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秋の鳴子温泉湯治③【仙台朝市~風早峠の湧水~高東旅館へ】

<前回はこちら>

 板室温泉を出発し、東北道を更に北へ。目的地の宿までに、私にはいくつか寄らなければならないポイントがあった。

 まずは今回初訪となった「仙台朝市」。鳴子に入れば基本は毎日自炊、鳴子は街中に大きなスーパーがなく、買い出しの際は岩出山方面まで出なければならない。
 
 どうせなら新鮮なものを安く、「仙台の台所」と言われる朝市会場は以前から気になっていた。ここで日常的に使う食材を仕入れておきたかったのだ。
 仙台駅からほど近く、ビジネスホテルが立ち並ぶ一角に、威勢の良い声が響き渡る。築地を彷彿とさせる賑やかな市場。連休中とありなかなかの人出だった。会場を搔き分けるように奥に進む。初日は大した料理は仕込めないので、刺物をまず仕入れる。
 
 その他、毎日使用する野菜やキノコ類に海藻などを購入した。他に寄るところがあるため早めに切り上げたが、ここは長居してもいくらでも楽しめそうだ。

 「伊藤商店」という朝ラーメンが500円でいただける店が気になった。
しかし私が到着した時間は10時10分。朝ラーは終わりレギュラーメニューになっていた。次訪の際の課題とすることに。

 

 次の立ち寄り地は、前回も訪れている「風早峠かぜはやとうげの水」。湯治宿に入植する際の恒例儀式でもある湧水の採水。これまで数多見てきた湧水処の中でも、水質、道路付けは私の中ではここがチャンピオンだ。

 ここで30ℓの補給。この水は調理にも米研ぎにも、そして飲用水としても使用する。爆撃のように叩きつけられる水を手で掬い喉に流すと、食道をスッを通り消えていく。気付くと足元がびちゃびちゃだ。

 ここから川渡温泉までは1時間強。少し重たくなった車を走らせ、続いて加美郡にある養鶏場。以前にも寄った、「宮城開拓養鶏農業協同組合」で、「宮開のたまご」を購入。こちらキミが濃厚で、卵かけご飯でいただくのが絶品。勿論温泉卵にも。

 恐らくこれからも、このルートは定番になりそうだ。

 しかし栃木県板室からの出発。予想以上にハードな移動となってしまい身体は既にグッタリ。逗留地となる鳴子に到着したのは14時を過ぎてしまった。やはり、飯坂温泉周辺が前泊には望ましいようだ。

 鳴子の街に着くと最初にドラッグストア「薬王堂」に寄り、野菜ジュースやヨーグルトなど購入する。これで、自炊生活に必要なものは全て揃った。

 鳴子温泉の最東端「川渡温泉」へ。ゲートを潜ると何故か泣きそうになる。病気をしてから涙腺がバカになってしまったのだろうか。
 これから私の身体は必ず回復へと向かう。素晴らしい湯と、まるで帰省を迎えてくれるような御主人と女将さん。過去の記憶がプレイバックされる。


私  「こんにちは。ヨシタカです。お世話になります」
女将 「元気だった?」
私  「実は、先週発作が出て大変だったんです」
   「出立も暗礁に乗り上げたのですが、頑張って来たんですよ。今回は長いから、きっと治って戻ります」
女将 「あら。そうだったの。ゆっくりしていってね」

 出発の1週間前、私の身体には周期的に訪れるスパイク熱が襲っていた。「身体が痛い」、そう感じると僅か数十分の間に40度を超える発熱。激痛から歩くことも食べることも出来ない。

 口と鼻の中は擦過傷で一度白くなり、やがて赤く染まる。このまま救急車で運ばれ入院するケースもある。だが湯治を日常的に取り入れてから、以前の様な激しさは治まっている。今回も3日間絶食したものの、恐れていたほどの大事には至らなかった。


女将 「夜から沢山人が来るから、今は静かでいいわよ」
私  「はい。じゃあ、早速湯に行ってみます」


 連休とあり、観光客も多く訪れるという週末。私はまだ誰もいない内湯に男湯にドボン。ゴムを焦がしたような硫黄の芳香。少し熱めで、10分も浸かれば汗が流れる。

 (嗚呼、戻って来た)

 湯治がスタートした。

つづく
                          令和4年9月19日

午前10時半 仙台朝市へ
野菜類やキノコ、刺物を購入して次のポイントへ
朝ラーが気になった
風早峠の水 天然水を30ℓ補給
凄い勢いだ この水で自炊をする
以前にも寄った卵屋さん
新鮮な卵を直売している
宮開のたまご
涙の川渡ゲート
4月振りに戻って来た高東旅館
私には、この湯がなければダメなんです

<次回はこちら>


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