2024/02/28 浮氷(うきごおり)
ツルツルとした感触を楽しみながら、その子はきゃっきゃと笑った。
「つべたい」
ウサギ口から出てくる音はいくつか抜けている。その顔は一目で顔をしかめられてしまうくらい、人のものとは離れている。
鼻は潰れ。頭の形も潰れている。ウサギのような姿だが、話せる程度の知能は持っている。それが、人々をまた恐怖させる。
山奥まで来ると雪がまだ残っている。この辺りは小さな湖が一面凍りついている。その真ん中で、その子は走って触って転ぶ。
私は少しだけそれを眺めると、歩き出す。
この氷があの子を包んでくれるように祈りながら。
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