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【海外作家】好きな長編小説5選

先日、翻訳について考えるnoteを書きました。

こちらでも触れたとおり、私自身は海外作家の小説が大好きです。
しかし原著で読み通せるほどの語学スキルを持っていないため、邦訳された作品を読んでいます。

で、「好きな海外作家の小説」でnoteを書こう!と思い立ったものの…。
ご紹介したい作品を絞りきれなかったので、

・長編小説(一冊で一作)
・短編集(一冊に複数話収録)

に分けてみました。今回は長編です!




1.『月と六ペンス』サマセット・モーム

齋藤孝さんが著作『読書力』で、読書によって培われる能力のひとつとして「矛盾し合う複雑なものを心に共存させること」を挙げているんですが、私はそこを読むといつもモームさんの小説が恋しくなります。
モームさんの小説は、必ずしもいい人ばかりが登場するわけではありません。主要人物の誰にも感情移入できず、リアルに身近にいたらちょっと…と感じることもしばしば。にもかかわらず、とにかく面白い。
本作は画家のポール・ゴーギャンをモデルに書かれたそうで、安定した生活も家族も捨てて、情熱を注げる対象を選び挑んだ男の半生を語る物語です。モームさんなりの人間讃歌だと思います。


2.『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント

生まれながらに常人離れした嗅覚を持ち、香水の調合師として才能を発揮する男グルヌイユの、数奇な人生を描いた小説です。
訳者・池内紀さんの素晴らしい仕事を堪能できる一冊でもあり、最初の1ページ目から引き込まれてそのまま一気読みしたものでした。文字を追うことを通して、嗅覚を刺激されまくる…という稀有な体験もできます。
(ちなみに映画化もされているようですが、終盤のあの場面や結末を、映像でどう表現しているのかが気になるところ)


3.『犬に堕ちても』ヘレ・ヘレ

「泣くのにちょうどいい場所を探している。」という印象的な一文から始まる小説。スーツケースひとつでデンマークの海辺の集落に訪れた女性と、その土地で暮らす若いカップルの交流が描かれます。
知られたくない事情や、不用意に語りたくないことなど、誰だってひとつやふたつ持ち合わせているものです。人と人が分かり合うために、必ずしもそれらを無理に語ったり明かしたりしなくてもいい。そう信じられることは希望でもある。凪いだ優しい物語です。


4.『未来のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン

「アンドロイド」という呼び方を世界で初めて使った作品だそうです。人が人を創造すること、実体を持たない偶像を愛することなどを、科学者と青年貴族の様々なやり取りや明快な起承転結でもって考えさせる傑作。
「人は自分の考えることに染まるもの」というハダリーの言葉は、推し文化全盛かつSNS隆盛の現代こそ顧みるべき箴言だと思っています。
ちなみに創元ライブラリ版↓は正漢字・旧仮名遣いです。光文社古典新訳文庫から現代語訳も出ているので、そちらのほうが取っつきやすいかも。


5.『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』ジョン・スラデック

邦訳にあたってタイトルが10倍になったおかげで、字面からして強烈なインパクトですよね。背表紙も狂気を感じる仕様なので、ぜひお近くの書店でお確かめください。
「人間に危害を加えてはならない」などから成るロボット三原則より解き放たれ、人間ならサイコパスと呼ばれそうな類の残虐な行為などを通して、人間社会で成り上がっていくロボット。ここまでの説明を好意的に読めなかった人には全く勧められませんが、抵抗なくむしろブラックユーモアやSFは好きだよって挙手するような人には推したい。そんな一冊です。


まとめ

長編と書きましたが、実際にはそこまでぶ厚くない作品が多いですね。そして実際カフカ『変身』やイアン・マキューアン『アムステルダム』など、一作で一冊を占めるけど流石にこれを長編と呼ぶのは違うだろう、と外した作品もあります。

これから読みたい本にも海外作家の長編小説がいくつもあるので、今後この5選のラインナップが更新されるのかそれとも6選や7選になっていくのか、私自身楽しみです。

お読みいただき、ありがとうございました。
今日も良い日になりますように◎


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