赤 い 花 を た ず ね て
まぶしい赤と
ハートを5つ、円に繋げたような花びらが
とびきり可愛い
花の苗を見つけました。
背丈はまだ十数センチほどで
ふっくらした蕾もいくつか付いています。
そこは、園芸店の店先です。
どこか見覚えのあるお花、と思い返して
浮かんだのは
学生のころ、通学路の途中にあった
一軒のクリーニング屋さんでした。
*
家の一階に店を構えている
クリーニング屋さん。
くすんだ青のオーニングに
「クリーニング」の白い文字。
おじいさんとおばあさんのふたりで
切り盛りされているお店で
店先には、花の鉢やプランターが
幾つも並べられていました。
その中にこの花が咲いていたのです。
きっと、
丹念にお世話されていたのだと思います。
朝顔、あじさい、ペニチュア、百日草、、
季節に合わせて息をするように
店先には色んな種類の花が咲きました。
花は、いつもふわっと、楽しそうに
まるで、訪れる人を
お出迎えしているような表情です。
高校生だった私は
店前を通って学校へ向かうのが
小さな愉しみでした。
*
園芸店からの帰り道。
バスに乗りました。
そろそろ夕日が傾き始める時間です。
派手な看板が並び、
所狭しと店舗がひしめきあっている
人工的な風景のなかを
バスは、スイスイと通り過ぎてゆきます。
コストも手間もかかるお花はやはり
合理的でないのでしょう。
30分間の乗車時間、
気にかけて町を見てみると
店先にお花が咲くお店は
ほとんど、見受けられません。
時間や数字に追われるようにして
過ごす人が増える今、
花を育てようと思う人も
咲く花に目を落とす人も
もっと減ってしまうのでしょうか。
コトン、コトン、と
ちいさく揺れる車窓から
流れていくモノクロの風景を眺めながら
ふと、そんなことを
考えてしまいました。
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿