五分の魂

ある日男は

じっとしている一匹のアリを見つけた

そのアリを押しつぶそうと

男は人差し指を伸ばした

そこでふと

ある言葉を思い出す

「一寸の虫にも五分の魂」

男は人差し指を引っ込めた

「ふっ、俺らしくもねえ」

男は呟き

飲みかけの焼酎をあおった

そんな時

男の頭の上に迫っていた

巨大な人差し指が

すぅーっと遠のいた

男はそれを知らず

二杯目の焼酎をあおる

今日も昨日と同じ

日常が過ぎてゆく

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