見出し画像

出産漫画の下書き⑥「無痛も産後はフツーに痛い」出産直後〜夜

30分の立ち会い(コロナ禍で制限があったんです)を終え夫は帰り、まだ助産師さん達が忙しく片付けをする分娩室で、リンダと2人きりになった。

クリーム色の帽子をかぶせられ、私の胸にピットリのっているリンダ。

(このあたりの話は新刊「コロナ禍妊娠日記」に描いたのでとばして)

そのまま抱いていたかったけど、急にクラクラと気が遠のいてきたので、「落としそうです」と告げた。助産師さんに抱かれて、リンダは他の部屋へと移される。

私はそのまま気を失うみたいに寝た。

.....

病室のベッドまで運ばれて、その日の夕方までひたすら眠り、食事の前に目が覚めた。貧血だ。

回診にきた助産師さんに、力を入れても尿が出てこないことを伝えると、管を通して瓶に吸い出された。「これ麻酔が効いてないとめちゃくちゃ痛いんですよー」と言われ「へー」と呑気にしていたが、夜までに自力で出せなければまた管を通さないといけないらしい。

「そうなったらもう痛いので、水たくさん飲んで下さい」と真剣な顔でペットボトルの水を手渡された。恐ろしくなって、ほぼ一気飲み。

.....

水と一緒に渡されたのは、鎮痛剤、鉄剤、あと白い塗り薬。

「頑張ってイキんでちょこっとお尻が腫れちゃったので、軟膏塗って下さいね」と早口で言われ「お尻?腫れる?なんで?」と思ったけど、トイレに行ってギョッとした。

腸が出てる気がする。痔か。内臓が飛び出すくらいイキんだのか。

4センチ切開して縫われた股も腫れてる。麻酔がだんだん薄れてきて、座るのさえツラい。ビリビリ音を立てて下半身が切り裂けそうな激しい痛み...痔なんてどうでもよかった。

足を上げられないからズボンもはけず、円座クッションにすら座れず、その日の夕食はオムツのまま中腰で食べた。痛さと貧血で食欲が湧かない。

またしても半分以上残して、すぐにベッドに戻ったけど、股もお尻もずっと燃えたまま。

.....

夜、助産師さんがリンダを部屋に連れてきて、赤ちゃんの抱き方や母乳の飲ませ方を教えてくれた。

人前で胸をペロンとさらす、不思議な体験。そして乳首をグイグイつままれマッサージされるという、更に不思議な体験。

赤ちゃんが自分の乳首に吸い付くよりも、そっちのほうがずっと不思議だった。不思議というか奇妙というか。

抱き方が経産婦のようだと言われた。「怖くないんですね」と驚かれたけど、確かに、小さな生き物を扱うことは別に怖くない。犬飼ってるからだろうか。うちの犬そんな小さくないけど。

「今夜はまだ赤ちゃんとは別室にして休んで下さい」と睡眠導入剤を渡されて、リンダはまた去っていった。

「またね」と彼女に声をかけて、朝まで沈むように寝た。股と尻は燃え続けていた。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?