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対象年齢は0~100歳!おもちゃで育む“心の栄養”

IWATE PRIDEとは
岩手で活躍する”人”にスポットを当て、魅力を伝えるコンテンツです。さまざまな角度から、大切な”人の想い”を伝えていきます。


お話しを伺った方

花巻おもちゃ美術館 館長 玉山恵さん(2024年取材)


人々を魅了するおもちゃ美術館

2020年7月、岩手県で初となる「花巻おもちゃ美術館」が誕生した。
場所は、花巻市にあるマルカンビルの2階。ここは2016年に惜しまれながらも閉店したマルカン百貨店の建物で、現在は1階に物販店舗、2階に美術館、そして6階には昭和レトロな雰囲気で人気の「マルカンビル大食堂」が入居している。

昨年度の来館者数は7万人を突破し、県外から訪れる人も少なくない人気スポット。

館長を務めている玉山恵さんが、「小さなお子さん連れのご家族はもちろん、カップルやお友達同士でいらっしゃる方もたくさんいます」と、教えてくれた。

ときには一人で来館する大人もいるというが、実際に訪れてみるとその気持がよくわかる。この美術館は、木の温もりに包まれる癒しと、子ども心を思い出す“ワクワク”に満ちているのだ。

木のプロが運営からメンテナンスまで担当

そもそもおもちゃ美術館とは、0歳から100歳までを対象にした「豊かな出会いと多様な出番を有するミュージアム」のこと。
第一号として「東京おもちゃ美術館」がオープンし、その後は続々と各地に展開。今では静岡や徳島、沖縄など、全国に12の美術館が存在している。

運営団体は行政やNPO法人などさまざまで、「花巻おもちゃ美術館」は、地元企業である小友木材店が維持管理を含めて行っている。
民間企業による運営は花巻のみで、視察に訪れる企業も多いという。

五感で感じる木の魅力

おもちゃ美術館では、全館を通して「多世代交流」と「木育」という2つのコンセプトを掲げている。
どの館も地元の木材を中心とした内装や家具、おもちゃなどを配置。
「地域ごとの文化や自然を取り入れた空間や遊び」をテーマにしている。

花巻おもちゃ美術館では、床面に宮古市産の杉材を使用。杉は柔らかく傷がつきやすいため、床材として使用するケースは比較的少ない。
しかしここでは「赤ちゃんがハイハイしても痛くないように」という配慮から、あえて杉を選択。大人も裸足で歩きたくなるような心地よさが広がっている。

床にある傷は、子どもたちが元気いっぱいに遊んだ証でもある

大人気の「ソフトクリームブロック積み」

そんな同館では8つのテーマごとにエリアを分けており、さまざまな空間とおもちゃが待っている。

例えば「マルカンビル大食堂のもり」では、大食堂で提供しているメニューを木製のおもちゃとして再現。特に名物の10段ソフトクリームを模した「ソフトクリームブロック積み」が人気で、大人も子どもも夢中になって挑戦している。

玉山館長が「いかに集中力を切らさずに積み上げるかがポイントです」と言う通り、気を抜くとあっという間に崩れてしまう。現時点での最高記録は2021年に樹立された57段で、いまだに破られていない。

さらに「秘湯のもり」では、ヒノキで作った約1万5千個の卵がお出迎え。卵のお風呂に入ると木の感触や香りが心地よく、眠ってしまう子もいるという。

ほかにも花巻の温泉にちなんだ「温泉街のもり」や、白樺が林のように立ち並び、穴の中にかわいらしい虫のおもちゃが潜んでいる「ひっつきむしのもり」など、楽しい遊びが目白押し。

一番奥にある「のりもののもり」には、岩手県内の塗師たちが手掛けた漆塗りの滑り台もある。漆器と同じように何度も漆を塗り重ね、仕上げには浄法寺漆を使用。なんとも岩手らしい、贅沢な遊具だ。

開館4周年を記念して、新たな滑り台も作られている
「のりもののもり」の床には、30種類の木から作られたタイルがびっしり。一枚だけ漆の木のタイルが隠されていて、館内にはほかにも4個所の「隠れ漆」がある

シンプルなのにハマってしまうグッド・トイ

花巻おもちゃ美術館でぜひ挑戦してほしいのが、「グッド・トイのもり」だ。

グッド・トイとは、全国の「おもちゃコンサルタント」が選ぶ“心の栄養”になるおもちゃのこと。大きな選考基準として、「健全なおもちゃ」「ロングセラーおもちゃ」「遊び・コミュニケーション尊重おもちゃ」の3つを挙げている。

玉山館長は、「健全なおもちゃは安全性だけでなく、争いや戦争を思い起こさせないことも含まれています。また流行に頼らず、世代を超えて愛され続けているもの。そして世代や国籍、障害の有無を問わずコミュニケーションを取りながら遊べるおもちゃがグッド・トイに選ばれています」と、教えてくれた。

ブロックを組み合わせてマス目を埋めるフランス生まれのゲーム。ひらいめいたときの爽快感がたまらない

おもちゃの世界の“主食と”嗜好品“

「私たちは、おもちゃは食育に通じる部分があると考えています」と語る玉山館長。

食の分野ではご飯やパン、野菜、肉などが体を作り、お菓子やケーキは嗜好品の位置づけになる。

おもちゃも同じで、大きく分けると五感を刺激して周囲とのコミュニケーションを生む“主食”にあたるものと、テレビゲームなどの“嗜好品”がある。

おもちゃ美術館で用意しているおもちゃは、“主食”として心の栄養を育むものばかり。
なかには「知育玩具」として知られるものもあるが、同館では知育という表現を用いない。その背景には「おもちゃとの出会いは、ワクワクからスタートしてほしい」という、温かい思いがあった。

玉山館長は「最初から学びを目的にするのではなく、遊んでいるうちに自然と人との関わり方や思考力、イメージ力が育まれていく。おもちゃにはとても深い可能性があり、だらこそ世代を問わず惹きつけられるんです」と語り、優しく微笑む。
その姿に、おもちゃに対する深い愛情がにじみ出ていた。

わんこそばのお椀を使ったオセロも人気のゲーム

人と関わり、自分で考えて課題をクリアしていく力。それは、「自分らしく生きる力」にも通じる。そんな大切なことを、ここにあるおもちゃは遊びを通して教えてくれているのかもしれない。

最後に玉山館長は「おもちゃが持つワクワクは、子どもにも大人にも必要なもの。ぜひ皆さんでお越しください」と、笑顔で語ってくれた。


◆花巻おもちゃ美術館
 岩手県花巻市上町6-2/TEL:080-9257-7987

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