もうひとつのラブストーリー(52)「外出」
入院中に何度か外出してアパートに戻っていたのですが、この日はアパートの外に出てみることにしました。
「「トクちゃん」なんか今日は調子良さそうに見えるんだけど外出してみる?」
「うん、そうだなあ。いつもアパートの中じゃ気が滅入っちやうからな」
「じゃあ、私の車で行こう」
「いや、車は俺が運転するよ、しばらくエンジンかけてなかったからな、エンストしてると困るから⋯」
そうして二人で海を見に行きました。
「やっぱり海は良いよな⋯。心が洗われる気がするよ⋯」
「「トクちゃん」がそう思ってくれるんなら来て良かったね」
「ねえ、「ちえ」せっかくここまで来たんだからアソコに寄ってこうよ?」
「アソコって。アソコはアソコに決まってんじゃん」
「思い出の場所だよ」
「あ~。良いね。私も是非行きたいな。「トクちゃん」運転大丈夫?」
「うん、今のところ大丈夫だよ。薬は、たくさん飲んでるからさあ、眠くなるのが怖いんだよね⋯」
「それにさ、薬の副作用でこんなに太っちゃったよ⋯」
「太っても「トクちゃん」は「トクちゃん」に変わりはないからね、私は全然気にならないよ」
と話している内に目的の場所に到着です。
いつものように手を繋いで階段を上がって行きました。
「あー、気持ち良いなあ。やっぱり病院に居るよりも外の方が断絶良いよ」
「「トクちゃん」が少しでも元気になってくれると嬉しいなあ⋯」
「あのね「ちえ」お願いがあるんだけど⋯」
「なに、お願いって」
「今晩、アパートに泊まってくれないかなあ⋯」
「う~ん、良いよ。お母さんには「トクちゃん」のアパートに泊まるって電話するから」
「もう、お父さんとお母さんに公認されたってことで良いのかなあ⋯」
「もちろんだよ。病気さえ治れば、いつだって結婚できるんだからね」
「じゃあ、今夜の夕飯は辛~いカレー作ってくれる?」
「病院の食事って味気ないんだよね⋯」
「任せといて、後で二人でスーパーに買い物に行こうね」
そして、夕飯はを食べ終わると。
「「ちえ」俺、久しぶりに「ちえ」を抱きたいんだけど⋯。だめかなあ⋯」
「何言っての「トクちゃん」。私達は、もう夫婦同然なんだからね。遠慮なんてする必要ないよ」
ギュッ
「俺、絶対「ちえ」を離したくない」
「私だって同んなじだよ」
「俺、早く退院できるように頑張るよ」
「「トクちゃん」頑張っちゃダメだよ。頑張り過ぎて病気になっちゃたんだから」
「うん、そうだな」
ホントに久しぶりに「ちえ」を抱くことができました。
うつ病になると性欲も衰えるといいますが「ちえ」を抱くことができたということは、それだけ病状が良くなった証拠なのでしょうか⋯。
つづく
うつ病で苦しんでいる方達に希望を与える活動をしていきたいと考えています。よろしければサポートをお願いいたします。