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Z世代の匿名コミュニケーションとは

つながり重視だけど「密」はイヤ。


スマートフォンの普及は、我々のコミュニケーションのかたちをも変えてきました。
とりわけ、10 代から 20 代の若者は、現代社会では、最も変化率の高い世代であるといえます。
いまの若者たちのコミュニケーションといえば、そのほとんどが SNS でのやりとりです。 すぐ近くにいる友人にさえ、口頭ではなくLINEで話しかけたり、家族内でもスマホで連絡をしたりと、2000 年以前では想像もつかなかった新たなコミュニケーションが生まれています。
コミュニケーションのかたちが変われば、関係性の築き方も変わります。
一体、現代の若者たちは、SNSを主とするコミュニケーションを通して、どのような人間関係を築き、何に充足を覚えているのでしょうか。
いまこの一瞬を「若者」として生きる「Z世代」について、紐解いていこうと思います。
はじめに、「Z世代」の定義について見ておきましょう。
Z世代とは、生まれたときからインターネットが普及しているデジタルネイティブ世代のことをいいます。
年代につき、厳密な定義はないのですが、おおむね1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代がこれにあたるとされています。

以下の2つのグラフを(特に10代、20代に注目して)ご覧ください。


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わかりましたか?そうなんです。
10代~20代について、2013年7月時点で約7割だったスマホ利用率。2019年では約9割に上っています。まさに、「デジタルネイティブ」世代と呼ばれる所以です。
Z世代は、そのほとんどが、常時だれかと接続できる媒体を持っているということになります。


次に、Z世代の対人コミュニケーションの特徴について見ていきます。

若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きる (日経プレミアシリーズ) | 牛窪 恵 |本 | 通販 | Amazon

参考にした本はこちら。


本書によると、Z世代は、恋愛や友人関係において、3つの密を嫌う傾向にあります。秘密・親密・厳密です。
情報をオープンにして、ゆるくつながり、もやっとした関係性を求めているのです。
1つ1つ解説していきます。


まず、秘密について。


Z世代は、SNS上で鍵垢裏垢と複数のアカウントを使い分け、同一フォルダ内や同一アカウント内では秘密を持たない、あたかもオープンに情報開示しているように振る舞います。

親密について

また、親密を嫌うのは、「深い関係になりすぎると何かと面倒」だと感じるからです。

たとえ身の回りで、大きな事件が起こっていなくても、他者と親密になることに対して抵抗があります。
その背景として、ネットやSNSで日々、親密な男女や家族が、(親密であるがゆえに)取り返しのつかない恐ろしい事件を起こしたといったニュースに触れて育ったということが挙げられるでしょう。
実際に、1990年代半ばから2000年代初頭には、「セクハラ」や「ストーカー」「DV」、「デートDV(恋人間の暴力)」といった言葉や事件がネット上に飛び交いました。

厳密について


そして、厳密を嫌い、もやっとした関係性を求めます。

これは近年、若者に「エモい」や「チルる」という言葉が流行ったことからもわかります。
前者は、英語の「emotional(エモーショナル)」による言葉。感情が揺さぶられたり、「なんとなく」グッときたりしたときに「エモい」などと表現します。
一方、「チルる」は、英語のヒップホップ用語が語源。くつろぐ、癒される、まったりする、などと感じたときに、「チルる」「チルってる」などと表現します。
振り返れば、日本で初めて「癒し」という言葉が頻繁に使われるようになったのは1999年です。この年、「癒し」は信号流行語大賞のトップ10に入りました。
また、曖昧を意味する「ファジー」が同新語部門の金賞を受賞したのは90年ですが、こぞって使われるようになったのは、やはりバブル崩壊後の1999年代半ば以降です。
「なんとなく」を言語化したり明らかにしたりしない。曖昧な気持ちを、これまた曖昧な言葉で表現する。それがZ世代です。
彼らの傾向は、景気の先行きが不透明になり、競争に疲れると、人はライバルや異性との勝ち負けや恋人関係より、ゆるっとした曖昧な関係性を求めるようになる、ということを示唆しているともいえます。
誰がいつどこで誰と会ったのか、誰をフォローしているのか、していないのか、そういったことが一目でわかる、いわば「見えてしまう」時代だからこそ、思いがけず、傷ついてしまうことがこれまで以上に多い。
だからこそ、他者との関係性も、白黒はっきりさせたり、名前をつけたりするより、曖昧にしておいた方が、精神的に楽だという見方もあるでしょう。

以上、Z世代は、恋愛や友人関係において、「秘密・親密・厳密」を嫌い、ゆるくもやっとしたつながりを求めているということについて概観してきました。

どのように繋がるのか

では、コロナ禍のいま、対面で気軽に人と会えなくなってしまったいま、Z世代は、SNSを介してどのように人とつながっているのでしょうか。


結論から言うと、自分と何か「共通点のある赤の他人」とのつながりを求める傾向が出てきています。
職場はオフィスではなく家になったし、授業を受ける場所も教室から家になりました。
そして、人と会って話をすることは、生活を維持するために必要な場合のみになりました。
言い換えれば、居場所が家だけになったということです。もちろん、アルバイトを続けているという人もいると思いますが、会話をする相手がめっきり減ったという人がほとんどではないでしょうか。
実家暮らしであれば、家族とだけ、一人暮らしであれば、一日誰とも会話せずに終えるということが大いに考えられます。
そうなると、どうなるかというと、人とのつながりを求めていながら、誰と何について会話したらいいかわからなくなるのです。

学生が、友人とこれまで会話できていたのは、同じ時間と空間を共有していたからです。行けば会えた、会えれば話せた。
お勤めの人であれば、出社して、上司や同僚を見かけて挨拶すれば、たわいもない話を気兼ねなくしていたはずです。
とにかく、コミュニケーションのコストが小さかったのです。偶発性に頼る部分が大きかったからというのが理由の一つでしょう。
しかし、コロナ禍のいま、誰かと話すということは、スマホを開いて、文字を打って送ることを意味します。しばらく会っていないと、これまで通りのノリで、気軽さでっていうわけにはいかなくなりませんか?
「忙しいかな」などと気にしてしまって躊躇してしまいます。当面続くコロナ禍ですから、その間に頻繁にメッセージを送るのか?ってことを考えると、これまた躊躇してしまうのです。
つまり、SNSを通して気兼ねなく会話できる相手として、「これまでの友人」は候補として挙げづらい、あるいは物足りないというふうに感じるのです。
では、誰と会話するのか。
そもそも、家族と同居していれば、それで満たされるという人もいるでしょう。
一方で、朝から晩まで一つ屋根の下で顔を合わせる、それが日常化するということに対して、ストレスを感じる人もいますよね。

こういった人々は、自分と何か「共通点のある赤の他人」とのつながりを求めるようになるのではないでしょうか。家族でも友人でも恋人でもなければ、バイト仲間でも会社の同僚でもない、自分のことを知らない人。利害関係のない人。
いまのコロナ禍において、ゆるくつながれる相手としてこれほど妥当なものはない。
そして、それを簡単に実現できるのが、匿名のインターネットコミュニティです。匿名SNSともいえるでしょう。


ゆるいつながりを求めるZ世代にとって、匿名コミュニティや匿名SNSは、大いに適しているのかもしれません。

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