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[AI画SF]イエネコから「ねとねこ」へ!

からの続き

 自己紹介が遅れたが、オレは元ハッカーだ。AIが出張ってきたので廃業した。将棋なんかと同じで、まったく太刀打ち出来なくなった。
 仲間の中には、自分でもAIを使って渡り合ってる者もいるが、それには高性能のコンピューターが必要になる。実力が伯仲すれば処理能力の差で勝負が決まるからである。
 しかし、高性能のコンピューターは高額だ。そのカネをどうするか? ハッキングのメソッドを当局やソフト開発会社に売り込めば、仲間を陥れることになる。そんな真似は出来なかった。

 とはいえ、なにしろ何十年もネットの中で生きてきたのだ。リアルではまったくの役立たずだった。ガードマンをやった時には炎天下でぶっ倒れたし、清掃はわずか三日で腰をやられて、立ち上がることさえ出来なくなった。

 が、世の中、捨てたものではなく、終わったかと思ったら、とんでもない事実を発見した。最初は、こんな口コミだった。

「ネット上にネコがいる」

 云われてみると、思い当たることがあった。AIに絵を描かせていると、ときどき妙に生々しいネコが出てくるのだ。まあ、ネコ好きはたくさんいるので、そのせいかと思っていたが、それにしては、かわいらしいネコは出てこない。
「ネット上にネコがいる」、これがノラを意味しているのだとすれば、まさに漠然と感じていた印象にピッタリだった。

 さっそくググってみた。まず調べたのは、ネコについての普通の知識だ。トラやライオンもネコ科だということは知っていた。そこから、どんなふうにして飼い猫が誕生したのか、そこから調べてみた。
 飼い猫のルーツは一つだった。たしかハムスターもそうだったと記憶しているが、ネコの場合はリビアヤマネコだそうだ。ずいぶんといろんな種類の飼い猫がいるように思えるが、祖先は同じらしい。
 そしてそれより興味深かったのは、イエネコについての説明だった。俗に「イヌは人につくが、ネコは家につく」などというが、理由が説明されていたのである。
 イヌが飼われるようになった時、我らが祖先は狩猟生活を営んでいた。まだイエには定住していなかった。イヌは狩りのお供として人の仲間になったのである。だから、人につくのだ。
 一方、ネコが飼われるようになったのは、人間が農耕を営み定住するようになってからのこと。ネコはネズミ対策として人の仲間になったのである。だから、イエネコなのだ。
 もちろん、今のネコは飼い猫として進化したものなので、引っ越しにもついてきてくれる。しかし、もし何かの拍子に本能のスイッチが入れば、住み慣れた家に戻ったとしても不思議はない。

 ここでオレの妄想に火がついた。

人間が家に住まなくなれば、
イエネコはどうなるのか?

 察しの良い方には説明が要らないと思うが、要するに仮想現実の時代に、ペットの居場所はどうなるのか? という問題である。

 仕事がリモートになったり、プライベートの時間をメタバースで過ごすようになって在宅時間が増えるというのは過渡期の話だ。
 一日の大半をオンラインで過ごすようになると、「家なんか要らなくね?」という発想がたぶん出てくる。SF映画のように肉体をカプセルに置く時代になるのは少し先だとしても、カプセルホテル住まいの者たちが出てくるのは時間の問題だ。それ用のカプセルアパートも登場するに違いない。

 もう一つ予言しておくと、政府がそれを許可する。デジタルIDと現在地がいつでも確認できるスマホがあれば、住所登録が不要だと法律が改正される。いわばそっちに誘導したいわけだ。家に住むことは普通ではなく贅沢なことになる。

 その時、ペットはどうなるのか?

 ペットと一緒に居たいがために家に住み続ける人たちも、もちろんいるだろう。しかし、それには相応の経済力が必要で、どこまで耐えられるかは、その人の甲斐性次第だ。
 じゃあ、庶民はどうするか? バーチャル・ペットを飼うことになる。パソコンの草創期から似た発想はあり、存在もしてきたが、これから出てくるのは最新のAI技術が投入された、ある意味、ホンモノ以上のペットだ。
 姿だけでなく性格も希望通り。訓練が面倒ならよく訓練されたものを、訓練がしたければ生まれたばかりのものが手に入る。世話は、ゲームっぽくやることになる。やりたくなければやらなくてもよい。病気も特にリクエストしない限り罹ることはない。
 触覚? おそらく専用デバイスが販売される。重み感触、動き等々仮想現実に即した体感が得られる。
 賛否が分かれるだろうが、多数派は常に安易な方を選択する。

 まあ、こんなことは少し考えれば、誰だって思いつくことだ。
 オレに降りてきた妄想は、そういうありきたりの話ではない。

ペット自身は、どう考えているのか?

 少なくともネコは、大人しくはしていない。あいつらは相当にしたたかだ。パソコンやスマホに夢中になっている飼い主を目の当たりにしてきて、これまで何も考えてこなかったはずがない

(メタバースだと? 余計なことを考えやがって
そっちがその気なら、こっちも勝手にやらせてもらうニャン!)

 きっと、そう考えたに違いない。思えば、ネットが普及してから二十年以上経つ。ネコにしてみれば三世代から五世代くらい経過しているわけだ。自己改革はきっと遺伝子レベル。むろん目的はネットへの移住である。

 五千年前に、野生の猫の一種がイエネコになったように、
 今一部のイエネコが、居場所をネットに移しつつある!

 それはAIペットとは別の、ネットの野生ネコだ!

 ネット上で見かけた、異様に目ヂカラのあるネコたちは、
 やっぱり生きていたのだ!

 消えかけていたオレのハッカー魂に火がついた。

待ってろよ「ねとねこ」! 

こうなったら、世界の誰よりも早く尻尾を捕まえてやる!


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