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岩手県盛岡市を拠点とするフリーライターです。 岩手の魅力を伝えるべく、さまざまな角度から発信しています。 ◆HP:https://tokkari-shouten.themedia.jp/

最近の記事

両親の思いを受け継ぎ、地域とともに歩む菓子店

お話しを伺った方 北舘菓子舗 川原恵美さん・小保内和恵さん(2021年取材) 作り手の温かさが伝わる菓子 岩手県内陸北部に位置する一戸町に、古くから地元で愛されている菓子店がある。馬淵川に寄り添うようにして佇む北舘菓子舗だ。 昭和38(1963)年に創業し、現在は両親から店を受け継いだ小保内和恵さんが代表を務め、姉の川原恵美さんとともに手作りの菓子を提供。 父が他界した後も「菓子屋は地元の人に認められなければ駄目だ」という教えを守り続けている。 そんな北舘菓子舗

    • 漆の奥深さを知り、無限の可能性を拓く

      お話しを伺った方 ゴキタ漆工房 五木田英晶さん(2023年取材) 剣道の胴に漆を施す職人 学生の頃、「将来はものづくりの仕事がしたい」と考えていた五木田さん。 初めて漆の世界に足を踏み入れたのは、高校を卒業してすぐの頃だった。 八幡平市にある安代漆工技術センターに入り、塗師に必要な知識と技術を習得。 現在は自宅に工房を構え、主に剣道の防具である「胴」に、漆塗りを施す職人として活躍している。 漆器とは”別物”の胴塗り 漆塗りの胴を買い求めるのは、有段者をはじめ

      • 年間300件以上の試作品を作る「好奇心」という原動力

        お話しを伺った方 株式会社浅沼醤油店 代表取締役 浅沼宏一さん(2022年取材) 歴史とともに家業を背負う覚悟 浅沼宏一さんは、現在、浅沼醤油店の4代目を務めている。浅沼家は醤油屋を始める前に庄屋として商いをしていて、その頃から数えると実に10代目に当たる。 盛岡市にある本社兼直営店の建物は、築200年以上。室内には不来方城が増改築した際に払い下げられた梁などが使われており、当時の槍掛けもそのまま残されている。 そんな歴史ある家に生まれた宏一さんだったが、最初に就職し

        • 螺鈿細工に魅せられ一生の仕事に出会う

          お話しを伺った方 塗師 伊藤博子さん(2023年取材) まるで宇宙のように輝く酒器 一関市出身の伊藤さんは、現在、塗師として活動している。器やスプーンなどを製作する一方で、自らの感性を発揮した螺鈿細工も手掛ける。 彼女の作品を知る人からは「まるで宇宙みたい」という声が多く上がるそうで、実物を見ると「確かに」と納得してしまう。 漆黒の酒器の底に輝く、銀河のような貝の連なり。 伊藤さんは「螺鈿は水を入れるとより輝くので、酒器を作ろうと思いました」と言って微笑む。

        両親の思いを受け継ぎ、地域とともに歩む菓子店

          ツバキの花のように気高く強く生きる

          お話しを伺った方 株式会社バンザイ・ファクトリー 髙橋和良さん(2021年取材) 経営より技術を追求したい。 創業者として悩んだ過去 学生時代は情報技術について学び、社会人になってから大学院で博士号を取得した髙橋さん。 バンザイ・ファクトリーを設立する以前は医療画像ITシステムの開発会社を経営しており、そのシステムは全国の大手病院で採用され、海外にも研究開発センターを設立した。 目覚ましい成長をとげる企業の代表を務めながら、髙橋さんは徐々に自分の中に迷いを感じるよ

          ツバキの花のように気高く強く生きる

          自分が選んだ道で生きるために<後編>

          お話しを伺った方 二戸市地域おこし協力隊 金山昌央さん(2023年取材) ※今回の記事は前編からの続きです。 季節によって変化する漆の性質 2023年10月8日。風のない穏やかな日に、浄法寺町のウルシ林を訪れた。 この時期に採れる漆は粘度が高く、夏よりもゆっくりしたスピードで辺(傷)からにじみ出てくる。 金山さんは「少し伸びる感じがあるのが、質の良い漆なんだそうです」と言って、タカッポに漆を入れる瞬間の“伸び”を見せてくれた。 そんな彼に今年の成果を訪ねると、満

          自分が選んだ道で生きるために<後編>

          自分が選んだ道で生きるために<前編>

          お話しを伺った方 二戸市地域おこし協力隊 金山昌央さん(2023年取材) 初めての雪国で漆掻きの世界へ 愛知県出身の金山さんは、大学卒業後に青年海外協力隊としてアフリカのルワンダで活動した経験を持つ。現地ではコーヒーの栽培技術の提案などに携わった。 そんな彼が二戸市地域おこし協力隊に加わったのは、2021年6月のこと。 二戸市が募集していた、漆産業で自立を目指す「うるしびと」に応募したのだ。 「以前から漆器に魅力を感じていて、将来は漆に関わる仕事がしたいと思ってい

          自分が選んだ道で生きるために<前編>

          一つずつ心を込めて作る地域の光

          お話しを伺った方 こしぇる工房add 高橋けい子さん 小野公司さん(2023年取材) 暮らしに遊び心を取り入れる 有限会社クワンが運営する「こしぇる工房add」は、滝沢市と盛岡市を拠点にさまざまなオリジナル商品を手掛けている。 「生活(くらし)にアートを。」をテーマとし、ふきんや文具、雑貨など、日常生活に取り入れやすいアイテムが特徴。 スタッフのアイディアや顧客の要望を取り入れて商品を開発し、全て手作りで仕上げている。 取締役会長の高橋さんは、「一度にたくさん作る

          一つずつ心を込めて作る地域の光

          人情味あふれる老舗せんべい店

          お話しを伺った方 盛岡せんべい店 佐々木俊幸さん(2023年取材) オリジナルのプリントせんべい 昭和28年創業の盛岡せんべい店は、昔ながらの南部せんべいに加えてクッキータイプも販売する老舗の名店。 今回は大通店にお邪魔して、佐々木夫妻と長女の幸(ゆき)さんにお話を伺った。 同店ではスタンダードなゴマの南部せんべいと、クッキータイプのピーナッツやピスタチオのせんべい、そしてこの店ならではのプリントせんべいが特に人気を集めている。 10年以上前から販売しているプリン

          人情味あふれる老舗せんべい店

          この街で、この味を守り続ける

          お話しを伺った方 平船精肉店代表 竹林誠さん(2023年取材) 老若男女に愛される看板商品 平船精肉店の看板メニューといえば、なんと言ってもローストチキンだ。 年間を通して一番人気の商品で、回転ロースターの中で油を滴らせながら焼き上がるチキンには、思わず足を止めてしまうほどの魅力がある。 1965年に販売して以来の超ロングセラーで、砂糖を使わず醤油ベースで仕上げる秘伝のタレによって味を守り続けてきた。 2017年には創業者の平船繁さんから現在の代表者である竹林誠さ

          この街で、この味を守り続ける

          生まれ育った街で未来を創る

          お話しを伺った方 大船渡市商工港湾部 産業政策室 猪股大貴さん(2022年取材) 絶景と海鮮の街・大船渡市 猪股さんは今年、大船渡市の職員として働き始めて10年目を迎えた。大船渡市といえば、雄大かつ美しい風景と豊かな海産物に恵まれた街。 市内には国立公園の碁石海岸や、大船渡市と釜石市、住田町にまたがる三陸沿岸の最高峰「五葉山」があり、産直やスーパーにはホタテ、ワカメ、アワビなどの新鮮な魚介類が並ぶ。 この街で生まれ育ったという猪股さんは、高校卒業後、大学進学のため

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          与えられた場所で今できることを

          お話しを伺った方 岩手県保健福祉部医療政策室 感染症(コロナ対策)担当 佐々木琢磨さん(2022年取材) 感染症対策と、思い浮かぶ事業者の顔 佐々木さんが岩手県保健福祉部に配属されたのは、2021年4月のこと。それまでは産業経済交流課に在籍し、県産品をPRするべく県内外を駆け回っていた。 異動したのは、新型コロナウイルスのデルタ株が国内で初検出され、急速に感染が拡大した時期。佐々木さんは「最初の3ヶ月くらいは右も左もわからず、怒涛のように過ぎていきました」と振り返る。

          与えられた場所で今できることを

          岩手の味に挑む老舗菓子店

          お話しを伺った方 竹屋製菓 代表取締役 嵯峨壱朗さん(2022年取材) 売り切れ御免!話題の黒豆ゼリー 竹屋製菓が作る黒豆ゼリーは、岩手県産の黒豆を贅沢に使用した人気の逸品。北海道産のビート(てんさい)糖で豆の味を引き立たせ、控え目な甘さの中にもコクがあり爽やかな喉越しが印象的だ。 これまで県内外を問わずさまざまなコンクールで表彰されているほか、メディアにも取り上げられ、注文が殺到して売り切れ状態になったこともある。 「実は黒豆ゼリーは、限られた期間に作っているんで

          岩手の味に挑む老舗菓子店

          短角牛とともに生きるということ

          お話しを伺った方 柿木畜産 代表 柿木敏由貴さん(2022年取材) 伝統の「夏山冬里方式」 広大な牧草地の中を、牛が草を食みながら悠々と通り過ぎていく。取材する私たちを気にしている雰囲気もあるが、牛にとっては目の前の牧草の方が重要だ。 「春先に放牧地へ連れて来ると、スキップする勢いで駆けていく牛もいますよ」 そう教えてくれたのは、柿木畜産の柿木敏由貴さんだ。柿木さんは短角牛のみを専門に育てていて、毎年春になると標高700~800mの高原に母牛と子牛を連れて行く。 黒

          短角牛とともに生きるということ

          “雪の恩恵”とともに生きる

          お話しを伺った方 株式会社西和賀産業公社 常務取締役 藤原勝さん(2022年取材) すっぽりと雪に包まれる町 岩手県の最西端に位置する西和賀町は、県内随一の豪雪地帯として知られている。今年1月には雪で視界が覆われるホワイトアウトと呼ばれる現象が、県内各地で発生してニュースになった。しかし西和賀町では、それほど珍しいことではない。 「ここでは毎年、ホワイトアウトになる日が何度かあります」そう語るのは、西和賀産業公社の常務取締役を務めている藤原勝さんだ。 西和賀町出身の

          “雪の恩恵”とともに生きる

          その土地の光をつなぎ、伝え続ける

          お話しを伺った方 IGRいわて銀河鉄道株式会社 濱戸祥平さん(2021年取材) 畜産を学ぶため、京都から岩手へ 大阪生まれ、京都育ちの濱戸祥平さんは、現在、IGRいわて銀河鉄道株式会社の企画部地域連携特命課長を務めている。主にIGR沿線の地域振興に向けたさまざまな活動を行っているほか、月に2度ほど県北地域を中心にツアーを実施し、添乗員として同行も行っている。関西弁で軽快なトークを展開しながら、その土地にしかない魅力を伝え続けている。 「高校生の時に修学旅行で北海道へ

          その土地の光をつなぎ、伝え続ける