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「夢」と呼ぶには生々しいけど

サイトマップを編集中に、少し前に書いた記事のタイトルから【もしも劇場】のワードが視界に入りました。

ふと。
その【もしも劇場】をお題にして、新しい記事を書くなら……という考え事をするうちに。
唐突に、かつて抱いた「夢」を思い出しました。


高校生の頃です。
住んでいた場所がそれなりに田舎だったので、本屋さんと言えばいわゆる「町の書店」か、車で一時間ほど行ったところにある『TSUTAYA』の二択。
そんな日々を、長らく送ってきました。

だから、県内で一番大きな『ヴィレッジヴァンガード』に初めて行った時の衝撃は、今でもおぼろげに思い出せます。

「雑貨も置いてる本屋さん」ぐらいの事前情報を、軽やかに上回る。
置いてあるものの種類も、陳列方法も、独特なポップのつけ方に至るまで。目に映るすべてが、とことん強烈。
そんな店内の様相に「ここはいったい何なんだ!?」と度肝を抜かれ、気が済むまで店内を隅から隅まで見て回ったものです。


たまにしか行けなかったけど。
だからこそ、その「たまに」の機会が大事で。
同時に、芽生えた「夢」がありました。

当時愛用していた、旅行用のキャリーケース。
(2泊3日程度の旅に推奨されていたサイズでした)
それを持ってヴィレヴァンに行って、好きなだけ買い物をしたい。
そして、パンパンになった重いキャリーケースを引きずって帰りたい。

おうちに帰るまでが遠足、というやつでしょうか。
ただ「好きなものを買う」だけじゃなく、大満足で帰路につくところまでがワンセットだったのは、今思い返してみても興味深いものです。


その後、上京して『ジュンク堂書店 池袋本店』や『紀伊國屋書店 新宿本店』などの大型書店に魅了され。
同時にヴィレヴァンから足が遠のいたこともあって、キャリーケースを持って好きなだけ……という夢は記憶の彼方へ。

久々に思い出したのは、2020年のこと。
特別定額給付金の10万円を受け取った時です。

「10万円分の本を買えば、キャリーケースをパンパンに出来るかな?」

自分でも驚くぐらい唐突に、もう持ってない「キャリーケース」という単語が思い浮かんだ直後。
それまでずっと忘れていたのが信じ難いぐらい鮮やかに、かつて抱いた「夢」を思い出しました。


「夢」に限らず。
本当に大切なら、忘れて失うなんてことは有り得ないのかもしれない。

普段は記憶の底の方に沈んでいるか、もしくは大事に仕舞われているだけで。
きっかけさえあれば、時の経過を経てもなお変わらない姿で向かい合える。
そう経験的に理解するのは、決して悪いものではありません。


最初に書いた【もしも劇場】からの連想。
それを、今の自分が言葉にするとしたら。

もしも10万円分の本を買えるなら。

でしょうか。
選んで買うだけじゃなく、その「買った本たち」を読むために、ひたすら引きこもる休日を過ごすことも込みで。
(持って出て好きなカフェで読むのもいいね)


「好きなだけ」という天衣無縫な響きから、具体的な数字へと置き換わったことで。
悪く言えば生々しく、しかし良く言えば実現の可能性が芽生えてきた気もします。

とはいえ実際にやるとなると勇気が要る。
今の私にはまだ無理なので、未来の自分にバトンを繋ぎたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。
金曜日ですね。
今日も良い日になりますように◎


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