新卒で外販していないユーザー系子会社に入るのはやめとけ!!

■はじめに
私はユーザー系システム子会社に新卒で入社し、5年間エンジニアとして勤務しました。ですが、組織内で技術力・PM力等の高い専門性を継続して向上させることが難しい環境であり、業務自体が自分の市場価値の向上に繋がらないと総合的に判断し20代後半で大手SIerに思い切って転職しました。

 この事で得た経験を共有し就活生、または外販をしていないユー子に就職しようとお考えの方のお役に立てれば幸いです。親会社の業種、業態や株主の違いによりユー子の存在意義や方針も違うと思いますので「外販をしていないユー子は悪だ!」とは一概には言えませんが、あくまで自分が経験した事についてお話させた頂ければと思います。

会社のスペック&僕のスペックについて
■親会社
社員数が1万人、グループ会社全体で2万人、一部上場企業、 恐らく誰もが知っている会社でネームバリューが高い企業です。
経営企画部の中にIT部門があり、IT企画、IT戦略業務をおこなっています。

■私が所属していた会社
親会社の情報システム子会社、社員数は数百人程度、社員の半分は本体からの出向社員です。
基本的に親会社の案件が約95%、外販は約5%
主業務はシステムの開発・運用・保守

■僕のスペック
・都内の理系4大卒(情報工学部)

■「安定企業」を求めて
私が新卒で入社した会社を選んだ理由は、
・会社経営が安定している会社である点
・IT技術に関わることができる点
 この2点で会社を選びました。
入社して確かにこの2点は十分に満たされていた会社だと感じました。クビになる事はありませんし、給料も人並みに頂く事ができ、IT技術に関する業務にも従事する事ができる会社でした。また当時は私は親会社にネームバリューがあったため親や友達にも自慢するような頭がゆるふわな学生でした。そう、当時の私の頭の中はハッピーセット状態だったのです。
そして、
非常に残念ならが当時の僕には会社を選ぶ理由の中でとっても大事な点に気づいていませんでした。

それは、

「常に市場価値を向上でき技術的、人間的に向上し成長できる環境である点」

です。

エンジニアとして生きていくためには、常にIT技術に関して勉強をする必要がありその勉強(学習する事)が一種の楽しみでもあったりします。

では、なぜ市場価値を向上でき技術的、人間的に向上し成長できる環境でなかったのかを説明させていただきます。

■日常業務について
システムのリプレース、システムの新規構築等の案件がありますが主に実作業(設計・構築)はベンダー(SIer)の方が行います。例えば、システムのリプレースの場合、私たちの主な役割は既存のシステムの構成がどのようになっているか、システムの設定はどのようになっているかなどシステムの環境の調査を行いその情報をベンダーに渡す事が仕事になります。ベンダーは我々が渡した情報をもとに最適解を考えシステムの構築を行います。また、ベンダーさんがシステムを構築する際には自社管理のデータセンタに入る必要があるため入館対応等を行っていました。また、作業進捗を案件の発注元である親会社に報告する事も業務の一つです。

実際僕がやっていた業務って、既存システムの情報を把握して、提示して、ベンダーさんの入館対応して、親会社にPJの進捗報告を行うぐらいです。
同じ年代のベンダーの方がバリバリ構築業務に従事している姿を見ると、かなり焦りを感じていました。

 また、案件の発注元は親会社しかないため、案件がおりてこない時は暇でやる業務がありませんでした。暇なときは既存システムの手順書の整備を行いますが長い時は2~3ヵ月も暇なときがあり、手順書の整備ばかりで何のために出社しているのかわからず、気がおかしくなりそうでした。空いた時間で勉強をすればよいという話になりますが、勤務時間中は実質的に勉強禁止でしたので社内の資料を読み漁ることや、ネットでITに関連するニュースを見るぐらいしかできませんでした。また、開発環境が整っていない会社でしたので自由にサーバをいじって検証したり等もできません。業務がないのに形式的に出社し定時に帰るという日々のなかで「このままこの会社にいてITスキルは身につくのだろうか」という焦りを感じていました。

このように、案件には従事していますが実作業として私は何を行ったのだろうと改めて考えてみるとDCへの入館対応や他の部門との調整業務ばかりで何もITスキルが身についていない事に気が付き転職したいという思いに至りました。

ある程度SIerでシステムの設計構築業務で経験を積んだ人材であればユーザー系企業に転職してもよいのかなと思います。ですが新卒でユーザー系企業に入るのは高度な専門的汎用的ななITスキルを身に着けることが難しい環境であるため、その後のキャリアアップが難しくなると考えています。

親会社から案件が下りてくる構造と外販をしていない弊害
 親会社のIT部門と情報システム子会社(株式100%親会社)は密接に関係があります。
また、親会社の理系っぽい部門、例えば通信、電機などの部門との関係も密接に関係する場合があります。IT子会社の社長だった人がIT部門の部長になったり、通信部門の部長がIT子会社の社長になったりと大体3年から5年周期でぐるぐる回ります。基本的に全員親会社の総合職(高学歴エリート)の方です。

 親会社からIT子会社を通さずにベンダーに発注する事は非常に少ないです。なぜなら、IT子会社の社長とIT部門の部長が元は一緒に苦楽を共に過ごし働いた先輩後輩の関係である場合や、IT子会社の社長及び経営層が(親会社では部長クラス)本体に戻った時のその後の関係性を考えているためです。

 IT部門の部長もIT子会社の社長も結局、親会社で出世する事を望んでいます。そもそも、出世欲がない人材が一部上場企業でかつ日系企業の部長クラスまで上り詰める事ができません。IT部門の部長がIT子会社を経由させずITベンダーと直接案件を依頼した場合、IT子会社の利益は下がります。そうなると、IT子会社の社長の評価は下がりますよね。評価するのは親会社です。そうなるとIT子会社の社長が本体に戻った時、IT部門の部長との関係性は悪くなりますよね。なぜ、案件を発注するときにIT子会社を通さなかったのかと。

そのため、営業が居なくても必然的に案件がポコポコ降ってきます。このような関係性だと社員はどのような考えに陥るでしょうか。また、どのような社員に育つのでしょうでしょうか。

社会人歴10年先輩の方から言われた名言を紹介します。

「テキトーに業務をやっても案件は自動的に降ってくる」、「すべてお客が悪い」

です。

外販していない会社今後生きていくと、謙虚さのかけらのない社員になるのかと絶望しました。はっきり言って自分はこのような先輩社員にはなりたくないと当時は思っていました。

■社員の仕事に対するモチベーション
私のいた会社は親会社からの出向社員5割、プロパー社員5割でした。出向社員のかたは高年齢の方が多く技術的な好奇心も非常に低い傾向にありました。もともと親会社の業務をやりたくて入社している方たちばかりなのでIT仕事に対するモチベーションが非常に低くただ生活のために働いているという方が多かった印象です。(そうでもない人もいらっしゃいましたが)そのため、エンジニアとしてより良い環境を求めて転職したいという気持ちが強くなりました。

■技術力について
前述のように、システムの設計や構築に従事できる機会はほとんどなく新しい技術に触れる事が難しい環境でした。SIerであればITサービスを提供する会社とパートナ会社協定を結んでいる事が多くそのサービスの技術資料を見る事が出来たりしますが所属していた会社はそのようなITパートナーでもないので基本的にネットの情報元がすべてでした。そして、検証環境もなく本番環境のみです。入社3年目の頃に今後の新卒で入られた方の教育で自由にサーバに触れる環境がほしいと会社に申し入れもしましたが金がかかるからできないと断られました。本番環境しかない環境でどのようにシステムについて学べというのでしょうか。

プロジェクト管理能力について
この点に関してもSIerの開発部隊に比べて断然劣ります。なぜなら、開発プロジェクトに関わる機会が少ないからです。リプレース案件もシステムごとに5年に1回しかないですし、連続的にPJに従事できる機会は私がいた会社ではありませんでした。

■給与体系について
私が働いていた会社での給与基準、等級は基本的に親会社の規定を似せて作らています。親会社は基本的に年功序列であったため、若手がいくら仕事ができた場合でも給与には反映されることはありませんでした。また、親会社の給与基準よりもIT業界の給与基準ほうが高いためSIer等のIT会社と比較すると200万近く低い給与でした。(外販をしていないので当たり前かもしれませんが。。。)

■出世ついて
子会社の社員はいくら能力が高くても、子会社プロパー社員から経営層に上がることは非常に難しいです。現に、部長以上の方はプロパー社員では一人もいませんでした。もし、仕事精一杯頑張って社内で出世し部長クラスに昇格しても、SIerクラスの給料がもらえない事に気づきIT子会社で出世を目指す道を選ばすに転職でキャリアを上げ給料を上げる選択をしました。

■まとめ
新卒で外販をおこなっていないユーザー系企業に入社し32.33歳を超えて「したい仕事がコレじゃない」と思いいざ転職!と考えた時、転職は非常に難しくなります。なぜなら、これまで市場価値(技術力やPM力)が向上できるような経験を積むことが非常に難しいからです。ユーザー系企業、SIer、Web系企業と業務内容が異なり積むことができる経験も異なります。社会人人生の中の20代という大切な時期をどのような組織で歩むのか、どのような業務に従事したいのか、どのような業務が市場価値を上げるのかを真剣に考え行動することで自分が納得できる道に勧めると思っています。もし、外販していないユーザ系システム子会社で退職まで働き、一生を終えるのであれば問題はないかもしれません。しかし、1度きりしかない人生の中で向上心を持たずただ生活するためだけに働くことはつまらないと思います。皆様がどのようにご自身のキャリアについて捉えられているかはわかりませんが何かの参考になれば幸いです。

以上です。

■■部長のあるべき姿とは(番外編)■■
出向社員は、主に定年退職間際のおじいちゃん(高年齢の方)が大半でした。そのため、おじいちゃんが自分の上司または部長になるわけです。一つこの件についてエピソードを書かせて頂きます。

 新卒入社して研修を終え、ある部門に配属になり、初めてお客様(グループ会社の情シス)とシステムの移行の打ち合わせに議事録係として参加できる機会を頂きました。当時の僕は、部長はとても能力が高い方だと思っており打合せでしっかりと自分の役割を果たしたいと考えていました。そのため、僕は事前に移行システムに関する資料を十分に読み込み、事前にわからない用語は調べ、自分の中では準備万端!と意気込んで打合せに参加しました。

 弊社側のメンバーは、私、移行メンバの中堅社員(30代後半)、部長(50代後半)の3名、お客様は情シスの次長とシステム担当者の2名でした。

打ち合わせは順調に進み必死にIT用語がわからないながら必死に議事録を取っていました。僕はふとPCの画面から顔を上げ、自社の部長を見ると腕を組み目をつむり、淡々の担当者同士の話を聞いているように見受けられました。(さすが部長、目を閉じて考え事に集中しているのかな。)と新入社員ながら尊敬の眼差しでみつめてしまいました。そして、継続して部長を観察していると首たてにして頷いているように見えました。(部長は話している方の意見に賛同しているのかな。)とポジティブシンキングの当時の僕は思っていました。

その後、部長が座っているあたりらへんから「ヴォオオオブヒ。」という効果音が聞こえました。僕は部長に何が起こっているのかわからず目を見開いてじっくりと改めて観察し始めたと同時に、部長が目をぱっと見開いて資料に視線をおとしていました。

その時に僕はすべてを理解しました。

(部長、、寝てたんだ。)

その瞬間、僕の中での部長に対しての尊敬の念が一気に崩れ去り、熱い眼差しから冷徹な眼差しに変わりました。

最終的に自社の移行メンバが部長に対してこの方向性でプロジェクトで進めたいと説明し、部長が鋭い目つきで担当者を指さしながら凄みのある声で「よし、それでいこう」という言葉が出たのちに打合せが終了しました。

 そう、なにを隠そう、自社の部長は腕を組み目を閉じて考え事をしていたのではなく「寝ていた」のです。ちなみに、その後部長に打合せ内容を質問をしたら何も答える事ができませんでした。

 新入社員の私は、仕事に情熱を持った人やビシバシ意見を言う人、鋭い指摘をする人が部長であると勝手にイメージしていました。ですが、現在進んでいる案件の内容をほとんど理解せずGOサインを出すだけの部長でした。また、この部長だけではなく他の部門の部長も同じような感じです。この話はネタではなく本当の話ですよ。

以上です。

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