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ベンゾの減断薬に関心を持つ医師たちの情報 いろいろ

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ベンゾジアゼピンについて医師の考え方を集めたり、取材していきます。
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#減薬

ベンゾジアゼピン減断薬 - 日本人はジアゼパムを服用すべきではないのか - ネット情報の取捨選択の困難さの一例として -

ベンゾジアゼピン減断薬 - 日本人はジアゼパムを服用すべきではないのか - ネット情報の取捨選択の困難さの一例として -

短時間作用型のベンゾジアゼピンの服用によって依存が起こり、減薬・断薬したいのだが、離脱症状のために減薬が進まず困っていると訴えられる方からのオンライン医療相談で、最近複数回、同じようなやり取りがありました。

こうした事例における対応法として一般的な、長時間作用型のベンゾジアゼピンであるジアゼパムへの置換法(置換してからの漸減法)があることを一例として紹介したのですが、何人かの相談者様が口を揃えて

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ベンゾジアゼピン減断薬 - 分服回数増は減薬・断薬成功に寄与するか?

ベンゾジアゼピン減断薬 - 分服回数増は減薬・断薬成功に寄与するか?

ベンゾジアゼピンの減薬過程で、1日の中での離脱症状の変動に苦しまれている患者さんが、服薬間隔を短くする(1日の総服薬量は変えずに服用頻度を増やす)ことでそのコントロールを図ろうとすることがあります。

これは場合によっては有用です。
総服薬量は変えずに服薬間隔を短くする(例:分3⇒分4)ことでトラフ値が上昇するからです。

ベンゾジアゼピンも含めて多くの薬物は反復投与することで「定常状態」に達しま

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各論07 減薬:Step 1-2

ものすごく単純化して申し上げれば、最初の減量後、その次の受診時までに小袋を一度も使わなかった患者さんはA群に属している可能性があり、小袋を何度か使った患者さんはB群に属している可能性があります。

「A群に属している」、「B群に属している」と断じずに、「可能性がある」というスペーサーを挟むのは、まだ減量の初期段階に過ぎないからです。A群だと思っていたのに減薬が進んでみると離脱症状が現われてB群あ

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各論07 減薬:Step 1-1

さて、0.1mgの減らし方です。

デパスを1日1回服用されている患者さんであれば、その1回分を減らして下さい。1mg服用されていれば0.9mgに、0.5mg服用されていれば0.4mgに服用量を変更します。

[デパス (1) 3Tab/3×毎食後]で服用されている患者さんであれば、1日量を2.9mgに減らします。[デパス細粒 2.9mg/3×毎食後]でも良いですし、[デパス (1) 2Tab

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各論06 0.1mgずつ減らす

減断薬のメリットとデメリットを理解し、同意を得られた患者さんのデパスの1日用量を、0.1mgずつ減らしていきます。 

その患者さんが就寝前にデパスを0.5mg服用している場合でも、3食後に1mgずつ(計3mg/日)服用している場合でも、0.1mg減らして下さい。 ちなみに、0.1mg減らしても離脱症状が認められないことが確認されたら、もしくは離脱症状が現われた後にそれが消失したら、また0.1m

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総論01 ベンゾジアゼピン離脱症状

総論01 ベンゾジアゼピン離脱症状

ベンゾジアゼピンの離脱症状について定義しておきましょう。 

毎日服用していたベンゾジアゼピン系の睡眠薬を中止したら眠れなくなった。 

これは、必ずしも離脱症状ではありません。 

睡眠薬ですから、不眠に対して処方されていたはずです。睡眠薬は対症療法に過ぎませんから、服用を中止すれば、服用開始前と同レベルの不眠が現われます。これを離脱症状とは呼びません。 

服薬中止によって、服薬開始前よりも

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総論02 個人差

総論02 個人差

前述のような機序でベンゾジアゼピンの離脱症状が起きるのであれば、一定期間、一定量の睡眠薬なり抗不安薬なりを服用した後に中止した患者さんの全員に、離脱症状が起きそうなものです。 

しかし実際にはそうではありません。 

デパスを含むベンゾジアゼピンの減薬・断薬を実行に移す際に留意しなければならないのは、離脱症状の出やすさには大きな個人差があるということです。 

例えば、ある患者さんが長期に渡って

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総論03 減薬・断薬の技法 - 一気断薬、漸減法、隔日法、置換法

総論03 減薬・断薬の技法 - 一気断薬、漸減法、隔日法、置換法

当然、僕とは異なる立場をとる医療者もいます。 

例えば「一気断薬派」は断薬(彼らには減薬という概念がありません)における1つの極と言えるでしょう。ベンゾジアゼピンを「一気に身体から抜くのが理想的」と唱える医師達がそのように形容され、それを支持する識者や患者さんもおられます。 

上述したA群や、B群でもA群よりの患者さんは一気にベンゾジアゼピンを中止してもダメージは大きくはないですから、時間とい

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各論01 治療より予防

各論01 治療より予防

長期服用(ベンゾジアゼピンの場合、数週間以上の服用は長期服用と見做すべきであるとご理解下さい)することで依存が生じ(るリスクが高まり)、傾眠や健忘、転倒といった副作用も起きやすいデパスですが、なぜ患者さんはそのような薬を長期服用しているのでしょう。 

主治医が処方を開始し、継続しているからです。 

初めから処方しなければ、或いは処方しても頓服や服用期間を限定して処方すれば、そもそも依存は生じな

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総論00 緒言

総論00 緒言

現在広く用いられている睡眠薬や抗不安薬(いわゆる精神安定剤)は、その大半が、ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下ベンゾジアゼピン)と分類される、共通の化学構造と作用機序を有する薬剤群に属します。 

デパス(一般名:エチゾラム)やアモバン(同:ゾピクロン)はベンゾジアゼピン構造を有しませんが(このため「非ベンゾジアゼピン系抗不安薬、睡眠薬」と呼称されることがあり、時に「だから安全な薬である」と誤解さ

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ベンゾジアゼピン減断薬 - 減薬・断薬はダイエットに似ている

ベンゾジアゼピン減断薬 - 減薬・断薬はダイエットに似ている

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬・断薬ってダイエットに似ているかもしれません。
多くの患者さんが「プラトー(停滞期)」局面を経験します。

順調に減らせていたベンゾジアゼピンの減量がどうしても進まなくなる。
恐らくこれは脳の回復過程が機械的には進まないことを反映しています。環境変化などがあればその影響も受けるでしょう。

僕が「○週間毎に△%減量」式の減量手順にあまり肯定的ではない理由の1つです

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