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第34話 友人の話-見える人

怖い体験はないか?
そう訊ねると、トモダくんは非常に嫌がった。

そういう話に出てくる、「見える人」が怖いのだという。
理由を聞くと、渋々ながら、話してくれた。

「ミツヨちゃん、って子がいてな」

まだ幼稚園に通っていたころのことだ。
彼女はトモダくんと同じ「桃組」の園児だった。

そして「見える」子だった。

トモダくんが最初に聞いた彼女の予言は、空組の先生が片脚になる、というものだった。

2日後、空組の先生が車にはねられた。
元気になって戻ってくる、と園長先生が説明したが、幼稚園に現れることはなかった。

「だから、片脚になったかどうかは、知らん」

ミツヨちゃんの予言は続いた。
たいていが、誰かが不幸になることで、それはすべて当たった。

なぜかトモダくんと、もう1人仲がよかったクシハラくんにだけ、ミツヨちゃんはそれを聞かせた。

聞きたくなかったのに、とトモダくんは言う。

「そういうことを言うとき、いきなりまったく無表情になるねん」

表情のない顔の中で、小さな口だけもちょもちょ動かすと、彼女は不吉な言葉を吐き出す。
トモダくんはそれがひどく怖かった。

まだらの猫が死ぬよ。
彼女がそう言うと、幼稚園の近くで時々見かけたまだらの子猫が車にひかれた。。

ついに耐えられなくなったのだろう。
クシハラくんが親に話した。

ミツヨちゃんは園長先生に、「そんな嫌なことを言ってはダメ」と叱られることになった。

「クシハラくんが血を出すよ」
しばらくして、トモダくんはミツヨちゃんからそう聞かされた。

週明け、クシハラくんは幼稚園を休んだ。
日曜日の昼食を食べていて血を吐いた、という噂があった。

言った通りでしょ。
そう自慢するミツヨちゃんに、トモダくんは違和感を持った。

「予言してるんやない。ミツヨちゃんが起こしてるんや、って思たんや」

空組の先生は、ミツヨちゃんが他の子をいじめた、として彼女を叱った直後、事故に遭った。

まだらの子猫は、なぜかミツヨちゃんを嫌っていた。

その他の予言も、そういう目で見直してみると、思い当たることがあった。
被害に遭ったのは、彼女に嫌な思いをさせたかもしれない人や動物ばかりだった。

「俺の考えすぎかもしれんけど、ゾッとしてな」

以来、トモダくんは「見える」という人には近づかないのだとか。

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