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とにかくお金がかかる

今回のテーマ: ニューヨークの子供
by  萩原久代

マンハッタンに住むには、とにかくお金がかかる。子育ても大変だ。マンハッタン以外のことはよく知らないので、ここの話を少し書いてみる。まず、住宅にかかる費用が日本と比較するとめちゃ高い。

例えば、子供二人がいれば家族4人で住むアパートを借りるか、買うか。いくらかかるのか。4人住まいだと1,000平方フィート(90平方メートル)くらいの広さが欲しい。マンハッタンの中で比較的安全で人気のある地域だと、このサイズのアパートの家賃は最低でも5,000〜7,000ドルはする。一ドル百円換算でも5,000ドルは50万円、最近のレートだと50%増の75万円となる。そして上を見ればキリがない。

アパート購入の場合、このサイズだと100万ドル(1億〜1.5億円)程度が必要だ。東京のタワマンと違わないかもしれない。が、実は購入後にかかる費用が違うと思う。マンハッタンの不動産税(固定資産税)が非常に高いのだ。1,000平方フィートの広さだと毎月1,000〜1,200ドルはかかる。固定資産税が毎月15万円も課されるマンションなんて東京にある? 月額ですよ、これ。

アメリカでは不動産税が地域の公立学校の予算を支える大きな財源となる。そのため、どこに住んでも不動産税は高い傾向にある。が、マンハッタンは全米でも高額トップクラスだろう。

さらにビル管理費がこれまた高い。ドアマン(ロビー受付)とスーパー(ビル管理担当者)が常駐しているビルであれば、1,000平方フィートのアパートだと最低でも月額1,000〜2,000ドルくらい取られる。水道料金や暖房用ガス代が含まれているケースが多い。それにしても、これも月額でっせ。

つまり、一億円で購入した自分のアパートに住むために、税金と管理費を月額25万〜40万円くらい払う。不動産税と管理費はアパートサイズに比例するので、半分の500平方フィートなら、半分の12万円〜20万円くらいということなる。

頭金を出せればローンを組んで購入すれば、賃貸でその倍以上の家賃を毎月払うよりは得策かもしれない。将来売れるから損はないはずだ。しかし、お父さんとお母さんにかなり収入がないと、子供はマンハッタンの良い地域に住めない。

さて、アメリカでは住んでいる地区の郵便番号で収入や学歴、人種構成などに大きな違いがあると言われる。マンハッタンではかなり顕著だ。ほんの500メートルほど歩くとその地域の郵便番号が変わって、街の雰囲気が大きく変わることがある。そして、それはそのままアパートの家賃と売却価格に反映される。さらに、住む場所は、公立学校の学校区(学区ゾーン)に大きく関わる。マンハッタンには6つのゾーンがあり、地域住民はゾーン内の公立学校に行くことが出来る。

高い物件が集中する安全な地域にある公立学校は、一般的に学業成績レベルが高い。それを望む富裕層がその地域に集まる傾向にあり、結局、物件は安定的に高止まりする。低所得者向けの公的賃貸アパート群はハーレムやロアイーストサイドなどにあり、そういった地域にあるアパートだと家賃も売値もずっとお手頃だが、安全に不安があったり、公立学校のレベルに問題があったりする。地域による格差はなくなっていない。

一方、私立学校も沢山ある。こちらは授業料が非常に高いが、そんなの気にしない富裕層もごまんといる。小学校だと年間授業料は3〜5万ドル。中学・高校は6万ドルを超えるところもあるらしい。カトリック系の学校は多少低めだと聞く。授業料が高いだけでなく、入学プロセスに親の面談があったり、直系親族に卒業生がいると優先されたりする。そうゆう状況であるから、裕福であっても地元に良い公立学校があればそちらを選択する親も多い。

それで、親は良い公立校のある「地元」を求める。例えばトライベッカにはPS234という公立小学校がありレベルが高く評判が良い。公立だから授業料はもちろん無料だ。郵便番号10013の地域に住む子供が優先的に入学できる。この地域のアパート物件は賃貸も売値も高くなり、近年、若い高給取りのパワーカップルが小さな子供を連れて闊歩するようになった。

でも、人気の公立学校の生徒数には上限があり、志望しても全ての子供が入学できるわけではない。同じゾーンの別の学校に行かねばならない可能性もある。ただ、ゾーンを超えた学校に願書提出も可能だし、ゾーン規制をしてない公立学校もあるから、選ばなければ義務教育は誰でも受けられる。また、ギフテッド教育をする公立小・中・高等学校もあり、要件を満たす子供はゾーン内外でそうした学校に願書を提出できる。さらに、ゾーンに縛られず願書が出せるチャータースクールやマグネットスクールと呼ばれる学校もある。公立と同様に授業料無料だが、これらは教育方針やカリキュラムが私立と同様に自由度を持つ学校だ。ニューヨーク市の学校制度は非常に複雑で、親のための様々なガイドブックやHPがある。

尚、アメリカの小学校(K-5)は、通常、5歳でK(幼稚園)から始まって同じ学校で1年生〜5年生まで過ごす。中学校は6〜8年生、高校が9〜12年生である。ニューヨークではK-12が義務教育である。

子供がいれば課外活動にもお金がかかる。色々なお稽古事やスポーツなどが出来る施設やセンターがある。うちの近所にも子供向けの空手教室やダンス教室などがある。一回45分クラスが30〜50ドル、1ヶ月〜6ヶ月の会員契約にすると少し割引になるようだ。私の行くヨガクラスとほぼ変わらない。

マンハッタンに住むのは、一人でも家族でも、とにかくお金がかかる。

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萩原久代
ニューヨーク市で1990年から2年間大学院に通い、1995年からマンハッタンに住む。長いサラリーマン生活を経て、調査や翻訳分野の仕事を中心にのんびりと自由業を続けている。2010年からニューヨークを本拠にしながらも、冬は暖かい香港、夏は涼しい欧州で過ごす渡り鳥の生活をしている。

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