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【考察】オールジェンダートイレのゆくえ〜LGBT法案との関連は〜



批判を集める東急歌舞伎町タワーのトイレ

今年4月に新宿・歌舞伎町にオープンした東急歌舞伎町タワー。地上48階・地下5階、高さ約225m、国内最大級のホテル × エンタメの超高層複合施設タワーとして、多くの話題を集める一方で、2階に設置された"ジェンダーレストイレ"について、多くの批判が集まりました。


当初の歌舞伎町タワー2階トイレの配置図


この"ジェンダーレストイレ"
一体、何が問題だったのでしょうか。

上記の構図を見ていただくとわかるように、女性トイレ、男性トイレ、男女共用トイレが同じスペースに設定されていることについて懸念の声が集まりました。

批判として上がった意見の一部はこのようなものです。

・利用目的とは思えない男性がたむろして怖い
・心は女性の身体男性が自由にトイレに侵入してくるのではないか
・男性と同じトイレを使うのは抵抗がある
・性犯罪の温床になる可能性がある

などの意見が集まり、また、SNSやインターネット上でトランスジェンダー女性に対する不安や恐怖などを煽るような偏見や誤解なども相まって、1ヶ月後には施設側が、男女共用部分の女性トイレ利用エリアを、暫定的にパーティションで区画する対応を迫られるという事態にまで発展しました。


ジェンダーレストイレという表現

施設側の説明では、SDGsの理念を目指したトイレということで、当初"ジェンダーレストイレ"という表現が使われており、性別に関係なく利用できるトイレと説明がありました。また、個室トイレの配置についての説明では、このように書いてあります。

・ジェンダーレストイレ
・女性用トイレ
・男性用トイレ
・多目的トイレ


そもそも、この「ジェンダーレス」という言葉。最近よく見受けられる表現ですが、"ジェンダー"が"レス"、つまり直訳すると「"性別"が"ない"」という意味になってしまい、ジェンダーレストイレというのは、適切な表現とは言えません。

本来、性別に関わりなく使えるトイレ、ということであれば、「オールジェンダートイレ」、また、男女どちらも使えるという文脈であれば、「男女共用トイレ」と説明した方が、ジェンダーという言葉に馴染みのない人にとっては分かりやすい表現だったのでは…とも感じたりします。

また、こうした言葉がひとり歩きをし、性別に関係なく利用できるトイレの設置について、男女別の施設を壊そうとしている、男女の境をなくそうとしている、かのような誤った認識をされている方も少なくないかもしれません。


工事後のトイレはどのように変わったのか。


こうした、さまざまな議論があった東急歌舞伎町タワーの2階トイレですが、先月24日から8月3日(予定)の期間、トイレの間仕切り工事を実施するという流れに至りました。


今回の間仕切り工事では、どのように変わったのでしょうか。工事を行ったポイントを確認してきました。

まず、問題として指摘がされていた男女共用トイレの個室をなくし、男性用・女性用とトイレの個室を完全に切り分け、男性側と女性側に、誰でもトイレをそれぞれ1箇所ずつ設置する形へと変わりました。男性用の小便器の部分はそのままとなっています。

当初、看板にはジェンダーレストイレと記載がありましたが、「トイレ(Toilet)」の記載に変わっています。合わせて、ピクトグラムのデザインも当初のものと比べて変更されていました。

工事後の歌舞伎町タワー2階トイレの配置図


トランスジェンダーのトイレ利用におけるニーズとは?

TOTO株式会社が行った性的マイノリティのトイレ利用に関する調査において、外出先トイレでトランスジェンダーの感じるストレスとして、「トイレに入る際の周囲の視線」「トイレに入る際の周囲からの注意や指摘」にストレスを感じるという回答が多いという結果があります。


今回の改修を受けて、多くの方にとっては多少利用しやすいトイレへと変わったように見えます。多目的トイレ(誰でもトイレ)が当初の1箇所から2箇所に増えたことにより、男女別の個室トイレよりも、少し広めの多目的トイレ(誰でもトイレ)の方が使いやすいと感じる方もいるかもしれません。

しかし、個人的には、一部のトランスジェンダーを含めたさまざまな属性を持つ利用者にとって、混雑時におけるトイレ利用について、トイレ待ちを並ぶ人の導線状況を踏まえると、トイレに入る際の視線がやや気になるのでは…という懸念があります。また、以前としてトイレ前に警備員が立っており、誘導を行う対応や、防犯カメラなど、いろいろと違和感を感じます。

工事後の歌舞伎町タワー2階トイレの配置図


この歌舞伎町タワーの2階には飲食の店舗が多く並んでおり、今回、男女共用トイレをなくしたことにより、時間帯によっては、女性用トイレのさらなる混雑が予想されそうです。

もちろん、個室トイレが空いていない場合において、多目的トイレ(誰でもトイレ)を利用する人もいるかもしれませんが、多目的トイレ(誰でもトイレ)を必要としている方に遠慮して、進んで多目的トイレを利用することに躊躇する人も少なくないと感じます。

今後は、トイレの混雑状況や、トイレの空き状況がわかる、また、混雑時の別のフロアへのトイレ誘導など、さらなる改善・対応が必要となるかもしれません。

工事後の歌舞伎町タワー2階トイレの配置図


対応や判断は正しかったのか

総じて、今回の東急歌舞伎町タワーのトイレ改修工事の判断は、正しかったのでしょうか。それとも、間違いだったのでしょうか。トイレにあり方に正解はないからこそ、なかなか回答を導き出すことは難しいかもしれません。また、このようなトイレの設計(構図)が良い・悪いということについても、一概に判断はできません。トイレ設計に関しては、周囲の環境や立地状況などのさまざまな要因も少なからず影響していると考えられます。

男女共用トイレ、オールジェンダートイレの利用に関しても、すべての当事者が、進んで利用を希望する方と、利用しづらい方、使いたくない方、意見やニーズはさまざまです。もちろん、シスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別と自認する性別が一致)の方のトイレ利用についても、意見や考え方はさまざまであることは言うまでもありません。


ひとまず、収束したかのように見える今回の一連の流れですが、多様な利用者を想定した「オールジェンダートイレ」への取り組みについては、前向きに捉える一方で、施設側が萎縮してまったように見える一つの事例を作ってしまったことについて、少なからず残念な印象を抱えています。


性別に関係なく利用できるトイレとは?

さて、そもそも「性別に関わりなく使えるトイレ」。このようなトイレは、果たしてどのような方の利用やニーズが考えられるでしょうか。

参考として、お年寄りや障害のある方をはじめ、全ての人々がスムーズに移動できるような(バリアフリー)交通機関の実現の推進などを行う、公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団(エコモ財団)では、「男女共用お手洗 Allgender toilet について」、このように説明があります。

男女共用お手洗を利用する人々

発達障害者
トイレのマークが場所によって異なると、どちらが男性か女性か分からず混乱する場合があるので、判断しなくて良いトイレがあると助かります。また、発達障害児者の中には、性別違和を持つ人の比率が高いという調査が複数あります。学校で男女別のトイレに行かせられ、不登校が生じた例があります。このようなストレスの軽減に役立つ可能性があります。さらに、発達障害児者の中には、トイレの使用時に介護を必要とする場合がありますが、その場合の介護者(保護者、支援者)が異性の場合に、気兼ねなく一緒にトイレに入れるメリットがあるでしょう。

知的障害者
介助者がトイレに入る時、ご本人がいなくなってしまう心配があり、なかなかトイレを利用することができません。介助をするというだけではないため、異性のご本人から見られないように、便器の周りにカーテン等をつけていただきました。中にカーテンが付くことにより、一番助かったのは支援者かもしれません。目を離せない本人は、外で一人で待てないので(どこかに行ってしまったり、何かトラブルを起こす可能性がある)カーテンの向こうで待ってもらえば、支援者も外出中にトイレを使用することが可能になります。支援、介助する人を大切にできることが、結果的に障害者の社会生活を広げることにつながります。いろいろな家族や支援の形がある中で、母と息子、父と娘、老夫婦、きょうだい、異性の友人、異性の支援者と外出するというごく普通の外出も可能になります。(これまでは同性介助が前提でしたが、障害者だからと言って、必ずしも介助する側とされる側という関係ばかりではありません。)
比較的長時間の外出、遠出も可能になります。(家では使用しなくても済む人が、トイレの心配から、外出時には紙パンツを着用している人はたくさんいます。)

トランスジェンダー
最近メディアなどで「男女共用トイレ」を一括りに「LGBT用トイレ」とする表現が見受けられますが、LGBの人の大多数は、生涯同じ性別で暮らす「シスジェンダー」であり、男女別トイレを利用することに特に不自由を感じないので、この表現は不正確です。男女別トイレの利用に不自由を感じることが多いのは、LGBTの中でもTにあたる人、つまり出生時に付けられた性別と自認する性別が異なる「トランスジェンダー」の人です。学校で男女別トイレに入れず、健康を害したとの報告もあります。またトランスジェンダーの中には、性別分けしないトイレのほうが使いやすいという人がいる一方、自認する性別に沿っていれば、男女分けトイレでかまわない、という人もいるため、すべてのトランスジェンダーに対して一律に男女共用トイレの利用を勧める、というのは問題です。いずれの場合も、性自認に沿ったトイレが選択的に利用できることが大切です。トランスジェンダーは、それぞれある年齢になって、身体の性別とは別の性別で暮らそうと決意すると、外見も含めて性別移行の必要が生じます。性別移行中は、男女どちらのトイレに入っても「~らしくない」と追い出されるリスクがありますが、男女共用トイレであればそのリスクもなく、性を判別しづらい服装や装いでも気にせず、安心してトイレを利用できます。
男女共用なので、両性的、中性的な外見の人 、Ⅹジェンダー、NB(ノンバイナリ ー/多元的)など、二元的でない性自認の人にとっても利用しやすいし、利用者x異性介助者のいかなる性別の組合わせも排除しません。

男女共用お手洗 Allgender toilet について
(エコモ財団)

上記のことを踏まえると、男女共用トイレの利用を必要とする人は、発達障害者、知的障害者、トランスジェンダーなど、実に多様な方、属性をもつ方のニーズがあるということがわかります。また、これらの共用トイレを、どの程度、どれくらいの数を整備すればよいのか、ということも課題になっています。


男女共用トイレの設置は必須なのか


職場のトイレ、いわゆる「オフィストイレ」に関しては、労働安全衛生規則、事務所衛生基準規則において、男女別のトイレを設置することが義務付けられています。また労働者の人数によって、いくつトイレの個室を設置するべきか明示されています。

また、多様な労働者の働きやすい環境整備への関心の高まり等の社会状況の変化を踏まえ、令和3年に規則が改正され、新たに「独立個室型の便所」が法令に位置付けられました。

この「独立個室型の便所」というのは、男性用と女性用に区別しない単独でプライバシーが確保されている便所のことを指しており、また、車いすの方や、オストメイト対応の水洗器具を備えたバリアフリートイレについても、一定の条件を満たしていれば、この「独立個室型の便所」に該当すると書かれてあります。

事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場でこれによることができないやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときは、この限りでない。

1. 男性用と女性用に区別すること。
2. 男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること。
3. 男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること。
4. 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること。

労働安全衛生規則 第628条

便所の設備【事務所則第17条、安衛則第628条】

新たに「独立個室型の便所」※が法令で位置付けられました。便所を男性用と女性用に区別して設置するという原則は維持されますが、独立個室型の便所を付加する場合の取扱い、少人数の作業場における例外と留意事項が示されました。
なお、従来の設置基準を満たしている便所を設けている場合は変更の必要はありません。
※男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所。

事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について


しかし、建物や設備等の改修工事を行うことは容易ではなく、建物の構造上、どうしても難しい場合などもあり、事業者側としては、中々難しい対応を迫られているという声があります。規則の基準を満たすために、暫定的な処置を行うケースも少なくありません。


LGBT理解増進法との関連は

今年の6月、さまざまな過程を経て「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」通称、LGBT理解増進法が可決、成立しました。この法律の第十二条において、このような記載があります。

この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。

性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律
法律概要(内閣府)


この法案の成立過程において、心は女性と自称する身体男性の、女子トイレや公衆浴場などの女性スペースへの侵入を防げないといった、トランスジェンダー女性に対するバッシングやヘイトスピーチなどが過熱していったことは、先にも述べた通りです。

また法案の中に、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」とあるように、そうした声の高まりや背景を受けて、自民党有志議員でつくる「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(女性を守る議連)が、このLGBT法案成立を受けて6月下旬に発足したことも押さえておきたいポイントです。

この法案はあくまで"理念法"であり、特定の個人の行動を制限したり、既存のルールの変更や、現行の法律が変わるというものではありません。しかし、上記で紹介した法案の文言に、この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする、と記載があり、今後策定される基本計画や、指針について、どのようなものとなるのか注視が必要です。


経産省トイレ利用制限に関する裁判


そんな中、トランスジェンダーの経済産業省の職員が、女性トイレの使用を不当に制限されたのは違法だと国を訴えた訴訟において、先月11日最高裁は、この制限に問題はないとした判定を違法とする判決を言い渡しました。


こうした判決を踏まえて、トランスジェンダーのトイレ利用に関して、今後どのような対応が望まれるのかが、争点となりつつあります。トランスジェンダーの中には、性別適合手術を行い戸籍変更をしている当事者もいれば、何らかの事情で手術ができない、また、手術をしていても戸籍変更にまでは至っていない当事者など多様です。加えて、"埋没"と表現されるように、出生時の性別とは違う性別で暮らしている人。言い換えれば、性別移行や、戸籍変更したことを周囲に明かさずに、ひっそりと暮らしている当事者もいます。

性自認(ジェンダーアイデンティティ)についての誤った認識や、トランスジェンダーの医療的な性別移行に関しても偏見や誤解が広がっているなか、それぞれの具体的事情を踏まえながら、社会生活の様々な場面において、自認する性にふさわしい扱いを、果たして当事者はどこまで求めることができるのでしょうか。


トイレ利用における指針をつくるべきか

オフィストイレや、公共トイレ(パブリックトイレ)については、トイレを設置する際の一定の基準などが設けられていますが、トイレを利用する運用については、現在、明確なルールや基準があるわけではありません。

先月25日に開催された、超党派で構成されるLGBT議員連盟の会合では、最高裁のトイレ判決を踏まえて、トイレ利用を巡ってさまざまな議論があったと報道されています。その中には、女性専用のトイレや公衆浴場を確保する法整備の必要性を訴える声もあったということです。


おそらく、多くの方が、出生時に割り当てられた性別に沿ったトイレを問題なく利用できていると思います。一方で、男女別のトイレで、どちらのトイレに入ったらよいのか分からない。自認する性別と異なったトイレを利用することに苦痛を感じる人は少数だと思います。もちろん、その時の服装や容姿などの様々な理由から、出生時に割り当てられた性別に沿ったトイレの利用が難しいと感じている人も少なからずいるかもしれません。

さて、女性専用のスペースを確保するという文脈において、「女性」という性別をどのようの定義するのか。例えば、公衆浴場の利用に関しては、LGBT理解増進法案が成立したあと、厚生労働省が「公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて」という通知を出しており、この男女というのは、身体的特徴にもって判断するということが書かれています。

これらの要領でいう男女とは、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、身体的な特徴をもって判断するものであり、浴場業及び旅館業の営業者は、例えば、体は男性、心は女性の者が女湯に入らないようにする必要があるものと考えていますので、都道府県、保健所設置市及び特別区におかれては、御了知の上、貴管内の浴場業及び旅館業の営業者に対する周知や指導等について御配慮をお願いいたします。

公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて

トイレと公衆浴場の利用は、きちんと議論を分けて考えるべきですが、性犯罪を目的として女性専用のスペースに立入る人と、そうでない人を、どのように判断するのか。そのような判断をすることに意味があるのか。例えば、トイレを利用する方に、「あなたは女性ですか?」「あなたは男性ですか?」「あなたはトランスジェンダーですか?」「あなたは障がい者ですか?」と聞くことをしないように、そうした相手の性のあり方、性別に関する情報、身体的特徴を聞くことは、プライバシーの侵害であり、ハラスメントに値します。

また、トイレの運用については、ある程度、顔見知りの人の利用を想定したオフィストイレと、不特定多数の人が利用する公共トイレ(パブリックトイレ)においても、状況はやや異なります。こうしたトイレ利用に関する運用については、多角的に考察する必要がありそうです。

新たにトイレ利用に関する基準や指針を設けることで、これまで問題なくトイレ利用できていた人が使えなくなってしまっては、本末転倒であり、ルールを作れば、そこから排除されてしまう人がいる可能性を指摘しておきます。

そして、こうした議論の中で、その矛先がトランスジェンダーに向いていることについて、心を痛めている当事者がいることを知るべきです。トイレに行きたい時にトイレを利用できるというのは、人間の尊厳にも関わる人権のひとつであり、安心してトイレを利用したいと考えているのは、誰もが同じ気持ちのはずです。


オールジェンダートイレのゆくえ

北欧やアメリカなど先進諸国では、オールジェンダートイレが一般的になっており、日本においてもこうした東急歌舞伎町タワーのようなトイレは決して珍しいことではありません。すでに一部の商業施設、企業や大学などにおいて、オールジェンダートイレの導入は少しずつ進んでいます。

また、トランスジェンダーの視点だけに限らず、オールジェンダートイレの整備、誰もが使いやすいトイレのあり方については、ハード面だけでなく、ソフト面の両方からのアプローチが必要です。且つ、オールジェンダートイレや男女共用トイレを必要とする、さまざまな属性を持つ多様な人への理解が不可欠です。

ハードの改修は一足飛びに解決するのは、なかなか難しい課題ではありますが、こうした文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの個人の違いにかかわらず、出来るだけ多くの人々が利用できることを目指す「ユニバーサルデザイン」の時流を踏まえながら、トイレ環境を整備していくことが求められています。

ソフトの部分においても、トランスジェンダーの抱える困難や生きづらさなどは、まだまだ可視化されておらず、当事者の実態を踏まえた正しい理解が広がっていないと感じることは多くあります。

トイレは社会の変化に合わせて、これまでも形態が変わってきました。和式のトイレが使いやすいと感じる人もいれば、使いづらいと感じる人もいるように、トイレのあり方に正解はなく、長いスパンで見たときに、評価も変わることがあるかもしれません。こうした視点を踏まえながら、誰もが使いやすいトイレのあり方について、多くの人が関心を持ってもらいたいです。


激論!トイレ問題

建築界に携わる方々に広く情報を届ける総合情報誌「日経アーキテクチュア」7月27日号では、まるまる一冊、激論!トイレ問題と題して、東急歌舞伎町タワーのトイレをはじめとして、オールジェンダートイレに対する課題、トランスジェンダー当事者による座談会、専門家による意見・考察、経産省トイレ判決など盛り沢山の内容となっています。

今回、トランスジェンダー座談会のパートにおいて、トイレ利用に関してさまざまな意見を語りました。ぜひ関心のある方はチェックしていただけたら嬉しいです。

LGBTに関する活動を中心に行なっています。ぜひ一人でも多くの方に関心を持っていただけたら幸いです。サポートはすべて活動資金に使わせていただきます。