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この街で、この味を守り続ける

IWATE PRIDEとは
岩手で活躍する”人”にスポットを当て、魅力を伝えるコンテンツです。さまざまな角度から、大切な”人の想い”を伝えていきます。
(本コンテンツの前身は、2020年~2023年まで岩手県と協働で行った「いわてプライド」です。当時掲載した記事を織り交ぜながら更新しています)


お話しを伺った方

平船精肉店代表 竹林誠さん(2023年取材)


老若男女に愛される看板商品

平船精肉店の看板メニューといえば、なんと言ってもローストチキンだ。
年間を通して一番人気の商品で、回転ロースターの中で油を滴らせながら焼き上がるチキンには、思わず足を止めてしまうほどの魅力がある。

1965年に販売して以来の超ロングセラーで、砂糖を使わず醤油ベースで仕上げる秘伝のタレによって味を守り続けてきた。

2017年には創業者の平船繁さんから現在の代表者である竹林誠さんへと事業承継が行われたが、長く愛され続けてきたこの味が変わることはない。

衛生管理の観点から、焼き上げた後で冷やしたものを店頭に並べるのが基本だが、タイミングが合えば焼き上がってすぐの商品も販売する。
取材中もローストチキンが焼き上がると、待っていたかのように買い求める人たちが列を作った。

先代が選んだ事業承継の道

平船精肉店の建物は、築120年以上の歴史を持つ。
過去には鰻の蒲焼を出す店や、カフェ、居酒屋などが営業していて、同店は1960年に創業。
以来、街の移り変わりを見守りながら、この場所で商いを続けてきた。

後継者問題という壁が立ちはだかった際には、先代の平船さんが「店を残したい」という強い思いを胸に、第三者への事業譲渡を決意。
岩手県事業承継・引継ぎ支援センターに相談を持ちかけた。

譲渡するにあたって平船さんが提示した条件は3つ。
平船精肉店の名前を残すことと、ローストチキンの味を守ること。
そして、従業員の雇用を守ることだった。

一方、当時の竹林さんは一般企業に勤めていて、精肉店とは無縁の場所にいた。
両親が商売をしていた影響で、子どもの頃から商いへの憧れを抱いていたものの、自らの家庭もあり思い切った挑戦はできずにいた。
しかし頭の片隅には、常に諦めきれない思いがあったという。

「引継ぎ支援センターを介して平船精肉店の話しを聞いたときには、こんなチャンスはもう来ないだろうと思いました。家族と相談をした上で、事業承継をさせてもらうことに決めました」

飛ぶように売れるローストチキン

竹林さんが代表者となって、今年で6年目になる。
これまで県産品を使った手羽先のローストチキンや、先代が思い描いていたブランド豚を使ったハンバーグなど、新商品の開発も行ってきた。

ローストチキンの売り上げも上々で、2022年のクリスマスシーズンには1万5千本ほどを販売。
ロースターをフル回転させても一日に焼けるのは1000本程度のため、クリスマス用のチキンは秋頃から準備に取りかかる。

「焼き上がったチキンは真空パックにして、急速冷凍をかけて保存しています。当日に焼き上がったものも提供しますが、クリスマスになると10分も経たないうちに売り切れてしまうんです」

この時期は夜中の3時頃からチキンを焼き始める日が続き、先代もソワソワするのか、様子を見に来る頻度が増えるという。

いつまでも残したい風景

「昨年は新しい盛岡バスセンターがオープンし、だいぶ人の流れが変わりました」と語る竹林さん。
2024年には複合商業施設「monaka」の開業も予定されており、肴町界隈は、ますます賑わいを見せていくだろう。
それを視野に、竹林さんは新たな商品の構想を練っている。

「当店自慢のローストチキンを丼にして、テイクアウトメニューにチャレンジしたいと考えています。いつも立ち寄ってくださるお客様はもちろん、新たな客層にもアプローチできるような商品になるので、ぜひたくさんの人に味わっていただきたいです」

昔ながらの味を守りながら、新たな時を刻む平船精肉店。
街が変わっても、焼き上がるローストチキンに足を止める人や、夕飯の買い出しに訪れる人の姿が絶えることはない。
盛岡の街を彩る風景の一つとして、いつまでもこの場所にあり続けてほしい精肉店だ。

撮影:佐藤到

平船精肉店
岩手県盛岡市肴町5-10
TEL: 019-652-2727


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