見出し画像

【読書記録】BUTTER

今回は、柚木麻子さんの、"BUTTER"です。
本屋大賞ノミネート作ではありませんが、読んで、感想書いちゃったので、投稿しておきます。

読む前に

柚木麻子さんの作品の中で、読んだことがない作品だった。
黄色い表紙のやつ、という認識があっただけ。全くどういうお話なのかのイメージもなく、読み始めた。

初めて読んで

前半はすごく、なんというか、人間の欲、というのが生々しかった。口の中に熱で溶けてゆくバターが広がる感覚は、官能的ですらあると感じた。
後半になるにつれ、なぜか読んでいるのが苦しくなってきて、早く読み終えてしまいたいと思った。こんなことはめったにないのに。 

男性たちに貢がせて、その男性たちを殺したという連続殺人の容疑で捕まっている梶井。彼女は女性が女としてあることが、正解の人生だと言う。女として男の世界からは身を引き、男たちに身をささげて生きることこそ幸せだと。彼女のセリフを聞いて (読んで) いると、たしかに、そうなのかもしれない、とすら思ってしまう瞬間もあった。
でも読み進めてゆくうちに、彼女はなんてわがままなんだろうと思うようになった。誰よりも自由だと言えるかもしれない。読んでいる私ですら、彼女の口車にのせられて、本当の彼女というものが分からなくなってしまった。

作中で、梶井に対する文章として、女であることを許している、という表現があった。これはすごく、的確な表現だと思った。なんとなくみんなが描いている、女、というものに必要とされるものと、されないもの。うまく言えないけど、すごく真な表現だと思う。

書かれている主張自体はすごく共感できて、私が考えることと近かったりするのに。なぜ苦しくなってしまったのだろう。

最適解の難しさ

食事も、人間関係も、”適量” というのはとても難しいと思う。物事と自分の ”適切な” 距離感、も。

この物語の人たちも、その適量というのを、試し、図りながら生きている。
苦しくなってしまったのは、私もその適量を探し続け、探し続けなければいけないことに辟易してしまっているからかもしれない。彼女たちの日々を追いながら、自分の日々を重ねてしまうからかもしれない。自分だったらこんな風に自分のことを許せているだろうか、自分だったらこんな風に誰かに甘えられるだろうか、自分だったらこんな風に誰かを甘えさせてあげられるだろうか、自分だったら。適量をつかみかねている私に、彼女らの切実さが突きつけられるような気がしたからかもしれない。 

自分にとっての適量、他人にとっての適量、それぞれ違う。そしてそれは時間や環境と共に変化していってしまう。ずーっと同じではいられない。自分ですら分からない、目に見えない、自分の適量。

誰の責任なのか

「自分をいたわってない人を見ると、こっちが責められてる気がしちゃうのよねー」
というセリフがあった。
「ちゃんと暮らしてくれないのって、暴力だと思うんですよね」
というのも。

私も、同じように感じることは度々ある。
ちゃんと暮らしていない、というのは怠惰な生活をしている人ではなく、自分を律しすぎているような、そういう人。自分のことをいたわっていない、粗末にしているようにすら見える人。そういう人って、私の周りにも割といる。
例えば毎日終電まで仕事をしているような人を見ると、こちらが苦しくなってしまったりする。その人にはその人の仕事があって、その人の意思があって、その人の生活があるのだから、私がどうこう感じる必要はないんだけど。

だけれどどうしても、「なんでそんな風に、すり減らすみたいに生きるんだろう」って、思ってしまう。 

そう思うのは、かつての自分がそうであったことがあったからかもしれない。先に書いたように、適量をつかむのが下手くそだから。過去の記事に書いたように、妙に完璧主義だったから。そういう風に生きているときもあった。 

自分を自分で大切にすることは、本当はすごく難しいと思う。それは、私も知っている。
自分ひとりの身だとすさんだ生活になってしまう、というのは、甘えているのかもとは思うけれど。それが分かっていても、自分で自分を大切にする、自分の分だけのご飯をきちんと作り、自分しかいなくても規則正しい生活をして、健康な状態を保つ。それって、それ自体にエネルギーが必要だと思う。 

ただ、世話をしてくれる存在がいないと男の人はダメだから、っていうのは、やっぱり、なんか違うんじゃないのかなあ、と読みながら思ってしまった。だって、男だとか女だとかは、そこに関しては関係ないんじゃないの?って。それは男も女も一緒なんじゃない?
本来自分のメンテナンスは、ある程度大人になれば出来るはずで、だから本来自分ですべきなのではないの?って。それが難しい状況にある人もいて、そういう人は誰かに頼ったり、助け合ったりして生きられる世の中であればいいな、と思うけど。そこに、男だから、とか、女だから、とかはあるんだろうか。

尻切れトンボ感はありますが、今回はここまでです。読んでくださった方、ありがとうございました。

適度に自分を律して、適度に自分を甘やかす、難しいけど、上手に自分を操りながら、生きていきたいと思います。

皆様もどうぞ、ご自愛ください。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?