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人生の良読選

良読選と言っても、ここで本の紹介はしていない。
今まで生きてきた中で、よく思い出す・人生感や決断に影響した文章をまとめている。

水に流す話

"Non, Je ne regrette rien" (1960) を初めて聞いたのは映画「インセプション」  (2010) で使われてたから。その時はとても素敵な曲という印象で、高校1年生のときに、歌えるようになりたくて歌詞を暗記したり、訳したりしてた。この高校一年生に私は生まれてはじめて日本の学校に入ってみて、めちゃくちゃカルチャーギャップにぶち当たっていた。私にとっていくら頑張っても結果の出ない一年で、自分のいる場所と境遇に絶望してた。自分で納得して来た道のつもりだったのに、誰のせいにして、どうやって自分を助ければいいのかがわからなかった。

Non ! Je ne regrette rien
Ni le bien, qu'on m'a fait
Ni le mal, tout ça m'est bien égal!

いいえ、私はなにも後悔していない
私に起きた良いことも
悪いことも、同等に良い

人のせいにしない、ということをすごく意識させられた歌。10年後、今と同じ感情を持っていないのだろうなと思うと、全部許せて、良くしようって考え方に頭を切り替えることができた。結果的に高校は1年で辞めて、元のインターナショナルスクールに編入できたし、このときの経験を落ち着いて振り返ることができる。

いかにも捉えられる話

And the days are not full enough
And the nights are not full enough
And life slips by like a field mouse
                   Not shaking the grass.
-Ezra Pound

そして日は満ちず
そして夜は満ちず
そして人生は、野ネズミのように
草むらを揺らさず、すり抜ける

Ezra Pound の詩。Ezra Pound は結構長編の詩を書くことで有名らしいけど、私は晩年の短歌に影響された短いものしかちゃんと読んだことがない。

この詩は余命宣告された人の tumblr のアートブログで紹介されてて、そのときは儚い命の詩に読み取れた。彼がなくなったあとも、友達に依頼してブログを削除したようで、本当にフォロワーの前からすり抜けてしまった。

就活していたときは、故意に草むらを揺らすことを意識しないと、人生はあっという間にすり抜けてしまうというふうに読み取れた。すごく自分の焦りが感じられる...笑

最近またこの詩に戻ってくる機会があったのだけど、今回は人生の不可抗力に無理に抗わないと言っているような気がしてる。人生のタイミングで必要な言葉を投げかけてくれる、不思議な言葉。答えはいつも自分の中にすでにあるね。

人生の収束を前にする話

今敏、私がアニメを見るきっかけになった監督、の遺書。彼が死ぬ前に何を考えていたか事細かく記載されている。こんなに情報量の多い遺書はあるだろうか。生きてる上で、意識しなければいけないこと。これは全文素晴らしいのであえて引用しない。

自己に目を背けたい話

「自己が連続している」という、多くの人が当然考えているであろう常識を疑わざるを得なくなってしまいました。

とある精神科医の開設している掲示板にきた質問。ADHDの質問者はコンサータを服用することで、生活の水準を上げている。でも、コンサータを飲んでいるときに、薬を服用していない自分を振り返ることができる分、その自分に絶望することになってしまう。質問者の苦悩の言語化力にとても圧倒された。

私は、いっそ、コンサータ を飲んでいる時が、真の私であり、他は全て、異常として認識することで、それを解決しようとしました。具体的には、コンサータ が切れかかったら、直ちに睡眠薬を飲み、コンサータ が服用されていない状態をできるだけ回避することで、コンサータを飲む前の私と、飲んだ後の私という自己の連続性の断絶を防いでいるのです。

この文章を読んだときに、質問者の絶望は到底わかりっこないんだと強く感じた。でも、こういった精神障害を持っている人は、私達とそう遠くない場所にいるのではという気持ちも生まれた。

私達も、日々昔の自分を振り返っては嫌気が差したり、黒歴史(笑)とかいう言葉で似たような目の背け方をしているような気がする。ちょっとレベルを下げた話だけどね。でも、私達も自己の連続性に絶望するとき、あるんだよね。

これは、彼らが特別なケアが必要ないとか、私達と一緒と言っているのではなく、私達(いわゆる健常者の)延長線上に彼らはいるということを確信した文章だった。

おわりに

多分もっといろんな言葉とか人の交流によって私の人格は形成されているのだろうけど、まったく縁もない人の言葉を中心にまとめてみました。

数年後はどんなまとめが書けるか、いまから楽しみ。


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