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友人の話

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2014年7月の記事一覧

第51話 友人の話-留守宅の骨

第51話 友人の話-留守宅の骨

商社マンのマツバラくんは数年前、南アフリカへ転勤するよう辞令を受けた。

実はその数カ月前、彼は家を建てたばかりだった。

「子どもができたから」
2人目の子どもが生まれたのを機に、マイホーム購入を決意したのだ。

注文建築だった。
サンタが来られるように、という子どもたちの要望で、小さな飾り煙突をつけた。

南アフリカ駐在は、おそらく5年程度になるだろう。
誰も住まなければ、家は荒れる。
とはい

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第50話 友人の話-墓地の僧侶

第50話 友人の話-墓地の僧侶

クシダさんは子どものころ、ずいぶんお転婆だったという。

「兄が2人いて、小学生のころはいつも一緒でしたから」

夏のある日、近所にある墓地で肝試しをすることになった。
遊び仲間5人ほどと約束して、夕食後、こっそり家を抜け出し、集まることにしたのだ。

「いかにも出そう、という感じの場所で……」

古いお寺の裏手にある墓地で、並んでいる墓石も古いものが多い。

その奥はうっそうとしげる竹藪だ。

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第49話 友人の話-閉じ込められていたもの

第49話 友人の話-閉じ込められていたもの

2か月ほど前に出会った怪異のおかげで、体重が4キロ減った。

そう教えてくれたサクライくんは、確かに痩せていた。
ただ、どちらかというと、身体が締まって、健康そうに見えた。

「学生時代の友だちと会うて、かなり飲んでな」
終電はなく、どうにかタクシーを拾って、サクライくんはマンションまで帰り着いたという。

エレベーターに乗ろうとして、その音に気づいた。

中から誰かがドアを叩いている?

「どう

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第48話 友人の話-灰色の男

第48話 友人の話-灰色の男

「私も人殺しを見たことがある」

過日、別の方からも47話によく似た話を聞いた。

「学生のころ、電車の中でした」

大好きなアーティストの新作が出た日、ヤマグチさんは梅田のレコード店に向かうべく、阪急電車に乗っていた。

ふと、向かいの席に座る若い男性に目を引かれた。

「グレーに見えたんです」

肌も服も灰色の人影……一瞬、そんな異様なものが目の前に見えた気がしたのだ。

だが目をこらしてみる

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第45話 友人の話-テスト

第45話 友人の話-テスト

「見える」ことを仲間内で知られると、時に困ったことも起きる。

「最初は車の音かと思ったんですけど」

友人宅にリサさんが泊まった時のこと。
二階の部屋に案内され、寝入ったのだが、すぐにふと目が覚めた。

なにやら騒々しい音を耳にしたのだ。

ザーザーともズーズーとも聞こえる、かなり耳障りな音だった。

車が通る音かと思ったが、友人宅は幹線道路から奥まった住宅街ある。
深夜、そんなにうるさく車が通

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第44話 友人の話-声

第44話 友人の話-声

ハヤシくんは、霊など見たことはないという。

「ただ、おかしな声なら聞いたことあるで」

父親の転勤で、奈良のとある街に引っ越した直後だった。
隣家から、「死ね」という中年女性の声が聞こえた。

隣家は住まいと小さな教会が一緒になった建物で、中年の牧師夫妻と牧師の父親らしき老人が一緒に暮らしていた。

道で会えば、あいさつをするので、ハヤシくんもすぐに顔を覚えた。

40代とおぼしき奥さんは、小太

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第42話 友人の話-峠道

第42話 友人の話-峠道

ヒロヤマさんは長距離トラックの運転手をしている。

仕事柄、深夜に車を走らせることも多い。

「高速が大半やけど、しかたないときは山道とかもいくで」

そのときは事故で高速が通行止めになっていたため、やむなく峠を越えることにしたのだという。

数年前に奥さんと死別した彼は、男手で小学生の娘を育てていた。
早く帰ってやらねば。
そう思い、夜の峠道を越えることにした。

真冬のことだった。
他に通る車

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第40話 友人の話-通せんぼ

第40話 友人の話-通せんぼ

「今はもう見えないんですけど」

ヨシカさんは子どものころ、よくいろいろな怪異を見た。
たくさん見過ぎて、これという話を選ぶのが難しいほどだという。

そんな中、ふと思いついて話してくれたのが、幼稚園のころの出来事。

「奈良にある小さな駅でした」

お盆の法事に、親戚の家に行くため、ヨシカさんは母親と一緒に電車を降りた。

改札を抜け、ふと見ると、反対側の改札で親子がもめていた。
ヨシカさんと同

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第37話 友人の話-きっかけ

第37話 友人の話-きっかけ

「それまでは霊なんて信じてなかったのに」

シミズさんは大学生になって始めたファミリーレストランのアルバイトがきっかけで、見えるようになったという。

「真夜中のシフトに入ることが多かったんです」
深夜時間帯は、まかない付きの上、バイト料もよかったのだ。

おまけに客も少ない。
夜のアルバイトは楽して稼げるよい仕事だった。

ある夜、3人連れの客が入ってきた。
男性2人と女性1人だった。

「ひど

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第36話 友人の話-チクリ

第36話 友人の話-チクリ

最初は名前を呼ばれるだけだったという。

「ミヤワキ」

通勤途中、駅の階段を駆け上がっていると、ふと自分を呼ぶ声がした。

ミヤワキくんは振り向いたが、雑踏の中、声の主が誰なのか、わからない。中年男性の声だったようにも思うが、ラッシュ時のターミナル駅は、オジサンだらけだ。

聞き違いか、それとも自分以外の「ミヤワキ」を呼んだ声だったのか。

それ以上呼びかけてくる声がなかったので、そう判断するこ

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第35話 友人の話-連れておいで

第35話 友人の話-連れておいで

イナミくんは地方の国立大学出身だ。
昨年、当時の恩師が亡くなったので、葬儀に参列するため、大学がある街を訪れた。

泊まりがけだった。

「日帰りでもよかってんけど」
有給休暇も取れたので、一泊して、久しぶりの街を味わいたかったのだ。

宿は駅前のビジネスホテルをとり、葬儀の夜は懐かしい仲間数人と街で酒を飲んだ。
部屋に戻ると、携帯電話が鳴った。

実家からの電話だった。
通話ボタンを押したのに、

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第34話 友人の話-見える人

第34話 友人の話-見える人

怖い体験はないか?
そう訊ねると、トモダくんは非常に嫌がった。

そういう話に出てくる、「見える人」が怖いのだという。
理由を聞くと、渋々ながら、話してくれた。

「ミツヨちゃん、って子がいてな」

まだ幼稚園に通っていたころのことだ。
彼女はトモダくんと同じ「桃組」の園児だった。

そして「見える」子だった。

トモダくんが最初に聞いた彼女の予言は、空組の先生が片脚になる、というものだった。

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