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病気や障害がある子どもときょうだいたちが、こどもの本専門店で絵本の世界へおでかけ


こんにちは!東京おでかけプロジェクトです。

今年度は、福祉医療機構様の社会福祉振興助成事業に採択していただき、夏真っ盛りの8月19日、神保町にあるブックハウスカフェをお借りして今年度2回目となる「本屋へおでかけプロジェクト」を開催しました。

神保町にあるこどもの本専門店「ブックハウスカフェ」

スペシャルニーズがある子どもと家族のおでかけは、不安がいっぱい

病気や障害、医療的ケアなど、スペシャルニーズがある子どもたちは、病気や障害があるとわかると、数年間、病状が安定するまで病院で過ごすこともあります。

病院に通って子どもと付き添う時間を捻出するために、母親の多くは仕事を辞めてキャリアを諦めたり、きょうだいは親戚に預けられて寂しい思いをしたり。

そんなご家族の中には、「退院できても感染症が心配で、また入院したらと思うと、病院や近くのコンビニしかおでかけはしたことがありません」だったり、

「医療機器のアラーム音やたんの吸引の音が迷惑だろうなと、人の目が気になっておでかけしづらいです」という方々がおられます。

荷物の多さ、医療機器やたんの吸引の音を気にして、おでかけが億劫になる家族も多い

さらに、呼吸器を付けていて酸素ボンベが欠かせないお子さんや、いつ発作が起こるかわからないお子さんは、ご家族も医療者と同様の医療ケアをすることに慣れていない中、何かあったら不安でおでかけなんてできない、なんていうご家族も。

そこで、東京おでかけプロジェクトでは、「ご家族がどんどんおでかけするきっかけをつくりたい」という想いから、ご家族がどんな場所へおでかけしたいのか伺ったうえで、はじめてのおでかけ体験をサポートする、「本屋へおでかけプロジェクト」を企画しました。

お気に入りの1冊を探す「冒険タイム」は、開店前の店内を貸し切り、ゆったりと

「いくら楽しそうなイベントでも会場へ行くまでが不安だし、大変」という声にも応え、希望されたご家族にはご自宅と会場の往復を一緒に付き添ってくれる学生サポーターも全国から集まりました。

医療や福祉、教育関係の専門職を目指す学生サポーターたち

どの学生サポーターも、将来は医師や看護師、教師、福祉の専門家として、病院や福祉施設、児童養護施設などで子どもたちに関わる仕事に就きたい!と、ご家族の暮らしをもっと知りたい、学びたい、と思ってくれている方たちばかり。

学生サポーターとすっかり仲良しになった様子の参加者

なかなかご家族の暮らしを理解しながら専門的なケアにあたっている専門職は少ないのが現状だと思いますが、そんな専門職が増えてくれたらという願いも込めて、東京おでかけプロジェクトでは学生サポーターの募集も随時行っています。

ゆったりと「お気に入りの1冊」を探す

今回お借りした神保町にあるこどもの本専門店「ブックハウスカフェ」は、その名の通り、本だけでなく、お店の奥には素敵なカフェカウンターがあります。

大きなアイスがのった「メロンソーダ」が子どもたちにも大人気

そして乳幼児から大人まで楽しめる本が、1万冊も!

お店に入ると、子どもたちはもちろん、本好きの親御さんたちも「わあ!」と目を輝かせました。

「大きなバギーだと、なかなかゆっくりと店内を見て回れないだろう」そんなお店側からのご提案もあり、開店前の1時間、特別にお店を完全に貸し切らせていただきました。

見たことのない本の数に喜んで走り出すきょうだい

「ゆっくりと、お気に入りの1冊を見つけてほしい」

学生や医療的ケアができる医師・看護師らが1家族に1人、サポーターとしてご家族に付き添いながら、さらにこの日はブックハウスカフェの皆さんが「絵本案内人」となり、お子さんたちのために本を一緒に選びました。

大好きな宇宙や星の本を夢中になって学生サポーターと一緒に探す子ども
「ゆっくり本を探したくてきた」と医療的ケアが必要な妹のいるきょうだい
サポーターたちが病気や障害がある子どもと遊ぶ間、つぎつぎに好きな本を手に取るきょうだい

冒険マップを片手に本を探したり、なかなか家族写真を撮る機会がないご家族のためにプロのカメラマンが記念撮影をしたり、思い思いに店内を楽しみました。

「夏休みに読む本を探しに来た」ときょうだい全員で参加してくれたご家族

声とおもちゃのプロによるおはなし会

「ブックハウスカフェ」が開店する11時になると、一般のお客さんも続々とお店の中へ。中央のカフェスペースは貸切ったまま、いよいよイベントがはじまりました。

今回参加してくれたのは、4組のご家族。きょうだいもたのしめるイベントを探していたというご家族や、本屋さんへ行くのははじめてというお子さん、突発的な大きな音が苦手なお子さんなど。

イベントがはじまると、まずは自己紹介を兼ねてみんなが見つけた「お気に入りの1冊」を紹介してもらいました。

お気に入りの1冊を紹介すると、そんな本あったんだ!と歓喜の声

そして、みんなお待ちかねの「おはなし会」がはじまりました。

感染症リスクが高い子どもたちに、夏を感じてほしい!という想いから今回選んだ2冊は夏を感じる「にじいろのさかな」と「ねこのはなびや」。

夏を感じてもらえるように用意した2冊

普段は有名映画の吹き替えや、人気番組のナレーションを担当している声優さんたちで構成されている「おはなしグループyomitano!」さんの登場です。

声優さんたちで構成されている「おはなしグループyomitano!」

「はじまるよ、はじまるよ」おもちゃコンサルタントのかけ声にあわせておはなし会がはじまると、まずは1冊目の「にじいろのさかな」の世界、海の中へ!

はじまるよ、はじまるよ

にじいろのキレイな魚が現れたり、大きなタコが現れたり!表情を変える海の様子に、子どもたちは釘付けになっていきます。

ざぶーん、海の中へ
真剣におはなし会に参加する参加者
タコ役に扮するサポーターの小児科医
ダイナミックな動きのタコがブックハウスカフェを練り歩きます
シフォンの布をひらひらさせて、きれいなウロコに見立てます

そして2冊目の「ねこのはなびや」になると、ねじねじねじねじ。さっきのウロコが、あら不思議!ねじりはちまきに変わっていきます。

たまや~!ねこや~!のかけ声をみんなでかけていると、クライマックスは大きな花火が登場!みんな一緒に空に花火を打ち上げました。

参考)スペシャルニーズがある子ども向けのおもちゃ一覧

https://asobinomushi.mystrikingly.com/#_8

神保町といえばカレーの街

あ~びっくりした!ふつうの「おはなし会」とは違う、遊びも取り入れたダイナミックな演出にみんなドキドキしたあとは、おいしいカレーパンと交流タイム。

摂食嚥下障害やアレルギーがある子どもたちにも楽しんでもらえるように、柔らかい食事を用意するか?

事前の打合せではスタッフも迷いましたが、「神保町のカレーパンをそのまま味わってほしい」、そんな想いから今回はあえて少し辛いカレーパンを用意しました。

揚げずに焼かれたサクサクのカレーパン

その街やその場所、その食べ物をそのまま楽しんでほしいというスタッフの願い通り、「ちょっと辛かったけど、神保町らしさを感じれた!」と、参加者から嬉しい声が。

インクルーシブな公園や、誰でも使えるトイレ。

そう謳っていても現実には使えない人がいたり、使い勝手が悪かったり。

どんなにがんばって、みんながHAPPYになるような場づくりやイベントを企画してみても、なかなかそうはいかないことがある。

でも、「少しの柔軟性と声がけ」があれば、そこにはHAPPYな空間が広がるんじゃないか。 

そんなことを考えながらほおばるカレーパンは、スパイシーだけどおいしくて、ほくほく満たされるのでした。

「本屋へおでかけプロジェクト」を終えてみて

東京おでかけプロジェクトのアンバサダーを引き受けてくれているご家族やコアメンバー、ブックハウスカフェの皆さんとは、何度も下見や打合せを重ねました。

一番大切にしたかったのは「病気や障害があるお子さんとはご家族を介して会話するのではなく、お子さん本人とお話しすること」

「病気や障害のことを聞いてもいいけれど、それよりも、親御さんやきょうだいと本屋さんを冒険したり、カレーパンを食べたり、この瞬間を友のように一緒に楽しむこと」

イベントを終えてみて、サポートスタッフからは「本選びに夢中になっていて、そういえばどんな病気や障害があるのか知らないままだった」

「もっともっと一緒に色んな本を探したかった、話したかった」

そんな声が聞こえてきました。

ご家族からは、「スタッフの皆さんの笑顔とウェルカムの温かい空気感にとても嬉しくなりました」であったり、

「娘は何日も前から「めちゃくちゃ楽しみすぎる~!!」と言っていました。こんな本を読んでみたいな、「星の王子さま」もチェックしたいなとワクワクしていました。いつもはネットで口コミなどを参考に購入しているのですが、はじめての本屋さんはまさに「本とのめぐり逢い」を体験できた時間でした。本、そしてスタッフの方との出会いをありがとうございました。」

と、そんなあたたかいコメントが寄せられました。

サポートスタッフと真剣に本を探す母親
おもちゃで波の音を表現する子どもたち

世界はたまにいじわるで、誰も味方なんかいないような気がして、下を向いてしまう日もあるかもしれない。

でも、「世界はこんなにあったかくて、Welcomeされているんだ」ともしこの日のことを思い出してもらえたら。

このおでかけ体験が、次のおでかけや家族旅行、冒険のきっかけになったら、うれしく思います。

集合写真

泣いても、走っても、アラーム音が鳴っても大丈夫。

「行ける場所」より「行きたい場所」へどんどんおでかけしよう。

どんどん街の人の目を変えていこう。

これからも、東京おでかけプロジェクトでは、「親子のはじめてのおでかけ体験」を企画していきます。

別れを惜しんでスタッフから離れないきょうだい

さいごに

今回のイベントは、NHKにも取材いただき多くの方からご寄付やボランティア、協力のお問い合わせをいただきました。

今後も継続的に活動を運営するため、東京おでかけプロジェクトでは、年間を通して寄付を募集しております。

活動には会場利用料や、医師/看護師/ヘルパーと いった専門的なケアにあたってくれるスタッフ、 物品などの費用が必要です。

ご寄付いただける方は、いずれかの方法でぜひお願い致します。

◆振込み口座
三井住友銀行 中野支店 普通4994025

◆クレジットカード決済・グッズ購入による寄付

◆「WeWard」アプリで歩いて寄付する
※紹介コード「YUM+-iygPQ」をぜひご利用ください

Special Thanks

本屋へおでかけプロジェクト SUPPOTERS

助成:令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業
写真:吉澤健太
ブックハウスカフェ:今本義子、茅野由紀 他スタッフの皆さん
学生サポーター:田羅理美、増山遊斗、岡田桃花
医療サポーター:武山絵里子、宮本二郎
おはなし会:おはなしグループyomitano!
おもちゃコンサルタント:遠藤基子、高橋朝子
主催:東京おでかけプロジェクト

本屋へおでかけプロジェクト SUPPOTERS

ご寄付・ご協力いただいた皆様

■法人サポーター
株式会社アシスト/キフマガジン「KEEFU」

■個人サポーター
小島希美/中野富美子/大高美和/坂西理絵/村林瑠美/村 一浩/河野美恵子/峯尾志穂/はるか/杉本瑠美/高橋洋平/金野幸雄/宮路実奈/瑞慶山 明香/角倉 恵美/小西由香/合田 紀子/岡田 結生子/菊地 温子/山田 由美/杉木 龍太郎/鈴木 譲/森川 昌子/MONA MUSIC/吉田 麻鈴/小林 茂/市川 望美/江成 充/近藤 綾子/山口正人

■マンスリーサポータ―
永島 崇子

■特別協力
特定非営利活動法人みかんぐみ

■助成
令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業

(順不同・敬称略)

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