見出し画像

読書「地下室の手記」

「地下室の手記」
著者 ドストエフスキー


内容に深く触れているので
未読の方はご注意下さいね


この本は面白くて一気に読んでしまいました。
書き方がとにかく読んでて楽しくて、
友達と喋っているような感じなのです。
被害妄想的なものの捉え方や自分の思いを
追求していく様子や
心に起きる非常に言語化しにくそうな感情の全てを、
見事なほどわかりやすく伝えられるのが圧巻です。

天才的な表現者が脳内を見せてくれている
みたいでした。

前半部分は自由に話したいように書かれますが
いちいち大爆笑する場面が多かったです。
多分これは私の謎の笑いのツボなのだと思います。
サーベルをガチャガチャいわせる将校が出てきたり(笑)
とにかく可笑しなことばかり言い続けた挙句
「自分が読者を笑わせる魂胆だと思っているんだろう」
とくるわけです(笑)

本当に作者がこの作品を通して言おうとしていることは
私には作者の背景を知らないため分からないのですが
背景が分かればもっと面白いのではと思いました。

この話は、「僕は病んだ人間だ」と始まります。
主人公の男は、酷い癇癪や皮肉で関わる人皆を
不快に感じさせ、人より上に立ちたいという
衝動に駆られ馬鹿げた行動を繰り返してしまいます。

自尊心が低く自分が蔑まれていることに
プライドが傷ついており、何年もその怒りにとらわれ、
また相談する人もおらず想像の世界が
癒しになっているような中で悶々と
憂鬱で怒りに満ちた日々を送っていました。

人を傷つける言葉を口にしている彼は同時に
自分を傷つけ、無意識に自分が傷ついている内面を
曝け出しており妄想染みていて、
深刻なほど病んでいます。

しかし彼自身は自分が馬鹿げた行動をとっていることを
自分で分かっていて、本当は自分が望んでいることも
何かを分かっているのだけれど、思うように行動出来ないのです。

自分自身に対し率直に考えられもするし素直な一面が、
普段の歪んだ見方のせいで表に出てきませんし
コントロールもできません。

泣くことも怒り出すことも、発作のせいで
自分の意志ではどうにもできなくなってしまうのです。

彼は人と関らず過ごしているのですが
孤独に耐えきれずに、会いに行く。
そして派手に失敗する。
失敗している自分を分かって、
まるでやけのように自分を追い込む行動をとるのです。

時々は冷静になる瞬間もありますが
酷い思い込みなどで目も当てられない。

主人公はこうした振る舞いを恥ずかしい
過去の記憶として語っていて
思い出しながらまた恥じていると言います。

途中彼は人間についてどこまでも
自分の持論を語っています。
最終的にも「ぼくらは死産児だ」という
強烈な言葉が出てきて印象的でした。

こんな暗い話、好みではないのですが
あまりにも面白くて嫌な後味もありませんでした。
自分の脳に直接飛び込んでくるような語りは
本当に心地よくて感動しました。


▶︎この記事は過去にInstagramで紹介したものを編集した記事です。
▷このnoteは新たな読書記録と過去の記事をまとめたものです。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,937件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?