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あなたの恋が実る⁉︎ 足の臭い・加齢臭・体臭の魅力とは?

1、足の臭いにうっとりする男。

それは、突然起きた。

夜21時過ぎ。東京の夜景が一望できる六本木の高級レジデンスの一室には、仕事を終えた男と女たちが集っていた。今夜は楽しいホームパーティだ。

平日なので一人、また一人と参加者が遅れてやって来る。ある者は恋の予感に心をときめかせながら。そしてある者は席に着いたばかりの初対面の相手を値踏みしながら……。

(ちょっといいですか?)

長方形のテーブルの対角線上に座っている家主の友人からLINEが入る。隣の女の子と会話が弾んでいたので思わず舌打ちしたくなったが、見ると表情が相当歪んでいる。何かこの場で言えないようなことでもあるに違いない。さりげなく席を外して事情を訊く。

「どうしたの、緊急事態?」
「何か臭ってきません? もう限界です」

彼が言うには、隣の女の子の“足の臭い”が強烈でこれ以上耐えられそうにないとのこと。

できれば席を替わるか、早めにお開きにしたいとザワつき始める。当の本人はなかなかの美女。巻き髪クルクルにして会話中に「ホントですかぁ⁉」を連発するイマドキ女子(*1)じゃないか。そんなワケないだろ……

……うん、確かに臭う。独特だ。

新しい席に着くなり、それはモフォッ〜といった感じで嗅覚を刺激してくる。目の前の茹で上がったパスタなどどうでもよくなってきた。

ちなみにこの家主の友人はみんなが帰った後、深夜にも関わらず速攻でルームクリーニングのサービスに連絡して床から丹念に掃除してもらったそうだ。彼はこの夜の異臭騒ぎを「ホムパのテロ事件」と呼んでいる。

しかし、ここからがポイント。

彼が拒絶するほど悪くなかったのだ。正直言ってちょっと興奮してしまった。

“足の臭い”というのは一般的にはマイナス要素と捉えられがち。多くの男たちは友人のような反応をするのだろう。でも自分は違った。

要するに「巻き髪クルクル美女がこんな臭いを放つのか!」というギャップが快楽へと誘った。じゃなきゃ「一日中ストッキングとパンプスを履いて仕事を頑張った」彼女に対して失礼だし、この先の人生は愉しめないと思う。

2、加齢臭にうっとりする女。

飲み会を繰り返していた頃(*2)、「五感テスト」を開発したことがある。これは女の子たちに「エッチする時にどの感覚を一番重要と思うか。興奮材料とするか」をヒアリングするだけというもの。すると、面白いデータが出た(独自調べ)。

視覚 17%
触覚 55%
聴覚 15%
味覚 7%
嗅覚 5%
第六感 1%

過半数の女の子が「触覚」と答えたのだ。

これはもうノーマルラインに間違いない。対して「視覚」はエッチに対して未熟、「聴覚」はやや変態を意味する。そして「味覚」はただのド変態、「嗅覚」はスペシャリストなド変態と結論づけた。

これでは気の合う女の子がなかなか見つからなかったワケだ。ちなみに「第六感」はシャレのつもりなのか「セックス・センス」と呼ぶらしい。

こんな話もある。

会社の部署の忘年会で、幹事役だった知人の女の子は上司のオジサンの上着をハンガーに掛けてあげた。その時とてもいい匂いがしたので、思わず「部長、コレ何の香水つけてるんですか?」。するとこんな言葉が返ってきた。「いや、何もつけてないけど」。

彼女はオジサンの“加齢臭”に夢心地になったのだ。これも一般的にはマイナス要素とされている。でも好きな人にはそれはたまらなく魅了される世界。以来、彼女はそれまで眼中になかった上司に好感を抱くようになったという。

3、恋愛の決め手は体臭と遺伝子!?

臭いは恋にも作用する。

これは以前、何かの番組で実験を行っていたのだが、顔面偏差値が高い〜低い男たちを数十人集めて、女の子たちとお見合いパーティをしてもらったところ、当然のことながらイケメンに人気が集中した。

その後、男たちが何日も洗わずに着続けたTシャツを袋に入れ、誰のものか分からないように女の子たちに嗅いでもらう。「超臭〜い」「マジ無理」なんて悲痛な声に混じって、「嫌いじゃないかも」なんて反応もチラホラ聞こえてくる。

それを経て再度同じメンツでお見合いパーティをすると、意外にも当初は「あり得ない」とまで敬遠され人気の低かった男たちが続々とカップル成立

その子にとっては「この男と一緒にいたいかも」と思わせる“体臭”だったのだ。街中でよく見かける美女と野獣カップルは、ひょっとしてこの点が関係しているのかもしれない。

お年頃の女子が「パパ臭い」と言って父親から距離を置く、なんて話もよく耳にする。

これは「“遺伝子”の影響だよ」と詳しい人が教えてくれた。嫌な臭いに感じるのは近親相姦にならないために嗅覚が拒絶反応を起こすのが原因。好きに感じる匂いは遺伝子が遠く、この人と子孫を残したいという人間としての本能を嗅覚が教えてくれるからだとか。

4、気になるあの人の好きな匂いをつけてみよう

プレゼントでお互いに好きな匂いの“香水”を贈り合うなんて素敵だ。

トップノート(最初の瞬間に匂う。消えるのも数十分程度と短い)。ミドルノート(〜3時間程度まで)、ベースノート(その後持続する匂い)があって、この場合はミドルやベースが自分の好みであることが大切。

だが、苦手な匂いだってある。

いつも笑顔で接してくれる社内で一番人気の事務の子が隣の席にいるにも関わらず、彼女のつけてくる“香水”で気分が悪くなり、毎日が苦痛なことがあった。

嫌な思い出が残った元カノが愛用していたからだ。街で見知らぬ女の子とすれ違った時、好きだったまま別れた元カノと同じ匂いがして、思わず振り返ってしまうのとは真逆のパターンだ。

だからリクエストがあれば、彼氏彼女、奥さんや旦那さんのためにも、これからは相手が好きな匂いを喜んでつけてあげよう。

“香水”の奥深さについて知りたいと思った人には、18世紀のパリを舞台とした映画『パフューム ある人殺しの物語』がオススメだ。

ちなみにマルセル・プルーストが半生をかけて執筆した『失われた時を求めて』は、ある日何気なく味わった紅茶とマドレーヌから過去の記憶が蘇っていくが、そこにはきっと匂いも関係していたはず……

“足の臭い”から始まったこの話、最後は思わぬところに着地した。

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*Illustration:いなばゆみ

注(note内記事)
(*1) 恐るべし口癖「ホントですか?」と言う女たち
(*2) 5000人の女の子たちが教えてくれたこと〜ある男の合コン手記〜

*このコラムはWebマガジン「TOKYOWISE」で発表したものに一部加筆しました。なお、冒頭のホームパーティを行ったのは数年前のことです。


流れ者/都市生活コラムニスト。自らの東京生活における経験やエピソードを次世代に伝えるために覚醒。書き留めた膨大なメモやノートを糧に、「東京をまともにする」という美学と信念を左胸に刻み込んで2015年より活動をスタート。寡作ですが、応援よろしくお願い致します。