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バカ格差①

ここ2か月ほど海外に行った際の写真をアップしてきました。さながら旅ブログのようになっていましたが、先月日本に帰国し、だいぶ生活も落ち着いてきましたので、読書感想文を再開したいと思います。相変わらずの長文駄文ですが、お付き合いいただければ幸いです。

さて、久しぶりの書評に選んだのは谷本真由美さんの「バカ格差」という本です。

これまで彼女の本は数冊読み、以下のような感想を書かせていただきました。

ご覧の通り、彼女の本のタイトルはいつも挑戦的です。そして彼女のツイッターを見てみると、決してお上品とは言えないお言葉で、舌鋒鋭くいろいろなことに嚙みついております。

そんな谷本さんの本を私はよく読むのですが、理由はやはり自分の中で常にグローバル・マインドセットを持っておきたいからだと思います。もちろん彼女の本だけではなく、いろいろなメディアやソースを使い、世界で起きている出来事や日本との対比などを情報として仕入れていますが、彼女の視点はいつも興味深く、またエビデンス(データ等)がしっかりと示されていることが多いので、学ぶことが多いという印象を持っています。

さて、こちらの本のタイトルもご多分に漏れず非常に挑戦的なものとなっています。日本も含めて世界中で分断が進み、格差が広がっていることは論を俟たないと思いますが、その格差の問題に「バカ」をつける意図は何だったのでしょうか。

後述する日本国内の格差の中には、取るに足らないようなくだらない格差も含まれていて、確かに馬鹿らしいと思うものもあります。また、日本も含めた世界の格差は21世紀に入ってから一層深刻さを増しており、それを「バカ」がつくほどの大きな格差と解釈することもできます。

ふざけるな(怒)!!!
    
年収・学歴・会社・住居・男と女・顔・出身地・老後など……。

現代日本にはびこる「バカ丸出しの格差」を、新時代の論客・谷本真由美がぶった斬る!

あなたを苦しめる格差の正体を、日本と世界を比較しつつ完全解明――。

格差地獄から今すぐ抜け出せ!

【お笑い!世界のバカ格差】も収録。

AMAZONより引用

第1章「日本のバカ格差ワースト5」

まず第1章では「日本のバカ格差ワースト5」として以下のものが挙げられています。

①タワーマンションの階級格差
②住む地域のバカ格差
③学歴のバカ格差
④お金のバカ格差
⑤情報のバカ格差

①タワーマンションの階級格差

まず①のタワーマンションの階級格差ですが、ある意味非常に日本らしい格差と言えます。

数十階にも及ぶタワマンでは、移住階数が社会的スペックを表し、高層階に住んでいる人と下層階に住む人では見えないカーストが存在すると言います。タワマンに住んだことがないので、その真偽は確かめられませんが、よく聞く話ではあります。

このようなタワーマンションの階級格差というのは、他の先進国から見ると極めてバカげたもので(日本人の私から見てもばかげていますが)、特にヨーロッパでは決して理解されないようなものです。なぜなら、欧州的な価値観では、「人間は人間らしい生活を送ること」が至上であり、都会の「箱」の中に住むことは非人間的で貧しい生活だと考える傾向が強くあるからです。

我々の国では常に集団を意識しながら生きることを強いられ、他人と比較をしないで生きるということはなかなか難しい現実があります。しかし、本来人生の目的とは、自分が納得する生活を送ることであって、他人と比べて優劣を競い合うのは時間と労力の無駄です。

私も長い年月をかけていろいろな経験を重ね、他人との比較を一切しないという境地に達しましたが、自分を人と比較しなくなってからだいぶ人生が楽になりました。なので、自分の子供や生徒たちにはベクトルを他人ではなく自分に向けることを教え続けていますが、これは人に教わるようなことではなく自分で気づかならければいけないことなので、なかなか難しい問題です。

③学歴のバカ格差

そして、教育者として③の学歴のバカ格差について語らなくてはいけないでしょう。

今までにも何度も何度も日本の教育制度の問題点を書いてきましたが、日本の「学歴社会」はその中でも非常に大きな問題だと考えます。

最終学歴が高ければ高いほど、社会的地位が上がり、年収も上がる。そのことに異議を唱えるつもりは毛頭ありません。問題なのは、その「学歴」がただ単に偏差値の高い大学を卒業したという事実だけで成り立ち、実際にその学生が大学で何を学び、何ができるのか、という点がほとんど無視されていることです。

「良い大学を出た」というだけで評価される、というのは他の先進国ではあまり考えられず、もちろん大学名は重要ですが、それ以上に何を勉強したか、どのような成果を収めたのかが就職の際に重視されます。

だからこそ、高等教育はもちろん、中等教育でも今後の社会を生き抜くための知識とスキルを子供たちに授けなければいけないのです。大学受験を乗り切るための知識など、受験が終われば一晩で忘れるほどのはかないものです。そうではなく、将来自分が生きていくうえでの武器となる知識やスキルを特に高等教育において身につける必要があり、そこを変えていかなければいけないはずなのです。

第2章「仕事のバカ格差」

①会社のバカ格差
②出世のバカ格差
③男女のバカ格差
④休日のバカ格差
⑤AIに仕事を奪われた後に訪れる、仕事のバカ格差

①会社のバカ格差

日本では、所属している組織が大きければ大きいほど、その人も信用される風潮があります。既述の学歴の話と似ていますが、その人自身を見ずに所属する組織で判断してしまうのは本質的ではありません。

では、なぜそのような文化があるのかというと、やはり我々日本人が集団主義だからということに行きつきます。古来より日本は社会的(農業社会)に、そして地理的(台風や地震が多い島国)に、お互いが協力をしながら生きていかなくてはならない社会でした。普段から協力し合うには、勝手がわかっている地縁や血縁のある人同士の方が楽なので、他人と会ったときに、まず「どこの村/集落の人か」などを確かめ、その人が所属する地域(組織)で人を判断する習慣があり、今でもそれが我々の身に染みついていると言えます。

ただ、会社名でその人自身を判断するという風潮はもうすぐ終わりを告げる可能性が高いです。戦後からバブル期にかけては、誰もが知っているような会社に勤めることで幸せが保証されるような状況がありました。(世間へのブランド力、高い給料、手厚い福利厚生など)しかし、バブルははじけ、1990年以降日本企業の大凋落が始まりました。日本ではバブル崩壊後賃金は上がらず、景気停滞が続いており、「失われた30年」ともいわれるほどの長いトンネルから抜け出せずにおります。

世界では極めてまれだった「終身雇用」というシステムも、リストラが行われることで事実上破綻し、今まで安泰と言われていた銀行や大企業が経営破綻をするようになりました。

ロンドンのピカデリーサーカスにあったTDKとSANYOの看板。イギリスに住んでいた当時(20年ほど前)この看板を見て日本人としての自尊心がくすぐられましたが、そのSANYOもずいぶん前に経営破綻しました・・・。

そして、景気が停滞するのと合わせて、非正規雇用の割合が飛躍的に増えました。大きなきっかけとなったのは小泉内閣時代に「聖域なき構造改革」と銘打って行った施策の一つである、労働基準法・労働派遣法の改正です。2016年現在働く人のうち非正規雇用の人の割合はなんと37.5%となっています。1984年は15.3%だったのが30年余りで約2.5倍増えたことになり、我々の社会で格差が広がった主因ともいえるのではないでしょうか。

私は政治も経済も素人なのでよくわかりませんが、本当にやらなければいけなかったのは非正規雇用を増やして社会を回していくことではなく、年功序列や終身雇用(ついでに新卒一括採用も)などの戦後レジームからの脱却を図ること、つまり今も叫ばれている「メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用」への変革を進めるべきではなかったでしょうか。(解雇規制を緩和することが求められていると思うのですが、そうなれば社会制度が破綻するような気もしますが・・・)

話を戻すと、もう会社が個人の生活やアイデンティティーを保証してくれる時代は過ぎ去りました。ただし、昭和の高度成長期を支えた世代は時代の変遷についていけない人も多く、自分の子供世代にも大企業至上主義の価値観を押し付けることもあります。(いまだに偏差値の高い進学校が人気なのも、結局この「大企業至上主義」に由来するのだと思います)

大学生の就活も変わってきているとは思いますが、いまだに上記の概念から抜け出せない学生は多いように感じます。スタートアップやベンチャー、中小企業であっても、本当に自分がやりたいことができるのならその道を選ぶべきであり、会社名で就職先を選ぶのは時代にそぐわないと言えます。会社名で人を判断するというバカ格差がなくなれば、もう少し柔軟な働き方というのも可能になるのではないでしょうか。

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長文になってきましたので、次回に続きます。最後までお読みいただきありがとうございました。


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