グレゴリー・マンキューの「消費税 vs 所得税 (Consumption vs Income Taxation)」の和訳です。
前回の記事で、私は所得税よりも消費税のほうが望ましいと述べた。コメントで、ダニエル・デメトリ (その前年の ec 10 の学生) が、インセンティブに関する重要な質問をしていた。
消費税はインセンティブに影響しないのに、所得税は影響する理由について混乱しています。人々はお金を節約することに関心があるのではなく、お金を使うことに関心があります。
所得税の場合: 1時間の労働 → 税引前16ドル → 税引後8ドル → 8ドルでチョコレートケーキ・ビデオゲーム・レッドソックスのチケットを買う。
消費税の場合: 1時間の労働 → 税引前16ドル → 8ドルでチョコレートケーキ・ビデオゲーム・レッドソックスのチケットを買い、8ドルの税金がかかる。
働いた金額も使った金額も同じなのに、実質的な差は何なのでしょうか。
まさにダニエルの言うとおりだ。今日の消費のために今日働くという意思決定に注目するなら、消費税と所得税は同じような効果をもたらす。どちらも労働努力を抑制するのだ。
しかし、もう一つの調整幅、つまり貯蓄して将来の消費のために、今日働くことを考えてみよう。税率を50%としてダニエルのたとえ話を続けてみる。金利が7%だとすると、今日貯めた1ドルが10年後に2ドルになる。
所得税の場合: 1時間の労働 → 税引前16ドル → 税引後8ドル → 10年後に16ドルの貯蓄 → 利子に対して4ドルの所得税 → 12ドルでチョコレートケーキ・ビデオゲーム・レッドソックスのチケットを買う。
消費税の場合: 1時間の労働 → 税引前16ドル → 10年後に32ドルの貯蓄 → 16ドルでチョコレートケーキ・ビデオゲーム・レッドソックスのチケットを買い、16ドルの税金がかかる。
つまり、消費税では、将来消費するために、いま働いて貯蓄するインセンティブが高くなるのだ。
これをさらに意地悪して、ちょっと計算してみよう。実質賃金を W、金利を r、税率を t とする。貯蓄して T 年後に消費するために今日働くとする。所得税のもとでは、1時間の労働で得られる消費額は、$${(1-t)W*[1+(1-t)r]^T}$$ である。
消費税のもとでは、私が得る消費量は $${(1-t)W*[1+r]^T}$$ である。
ここで、これらの税引後相対価格と税引前相対価格を比較すると、$${W*[1+r]^T}$$ となる。
消費税の場合、T に関係なく税引後の相対価格は税引前の相対価格の 1-t 倍となり、一定のくさびが生じることがわかる。T が大きいほど、税引前と税引後の相対価格の差は大きくなる。つまり、消費税が現在の消費と将来の消費に同じ税率で課税するのに対し、所得税は現在の消費よりも高い税率で将来の消費に課税するのだ。
結論: 消費税も所得税も労働意欲を奪うが、所得税は貯蓄意欲も奪う。