児玉朋己

谺(こだま)こと、児玉朋己(こだまともみ)。 静岡県藤枝市にある自立生活センターのおの…

児玉朋己

谺(こだま)こと、児玉朋己(こだまともみ)。 静岡県藤枝市にある自立生活センターのおのころ島が運営している地域活動支援センター「りんりん」の施設長として、精神障害を持つ方へピア・カウンセリングを軸にした支援を行っている。歌うピア・サポーター。

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祈って運が良くなる人・ならない人

「運のいい人は祈る」という。これは、特定の宗教・神様を信じていなくても、ご先祖様やお天道様、お地蔵様などに祈ると運気が上がっていくということ。 25年前の美しい春の夕暮れ時、二人の若者が同じ大学を卒業した。彼らはとても良く似ていた。二人とも平均的な学生よりも成績が良く品格もあり、将来に向け情熱的な夢にあふれていた。そして、この「運のいい人は祈る」という学長祝辞での教えを胸に刻みつけていた。 最近、この二人は25回目の同窓会で大学にやってきた。私も同じ同窓生として二人と思い

    • 対話しようとしない人々を受容するには

      言論の自由は、私たちの多様性を保障する大切な理念だ。しかしいま大きな問題が発生している。それは、跋扈する陰謀論とフェイクによる言論への疲労感の堆積だ。それにより、社会が互いに交流することのない島宇宙の寄せ集めになってしまっている。 良い意味でリベラルといわれる人たちは自由な言論と多様性を歓迎してきた。しかし、陰謀論とフェイクは言論の土俵に上がろうとしない。その結果、リベラルのいう多様性は対話可能性に依存したものだったことが露呈した。陰謀論とフェイクは自分の島宇宙の内にこもり

      • 海パン事件

        私が生涯で一番恥ずかしかった事件は小学1年生の夏休みに起きた。夏休みには、近所の仲間たちと学校のプールに行く習慣があった。行くとカードにスタンプを押してくれるアレだ。 その日も私たちはプールに向かった。男の子も女の子もいた。上級生が引率してくれて、総勢7,8名はいた。プールに着いて、水着に着替えるためにいつも通り更衣室に入る。私も更衣室で海水パンツを出そうと水着袋を探った。 ない。 「アレ? そんなはずは。」 でもない。 ひっくり返してもない。 水着袋は小さい。 ないもの

        • 「そもそも論」から始めたい

          私がこれまで仕事で出会ってきた指導者(≒ハイパフォーマー)たちに共通してみられる思考・行動様式は、「『そもそも論』から始める」ことだ。ウチの理事長がまずそうなのだが、それ以外の他の複数の事業所のトップにこの傾向があると思う。「そもそもさぁ」と声に出さなくても、それを踏まえた上での発言が多いという印象だ。 「そもそもを踏まえる」というのは、まず目的・前提を確認・吟味するということだ。会議で議案に対しどう対応するかを検討する場合、私などはすぐに対処法そのものを考え発言してしまい

        祈って運が良くなる人・ならない人

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          7本

        記事

          自分のアンテナに引っかかったものを大切に育てる

          食べ物は無理でも、「知識」を咀嚼して吐き戻すことはできる。多くの人にとって魅力が少なく興味が持てないと感じられることでも、見る人が見ればその奥深さや隠れた意味を引き出し、新たな面白さを付加して人に伝えることができる。そういう情報や知識を咀嚼して吐き戻せる人が、真の知識人だといえる。自分の経験や知識を他の人に伝えること。それはヒトの命の生業(なりわい)だ。生きるとは、その人だからこそ知っている知識を伝えることではないか。 あらゆる人間関係の基盤に知識を教えあい学びあうことが埋

          自分のアンテナに引っかかったものを大切に育てる

          天才ではなかった私たちが世界をアップデートする方法

          21世紀も四半世紀が過ぎようとしている現在、私たちはかつてのように「世界は一直線に進歩していく」とは考えられなくなった。あれは近代の夢だった。しかし素朴に進歩とは言えないにせよ、世界はこれまで数多くのアップデートを繰り返してきたことは確かだ。それはどのようにして可能だったのか? それは、歴史に名を残している哲学者や思想家あるいは科学者などの天才たちがそれぞれその当時の固定観念を打ち破り、新しい考え方や新発見を成し遂げ新常識を打ち立ててきたからだ。 そういった数多くのアップ

          天才ではなかった私たちが世界をアップデートする方法

          赤ちゃんを床に叩き落とす衝動を抱えるほど絶望していた私がそこから抜け出した方法

          赤ちゃんはかわいい。 ペンギンの赤ちゃんもかわいいし、人間の赤ちゃんもかわいい。それは、赤ちゃんが生命の炎そのものだからだ。赤ちゃんは、自分の周囲にある事物一つひとつに純粋な好奇の目を輝かせ、まだ短い腕をぎこちなくも懸命に伸ばしつかもうとする。大人はそんな無垢に全幅の信頼を置く。 しかし、そんな赤ちゃんを見てイライラしていた時期が私にはある。 目をキラキラさせ生き生きとハイハイしている赤ちゃんを見て「何がそんなに楽しいんだ?」とイライラしたものだ。赤ちゃんを抱かせてもらった

          赤ちゃんを床に叩き落とす衝動を抱えるほど絶望していた私がそこから抜け出した方法

          先祖、いや、ご先祖様。

          先祖、いや、ご先祖様に対する思いには大いなるものがある。 なによりもまずご先祖様があってこそいまの自分があると感謝している。そして、人生での良いめぐりあわせはご先祖様があらかじめ仕込んで用意してくださったものだという感覚もある。 しかし、子どもの頃の私は、たいへん申し訳ないことだけれども「うちの先祖はたいしたものじゃないから自分もロクなものじゃないんだ」などと考えていた。劣等感、いや劣等コンプレックスがあり、自分を卑下する理由をご先祖様に押しつけていた(劣等感と劣等コンプレ

          先祖、いや、ご先祖様。

          京都アニメーション放火殺人事件死刑判決にあたって

          こんにちは! 谺(こだま)こと、児玉朋己です。 京都アニメーション放火殺人事件で死刑判決が下りました。 この事件の犠牲になられた方々には深くお悔やみ申し上げます。 また、 一つの区切りとはいえ、 ご遺族の方々の無念が癒えるわけではないと思います。 お見舞い申し上げます。 この事件の犯人と同じように妄想を経験してきた一人の精神障害者として、 裁判の行方には注目してきました。 正直な気持ちとして、 死刑という判決が出て安堵したというのはあります。 それは、 無罪ある

          京都アニメーション放火殺人事件死刑判決にあたって

          自動翻訳が素晴らしくなったので読みたい原書があるという話

          最近の自動翻訳ツールは凄い。 もうずいぶん前にGoogle翻訳が簡単に使えるようになった。当初は直訳っぽくなることもあったがどんどん改良され、こなれた訳文が得られるようになった。 それで重宝していたら、DeepLというツールが凄いということになり、使ってみたら本当に凄かった。込み入った構文の英語でも、直訳っぽいところがほとんどない自然な日本語に変換してくれる。各種専門の研究者にも信頼され、論文作成に多く利用されているそうだ。 そんな翻訳ツールに感嘆していた昨今だったが、昨年

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          大病の壁

          高木美保さんはパニック障害になった。 華原朋美さんはうつ病になったと言われている。 玉置浩二さんは統合失調症らしい。 岡村隆史さんもうつ病を発症したという。 ハイヒールモモコさんはメニエール病を患った。 二宮和也さんはリンパ管炎という病気を患った。 徳永英明さんはもやもや病になった。 相葉雅紀さんは肺気胸を発症された。 和田アキ子さんは子宮ガン、肺気腫、シェーグレン症候群を発症。 神木隆之介さんは子役としてデビューする前、生存率1パーセントの難病を患っていた。 渡辺謙さんは急

          仕事に熱意がなくなってきたら?

          仕事に熱意がなくなって随分たつ。 利用者さんの耳に入ると余計な心配をさせてしまうから、あまり大きな声では言えない。けれど、ここしばらく仕事に熱意をもって打ちこめなくなっている。 私の仕事はいわゆる対人援助職だ。だから、熱意がなくなっているというのはあまり聞こえが良くない。利用者さんに「私の話を聴くのが面倒くさいの?」と思われる恐れがある。だからあらかじめ言っておきたい。利用者さんへの対応が面倒くさいとか、嫌になったということではない。 ではどういうことか? 私が所属する法人で

          仕事に熱意がなくなってきたら?

          私の発信する「シン・病者の教養」の由来

          解決すべき問題は、私が発信するテーマだった。 まずゴールだ。 「ブログと動画で発信するテーマを決める」だ。 次はインプットして現状を整理すること。 課題は自分にふさわしいテーマを調べることだ。 それには、 ① 職場の同僚に訊く ② 自分がやってきたことをリストにする ③ 「したい・できる・必要とされる」で考える ことだ。 職場で訊いた。 「これから情報発信していきたい。僕に合っているテーマは?」 回答が集まった。 ・児玉朋己を出したいなら、精神障害を打ち出すのは平凡。自

          私の発信する「シン・病者の教養」の由来

          私の絶滅危惧動作~叱咤激励~

           私が最近やらなくなった動作?に叱咤激励がある。  以前は何か行動を変えたいときに「これではダメだ、しっかりしろ」と自分を奮い立たせる必要があった。「ダメじゃないか、もっと~でなければ」と自分に言い聞かせていた。それが最近は「~したい」だけでだいたい動けるようになった。  「そういえばオレ最近叱咤激励していない」と気がついた瞬間があったことを覚えている。どうして叱咤激励しなくなっただろう? と考えて思いつくのは、「自分はそうそう変わらないものだ」と腹落ちしてきたからだという

          私の絶滅危惧動作~叱咤激励~

          心理的安全性と認知の歪みのせめぎ合い

           自慢じゃないが、私の職場は心理的安全性が高い。  心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことで、その発言を理由に責められたり罰せられたりする心配がないことをいう。  私のその職場とは、障害者が障害者を支援するという理念のもと障害者が運営している自立生活センターだ。  障害者は出来ないことがたくさんある。  出来ないことは、頑張って肩肘張っても出来ない。だから、出来ないことはやらない。  出来ないことが当たり前なので、出来る人が

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          義手のバイオリニスト

          義手のバイオリニスト伊藤真波(まなみ)さんの演奏を観た。 彼女には右腕がない。大事故に遭い切断を余儀なくされたのだ。 演奏するのは中島みゆき「糸」。心を打たれた。泣きそうになった。   私はなぜ泣きそうになったのだろう。 いや、私だけではない。 動画のコメント欄には「泣いた」とあるし、客席で目頭を押さえている人も複数映っている。 伊藤さんはサイボーグだ。 サイボーグとは身体機能を補填・拡張するために身体の一部を機械化したヒトのことだ。 彼女の場合は、ハーネスを使い肩に取り付

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