、いずれにしても日本人の「生好き」は間違いありません。
これだけ高温多湿の食べ物が腐りやすい気候の中で「刺身」や「冷ややっこ」など火を通さぬ食文化が発展しているのも、ドイツ人が驚くほど「生ビール」が好きなのも、きっと繋がっていると思います。
というわけで、日本文化の大きな特徴であり、その魅力を紐解くキーワードは「生が好き」なんですね。
この話は、まだまだ面白い切り口があるのですが、あんまりいっぺんに書いてもきっと消化できませんよね!ナマだけに。。。笑
日本文化はナマが好きの一席でした。
お後がよろしいようで!
この続きはまたいつか〜。
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▽トミタが毎週水曜日に出ているネットLIVE番組
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