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横隔神経・迷走神経・扁桃体を操る「コヒーレント呼吸」マスター法

コヒーレント呼吸(コヒーレンス法とも呼ばれる)は、心身をリラックスさせ、神経系を調節するために、1分間の呼吸数を減らすことに焦点を当てた呼吸法です。

この種の呼吸法(ブレスワーク)は2000年代初頭にたくさん開発されましたが、呼吸をコントロールする行為は、ヨガの行者によって何千年も前から実践されてきました。

コヒーレント呼吸について

コヒーレント呼吸は、共鳴呼吸のひとつで、ゆっくりと呼吸することで1分間の呼吸数を減らすことに焦点を当てており、他のタイプの呼吸法と異なる点は、どれだけ深く吸い込むかではなく、呼気と吸気の長さに要点を置いているところです。

コヒーレント呼吸は、一般的に以下に適応します。

・ストレスマネジメント
・アンガーマネジメント
・不安、不安障害
・スポーツ、アスリート
・瞑想
・ハタヨガ
・古武術(日本のもの)
・八極拳(中国拳法)
・内省、内観的思考

コヒーレント呼吸で心身が改善するメカニズム

呼吸の長さをコントロールすることによって、横隔神経に影響を与え、迷走神経を刺激し、扁桃体を抑制します。

横隔神経は、

呼吸に不可欠な横隔膜を司っています。

コヒーレント呼吸によって、横隔神経(横隔膜)をゆっくりと一定のリズムでコントロールすることで、体内の血液循環を増加させることができるのです。

迷走神経は、

呼吸数、消化、心拍数などをコントロールしています。

またファイト・オア・フライト反応やフリーズ反応にも影響を与えるため、コヒーレント呼吸によって迷走神経を刺激することで、ファイト・オア・フライト反応などから穏やかなリラックス状態に切り替えることができるのです。

ファイト・オア・フライト反応とは、言葉通り「戦うか・逃げるか」という反応です。

この反応は、ストレス、不安、痛み、恐怖などによって起こり、体内からアドレナリンが分泌され、呼吸が速くなり、心拍数が増し、汗が出るなどの交感神経優位な状態となります。

扁桃体は、

恐怖や不安などの感情的な反応を司っており、ファイト・オア・フライト反応にも関連があります。

コヒーレント呼吸によって、扁桃体優位の状態から、論理的な脳機能を司る前頭前野が優位な状態へと切り替えることができるのです。

コヒーレント呼吸の利点

無意識的に癖になってしまった呼吸の方法を意識的にコントロールすることで、ストレスやファイト・オア・フライト反応から心身を解放し、集中力や睡眠の質を向上させ、筋肉の緊張を緩めることができます。

心血管機能の向上

ストレスや不安などの影響を受けると、心拍数は増加します。長期的にストレス状態になると、心拍数変動(HRV)が減少します。

低HRVは心臓関連(循環器系)のトラブルのリスクが高くなりますが、高HRVは通常、神経系のバランスが良い状態を意味します。

・心拍数を下げる
・血圧を下げる
・心拍数変動を増加させる

心臓のコヒーレント呼吸
これは、呼吸を心拍数に合わせることに焦点を当てたコヒーレント呼吸のひとつです。続けることによって、心臓の機能改善に役立ちます。

呼吸機能の改善

コヒーレント呼吸は横隔膜に影響を与え、血液循環を促進させながら心臓の働きをサポートします。また、体の筋肉も弛緩し、横隔膜の動きとの相乗効果によって、より健康的な肺循環を作り出すのです。

ストレス・不安の軽減とGABA(γ-アミノ酪酸)の増加

コヒーレント呼吸は迷走神経、副交感神経系に影響を与え、不安や心因的ストレスをリラックスさせます。実践を続けることで、ストレスに対する回復力が構築されたり、不安に伴う感情的な症状がコントロールしやすくなります。

2020年に発表された研究では、12週間のコヒーレント呼吸の後にGABA(γ-アミノ酪酸)レベルが増加したことを示しています。GABA(γ-アミノ酪酸)は、ストレスや疲労感の緩和、睡眠の質の改善、血圧を下げる働きなどが知られています。

うつ症状の減少

コヒーレント呼吸は、神経系を落ち着かせ、うつ症状を改善するのに役立ちます。

最近の研究では、定期的なコヒーレント呼吸の実践により、Beck Depression Inventory (BDI,ベックうつ病調査表)のスコアが改善することが示されました。

不眠症の減少

不眠症は多くの場合、メラトニン不足、ストレス、不安、レーシング思考によって引き起こされます。

セルフケアルーティンの中にコヒーレント呼吸を組み込むことで、心身のリラクゼーション反応を強化し、より簡単に眠りにつくことができます。

ベッドに入ってからも、コヒーレント呼吸に集中することによって、侵入的な思考を抑制し、リラックス状態を維持することができ、入眠に役立つのです。

コヒーレントトレーニング

コヒーレントトレーニングをするなら2段階に分けたトレーニングをお勧めします。

まずはコヒーレント呼吸を単体でトレーニングし、あまり意識しなくても呼吸ができるようになったら、次はコヒーレント呼吸をしながら、顔、喉、舌、手、肩、背中、横隔膜、腰、骨盤、股関節、脚などを意識的にリラックスさせるトレーニングに移りましょう。

コヒーレントトレーニングの良い点は、誰でも、いつでも、どこでもできることです。特別な道具などは必要ありません。

コヒーレントトレーニング第1段階

1.自分がリラックスできる快適な場所で始めましょう。最初は、呼吸だけに集中できるように座ると良いかもしれません。

2.呼吸を意識的にコントロールせずに、現在の呼吸を感じましょう。
・1分間に何回呼吸しているでしょうか?
・主に呼吸に使っている体の部分はどこでしょうか?

3.お腹に手を置いて、呼吸に横隔膜を使用していることを確認しましょう。お腹は吸い込むとふくらみ、吐くと収縮するはずです。

4.呼気と吸気を3秒間ずつ同じリズムで1分間続けていきましょう。
1分間の呼吸が快適に感じたら、徐々に4秒、5秒、最大6秒ずつの呼吸をおこないましょう。

5.これを5分~最大20分間おこなうことをコヒーレントトレーニング第1段階とします。

コヒーレントトレーニング第2段階

1.リラックスできる快適な場所で始めましょう。体中の筋肉を弛緩させていくので、あお向け(上向き)がベストです。

2.5秒もしくは6秒ずつのコヒーレント呼吸を始めます。

3.呼吸をしながら、顔、喉、舌、手、肩、背中、横隔膜、腰、骨盤、股関節、脚など、体中の筋肉を意識的に緩めていきましょう。この時、頭頂部、つま先、指先など体の先端から中心に向かって筋肉を緩めていくことがポイントです。

4.最初は、筋肉を緩めることに集中しすぎるとコヒーレント呼吸が乱れるでしょう。呼吸が乱れたら、呼吸を修正して、またはじめから筋肉を緩めていきます。

5.これを5分~最大45分間おこなうことが、コヒーレントトレーニング第2段階です。

コヒーレント呼吸や他の呼吸法(ブレスワーク)を実践する

呼吸法(ブレスワーク)は、心を落ち着かせリラックスさせる効果や、内省・内観的視点などを身につけるのに最適な方法です。

瞑想やブレスワークを始める際は、↓の記事からご覧下さい。

おわりに

コヒーレント呼吸は、心身を改善することができる強力なテクニックです。

また、コヒーレントトレーニングはストレスを感じたり、調子が良くないと感じた時にいつでもおこなうことができます。

ストレスや不安などの感情に困っている時は、コヒーレント呼吸をしてみると、数分で落ち着きを取り戻すことができるのでお勧めです。

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