トーキョー・コンセンサス

科学は葬式ごとに進歩する。

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最近の記事

厚生経済学の基本定理って何?

ミクロ経済学では「厚生経済学の基本定理」というものがあります。 神取道宏著の『ミクロ経済学の力』では、厚生経済学の基本定理を「ミクロ経済学が明らかにしたもろもろの結果のうちでも、最も重要な発見」としています。また、姉妹本である『ミクロ経済学の技』では、「厚生経済学の基本定理は、経済学における最も重要な結果」と言われています。 厚生経済学の第一基本定理厚生経済学の第一基本定理とは、「完全競争市場均衡は、パレート効率的な資源配分を実現する」という定理です。 ここで、パレート

    • マンキュー教授のベーシックインカム入門

      グレゴリー・マンキューの「ユニバーサルベーシックインカムについての小論 (A Quick Note on a Universal Basic Income)」の和訳です。 「ベーシックインカム」と「負の所得税」が同じであるという内容です。 平均所得が5万ドルであるような、所得格差の大きい経済を考えてみよう。社会的セーフティネットを提供するために、2つの政策が提案されているとする。 A. すべての人に1万ドルを給付する。一律20%の所得税を財源とする。 B. 所得制限あ

      • 消費税と所得税、どちらが望ましいか

        グレゴリー・マンキューの「消費税 vs 所得税 (Consumption vs Income Taxation)」の和訳です。 前回の記事で、私は所得税よりも消費税のほうが望ましいと述べた。コメントで、ダニエル・デメトリ (その前年の ec 10 の学生) が、インセンティブに関する重要な質問をしていた。 消費税はインセンティブに影響しないのに、所得税は影響する理由について混乱しています。人々はお金を節約することに関心があるのではなく、お金を使うことに関心があります。

        • 消費税は公平な税である

          グレゴリー・マンキューの「公平税 (The Fair Tax)」の和訳です。 ある読者からこんな質問があった。 先生、Boortz/Linder の税制案である公平税について、先生のお知恵を拝借できますでしょうか。 私の理解では、いわゆる公平税案は、アメリカの連邦税収のかなりの部分を小売売上税で調達することを求めている。一種の消費税だ。多くの経済学者 (私もその一人だ) は、消費税は貯蓄を阻害しないので、所得税よりも優れていると考えている (このテーマについては、以前の記

        厚生経済学の基本定理って何?

          日本の法人税は高すぎる

          グレゴリー・マンキューの「法人税率 (Corporate Tax Rates)」の和訳です。 KPMG の最近の調査によると、アメリカと日本の法人税率は、調査した80カ国以上の国の中で、最も高い国となっている。両国の法人税率は約40% (州・地方レベルの法人税を含む) であり、EU の税率は平均で約25%である。 レポートの内容はこうだ。 過去1年間に法人所得税の税率を変更した国のうち、圧倒的多数が税率を引き下げ、数年来続いている税率引き下げ傾向を継続させた。これは、昨

          日本の法人税は高すぎる

          マンキュー教授の税制改革論

          グレゴリー・マンキューの「3つの税制改革 (A Three-Point Tax Reform)」の和訳です。 このマンキューの改革案を日本に適用するなら、 消費税率の10%から30%に引き上げ 法人所得税の実効税率の30%から15%に引き下げ (法人最低税率) 社会保険料の約30%から15%に引き下げ になるでしょう。政府債務は削減されませんが、労働者の所得は増えるので、世代間格差の縮小に貢献することでしょう。 次のような税制改革を考えてみよう。 国内および輸入

          マンキュー教授の税制改革論

          ブランシャールの『21世紀の財政政策』を5分で理解する

          オリヴィエ・ブランシャールの『21世紀の財政政策 (Fiscal Policy Under Low Interest Rates) 』の第7章「要約と未解決の課題 (Summary and open issues)」の和訳です。 ブランシャールは、ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローで、MIT で経済学の名誉教授も務めています。また、2008年から2015年まで IMF のチーフエコノミストを務めました。 ブランシャールの理論を一言でいうと、民間需要が強ければ「純粋

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