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【日記・エッセイ】Y2K・平成レトロとTohji・浜崎あゆみ


はじめに:Y2K、平成レトロとは

こんにちは!
みなさん、「Y2K」(ワイ・ツー・ケー)という概念をご存じですか!?
これは「Year 2000」(=2000年代)を表すもので、どうやら「近年再注目されつつある2000年代初頭のファッションやカルチャー、およびそのリバイバル現象のこと」を指す言葉として用いられているようです。
「2K」の「K」はおそらく「Kilo(キロ)」の略でしょう。「Kilo(キロ)」は10の3乗を意味するので、「2K」で「2000」を指すわけですね。 

また、それと関連した概念として「平成レトロ」という言葉もあります。(「平成ポップ」や「平成サイバー」などの言葉も支持されつつあるようです)。
どれも平成特有の空気感を懐かしんだり再現したりする場合に持ち出される概念のようです。(間違ってたら教えてください!)

みなさんは、00年代の流行や空気感を懐かしんだり再現したりする潮流に対してどういった感情を抱きますか?
懐かしい、エモい、逆に新鮮」などの感情を抱く人もいれば、「何が平成レトロだ」という視線を送る人もいるでしょう。

私は90年代後半に生まれたので、00年代と言えば2歳~12歳くらいでした。
それゆえ、00年代の記憶はぼんやりとしかありません。
なので、00年代の流行は私にとって「少し上の世代の話」であると同時に、一応かすかに記憶に残っている「自分にとって少しリアリティある空気感」でもあるのです。

ただ、私にとって「Y2K」は正直なところ「よくわからない」というのが一番正直な感想ではあります。というのも、やはり「Y2K」の主戦場はファッションの領域らしく、私はファッションに聡(さと)くないからです。
しかし、よく知らないからこそ、やはり一番最初に出てくるのは「疑いの視線」です。「なにがY2Kだ」と心のどこかで思っておりました。

ところが、先日やっと私も00年代初頭の空気感に憧れる気持ちを自分のリアルな感情として体験することができました。それが嬉しかったのでここで報告したいのです。
前置きが長くなりましたがここからが本題です。

Tohjiと浜崎あゆみ

Tohjiは浜崎あゆみをリスペクトしている

まず前提として、私はTohji(トージ)というアーティストが好きなんです。
彼の音楽が大好きですし、彼の思考やビジョンも結構熱心に理解しようと努めています。

複数のインタビュー記事を見る限りは、Tohjiは浜崎あゆみのことをかなりリスペクトしています。
ここで少し記事から引用させてもらいます。

Tohji - 俺は彼女の性別や音楽のジャンルについて考えたことはなくて、単純に彼女の全体の雰囲気が好きなんです。高音がすごくいいし、振り切ってる。
浜崎あゆみの2000年代の音楽は、本当に良い。彼女はその時代の象徴です。彼女は俺にとって、古き良きむかしの日本の思い出の象徴でもあります
大きなウォーターパークに行くと、壊れたスピーカーからいつも彼女の音楽が流れてて。あとテーマパークに行って、女の子と一緒にジェットコースターに乗った時とか。ゲーセンに行ってプリクラを撮りに行ったときも彼女の音楽が流れてた。友達の家に行ったら、彼女のお母さんが聴いてた。
彼女のキラキラした、ゲスで激しい雰囲気が、そういう場所に合っているんです。もちろん彼女だけがインスピレーションってわけではないけど、俺の良い思い出をつないでくれてます。
〔…〕要は、壊れたスピーカーで流れる浜崎あゆみの音楽が好きだったんです。

chorareii「Tohji | 新しいシーンへの扉

こちらは英語の記事なので、意訳を交えて引用させてもらいます。

『T-mix』で、Tohjiはこの郊外の喧騒を、90年代のユーロトランスの爆発と、ショッピングモールの行き帰りにスピードを上げたオープンカーの窓から最大音量で鳴り響くJ-popへと変換している。
Tohjiは語った。「オレは、オレら自身のカルチャーを作っていく必要があると思ったから」。
これはゲームセンターで聴かれる種類の音楽へのオマージュ(敬意)でもあるし、またJ-popレーベルAVEXとポップアイドル浜崎あゆみを通じた00年代初頭のレイブ・カルチャーへの賛同でもある。彼女のユーロダンス『ayu-mi-x』は日本の田舎の反抗的な若者たちの世代を触発した。
「高速道路バーって下ってるでっかい音響設備乗っけた車が浜崎あゆみのグッズつけてたりしてて。それってでっかい文化だなみたいな」

DAZED - 「Tokyo rapper Tohji: ‘I don’t pretend to be mysterious – it’s just me’

このように、Tohjiは2000年代を象徴する存在として浜崎あゆみをリスペクトしていることがわかります。
2000年代において、ゲームセンター、遊園地、プール、そして高速道路を走るオープンカーから爆音で、どこでも浜崎あゆみの音楽が聴かれたことを回顧しています。
また、彼が昨年リリースしたアルバム『t-mix』は、浜崎あゆみのリミックスアルバムシリーズ『ayu-mi-x』をいくつかの点でオマージュしたものなのだろうと伺えます。
ロゴデザインも少し似ていますよね。

Tohji『t-mix』
浜崎あゆみ『ayu-mi-x Ⅱ』

また、インタビュー動画にて「〔『t-mix』は〕シリーズとして今後も展開されていく予定とのこと」と説明されています(流派-R SINCE 2001「Tohji "自分達なりの格好良いをREP" #264」)。浜崎あゆみのリミックスアルバム『ayu-mi-x』がシリーズ展開されたものだったということを踏まえると、そのコンセプトに近いものを感じますよね。

00年代の浜崎あゆみ:元00年代ギャル、Aさんのエピソード

私はTohjiが大好きなので、Tohjiがリスペクトしているという浜崎あゆみについても知りたいと思いました。
そこで、職場にいる元00年代ギャルの女性(Aさん)に話を聞いてみることにしました。
Aさんは現在30代半ばの女性ですので、00年代はおよそ12歳~22歳だったことになります。ちょうどteenageから20代前半というまさに「若者」だった時代を00年代に過ごしているのです。
そんなAさんは今では穏やかな落ち着きある女性の方ですが、本人から聞いたところによると若い頃はそれなりに典型的なギャルで、「遊びに行くなら日サロかナンパ待ち」「髪の毛はスパイラルパーマ」「そうそう、パラパラ踊ってた(笑)」みたいな話がいくつも出てくるのでした。
そしてもしかするとと思って聞いてみると、大当たりでした。やはり00年代当時の少しヤンチャだった頃のAさんは、浜崎あゆみを流しながら免許取り立ての車で友人たちと湘南の海を走らせていたそうなのです

私は残業中、上司のいなくなった会社でYouTubeをつけて、「浜崎あゆみ」で検索して出てきたMV
を手当たり次第再生しました。Aさんは「これも知ってる」「これも知ってる」「懐かしい」とコメントしてくれました。「M」という楽曲については「この世代で知らない人はいない」と語っていました。

そして、私はついに出会ったのです、「BLUE BIRD」という楽曲に。

この曲は小さい頃耳にした記憶はありましたが、特に強く印象に残っているわけではありませんでした。
音楽面については、平成J-popらしい(今自分が聴いているようなヒップホップと比べれば)スローテンポで聞き取りやすい親切な音運び、そしてやかましいほどではないけれど確かな音圧を感じるサビの盛り上がりが見られ、今聴いても(ギリギリ)退屈に感じないちょうどよいレベルで作られていると感じました。
浜崎あゆみ自身が作詞した歌詞については、雨雲が晴れて空と海が見える様子が描かれ、自分を見守り支えてくれる二人称視点のセリフがサビの中心を構成しており、その誰かの言葉を胸いっぱいに受け止めながら共にこの世界を生きていく、といった心象が感じ取れました。
MVは、浜崎あゆみが綺麗な砂浜で歌い、仲間たちとクルーズやマリンスポーツ、BBQを楽しみ踊るといった内容です。私がまっさきに感じたのは「Tohjiこの世界観絶対リスペクトしてるやん!」というものです。私は「BLUE BIRD」のMVを見て、Tohjiの「Oreo」や「Super Ocean Man」のMVを思い出さざるを得ませんでした。(単純にTohjiが海で遊んでるMVだから連想しただけにすぎないかもしれませんが…)。

とりあえず、「BLUE BIRD」はめっちゃいい曲ですね。すっかり気に入ってしまって、今は「一軍」とでも呼ぶべき今一番聴きたい曲だけを厳選したプレイリストにTohjiと一緒に入れて毎日聴いています。

Aさんは、私からの「浜崎あゆみの音楽に関する思い出や印象深い出来事などはありますか?」というインタビューのような質問に対して、「あゆって恋愛系の曲もよく歌うから、恋しちゃったときとか特に聴いてたかな」と答えてくれました。この回答があまりによくてですね…。
これはきっと、恋しちゃったから、恋心を歌っている楽曲を聴いて癒されたり気分を盛り上げたりするということですよね。そんな素敵な音楽との付き合い方がありますか。
自分で言うのも変ですが私は恋に対して臆病なので、もし恋しそうになっちゃってもむしろ気を紛らわすためにいつもの音楽を聴いて逃げるようにやり過ごすだけでしょう。しかし、若かりし頃のAさんは恋したときに恋の曲を聴いて過ごしたのです。そんなことしたら気分が盛り上がってしまうに違いないのに。その恋心に真正面から向き合っていくギャルのハードなスタンスに痺れました。

Aさんは私が期待していた以上に浜崎あゆみにまつわる鮮烈なイメージを与えてくれました。もっと若くて幼かったころのAさんは、免許取り立ての頃友だちとドライブするのが楽しすぎて、浜崎あゆみをかけながら湘南の海岸沿いを走らせていたそうです。
Aさんによれば、浜崎あゆみは圧倒的で、00年代前半どころか後半でも存在感があったそうです。

私は憧れました。浜崎あゆみを大音量で流しながら友だちとドライブする若い生活に。
そして、自分が部分的にはそのカルチャーを引き継いでいることにも思い当たりました。私はTohjiを流して楽しく歌いながら知人たちとドライブしたことがあるのです。あれは今年一番楽しかった思い出のひとつですし、ずっと輝かしい思い出であり続けるような気もしています。

私自身は本来、「BLUE BIRD」のMVに出てくるようなヤンチャそうなにーちゃんねーちゃんや、当時のAさんのようなギャル(そしておそらく居たであろう仲間のギャル男)たちとは文化的にマッチしません。
また、現在のTohjiのライブに来るファンたちのうちマジョリティを占めるであろう、ヘソとか出してそうな若い男女たちとも少し文化的にすれ違っています。

しかし、私はTohjiの音楽を心から愛していますし、Tohjiを聴くことは私の日常生活における幸福感を構成する要素のうち大部分を占めています。
そして、自分が小学生くらいの頃「なんかヤンチャそうだな」と思って多少敬遠さえしていた「浜崎あゆみ」を取り巻くカルチャーに対しての偏見さえも、大好きなTohjiが彼女をリスペクトしているんだという事実を経由することによって、かなり緩和されつつあります。

さいごに:平成レトロについて

私にとっての平成レトロは、当時無視していた平成文化の一部分を改めて享受し直すことであり、自分が生まれ育った幼い時代と今現在自分が生きている若い大人時代の両方をひっくるめて愛する行為でもあります。
「あの頃がよかった」でもなく、「今が一番いい」でもなく、「あの頃があって現在まで生きてきている、自分たちのこの時代全体を愛する」という強い肯定の態度なのです。
そのためのパーツとして、浜崎あゆみとTohjiが思わぬ仕方で効果的な働きをしてくれました。

私は、Aさんが生きたような生活を無理して再現するということもしませんし、浜崎あゆみやTohjiがMVで表現しているファッションやライフスタイルをそのまま取り入れようとも思いません。
ただ、確かに彼ら彼女らに対する憧れを抱きつつも、自分にとって自然な範囲で少しずつ一歩一歩背伸びしていって、好きな音楽を流しながら自分たちなりの生活を送っていきます。

おわり

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