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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年2月の記事一覧

2024/02/12 「ダーウィンの日」

「種の起源を書いたダーウィンは……」 眠たくなるような講座を聞きながら、私はカチカチとシ…

名野凪咲
5か月前
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2024/02/29 麗か(うららか)

ポカポカとした日は草を積む。 庭の草木を整えて、眠っているカエルをうっかり起こしてしまう…

名野凪咲
5か月前

2024/02/11 「わんこそば記念日」

「もう、いらない!」 部屋に入るなり、少年の叫びが響いた。少年の手にはお茶碗。その中には…

名野凪咲
5か月前

2024/02/28 浮氷(うきごおり)

ツルツルとした感触を楽しみながら、その子はきゃっきゃと笑った。 「つべたい」 ウサギ口か…

名野凪咲
5か月前

2024/02/27 桃の芽かき(もものめかき)

「桃の木の剪定をしないか?」 「いや。そんなの知らないし」 父からの提案を即座に蹴る。地…

名野凪咲
5か月前

2024/02/10 「ふとんの日」

パンパンと叩くと埃が舞う。天日干しした布団は柔らかくお日様の香りを吸い込んでいる。 「ぬ…

名野凪咲
5か月前

2024/02/26 草朧(くさおぼろ)

遠くが砂で煙っているようだと思ったそれは、ただ白く靄のように見える。季語ならば霞だろうか。ぼんやりしたこの空気は春のものだ。 「ふへっ。食べちゃうぞ」 隣で姪がそんな寝言を呟く。私はタオルケットを姪に掛ける。 部屋の中には四季はない。ふっと息をついて立ち上がると、私は散歩に出かける。 外に出ると月が朧に空に浮かんでいた。ひと眠りしている間に陽が落ちていたようだ。

2024/02/25 春の霰(はるのあられ)

コツコツと硬い音を立てて、それは落ちてきた。雨より硬いその塊に葉っぱが慌てたようにブルブ…

名野凪咲
5か月前

2024/02/09 「肉の日」

「お肉ううう」 まるでアニメキャラクターのように肉に食いつく姿に呆れてしまう。 「誰もと…

名野凪咲
5か月前

2024/02/24 朝朗(あさぼらけ)

はらりと空の色が一枚落ちてくる。 パシャリ はらり 今どき、スマホでもない完全フィルムの…

名野凪咲
5か月前

2024/02/23 呱呱の声(ここのこえ)

その赤子は呼吸をしなかった。 口に詰まっている羊水などをかき出し、逆さまにするとやっと弱…

名野凪咲
5か月前

2024/02/08 「つばきの日」

すとん。 小さな首が落ちた。赤い髪飾りを付けた幼子の首……のように見えた。 視界の端で見…

名野凪咲
5か月前

2024/02/22 日がな一日(ひがないちにち)

気が付くとオレンジの光が部屋に刺していた。 今日は朝早く目が覚めた……ような気がしていた…

名野凪咲
5か月前

2024/02/06 「風呂の日」

お湯につかると、その子は「お湯に入ってくれてありがとう」と言った。 彼の言葉の半分以上は「ありがとう」が付いている。彼の言葉は心地よかった。急かさない。怒鳴らない。強制しない。 そんな人間に出会ったのは、初めてだ。 「からだ、一人で洗える?」 私は頷いた。彼も頷いて、廊下に出ていった。 私は大急ぎで体にお湯をかけて、外に出た。タオルで身体を拭いて、彼が待つ廊下に出ると彼はきょとんとしている。 私は何か間違ったのだろうか? 「ちゃんと洗った? 石鹸で。あと、垢すりで体をこす