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【読書ノート】『企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか』
読んだ本の気になる部分を書き留めていきます。
今回採り上げる本は、
『企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか』
著.宇田川元一 です。
✅本書を手に取った切っ掛け
Xの投稿で、宇田川さんの新刊が2024年6月21日に発売されることを知り、手に取りました。
宇田川さんが書かれている「他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論」を読んで、面白い本であったため、興味を持ったことが手に取った切っ掛けです。
✅目次
全体を俯瞰するため目次を書き留めておきます。
序章:企業変革のジレンマにどう挑むか
第1章:あなたの会社で今、起きていること
第2章:企業変革に必要な4つのプロセス
第3章:構造的無能化はなぜ起きるのか
第4章:企業変革に必要な3つの論点
第5章:「わからない」壁を乗り越える(多様性)
第6章:「進まない」壁を乗り越える(複雑性)
第7章:「変わらない」壁を乗り越える(自発性)
第8章:企業変革を推進し、支援する
おわりに
✅書き留めたところ① 構造的無能化とは
本書ではまず、今日の日本企業でよく見られる状況について考察を行う。
そこから浮かび上がってくるのは、組織の断片化が進む中で思考の幅と質が制約され、それぞれの部門や部署で目先の問題解決を繰り返し、徐々に疲弊していく企業の姿である。現在の事業をより効率的に、合理的に実行しようとするために分業化が進み、ルーティンが定まってくることが、結果的に組織内の視点の硬直化をもたらす。
本書では、そうした組織劣化の問題を「構造的無能化」と呼ぶ。構造的無能化とは、組織が考えたり実行したりする能力を喪失し、環境変化への適応力を喪失していくことである。そして、本書では、この構造的無能化が、どのようなメカニズムで生じてくるのかについて考えてみたい。
構造的に無能化する組織を変えていくためには、組織の様々な問題を1つずつ紐解いていくほかにない。その際に必要となるのが、対話的な思考と実践である。
緩やかな衰退局面にある企業が、経営危機に陥る前に、事業ポートフォリオや事業ドメインを変え、長期的な成長を叶えられるようにすること。そのために、自ら考えられず、実行できないという構造的無能化の状態から抜け出し、未来への適応力を身につけていくこと。これが、事業再生ではない、もう1つの企業変革の目指すところであす。
企業変革に向けて、
構造的無能化が変革を阻害する状態から抜け出すため、
対話的な思考と実践を行うこと。
本書は、このような流れとなっています。
✅書き留めたところ② 変革の4つのプロセス
では、私たちが目指す長期的な変革に必要なことは何だろうか。
それは主に、次の4つのプロセスを円滑に実践できるようになることである。
①全社戦略を考えられるようになる:自社の将来的な方向性を示す全社戦略を構築する。
②全社戦略へのコンセンサス形成:全社戦略に基づき、各役員が自分の役割を理解する
③部門内での変革の推進:各役員が考えた事業戦略を部門内で共有し、新規事業開発や様々な変革施策を展開する。
④全社戦略・変革施策のアップデート:各部門のミドルマネージャー以下のメンバーが、全社戦略と事業戦略の関係を理解し、事業戦略推進上の課題から変革の方策を考え、それを戦略へと落とし込む
変革の4つのステップが、組織内で言語化されており、
共通の言語をもって変革を語ることができることは
とても重要なことだと感じました。
組織内で共通言語を持つこと、
意外にどの企業も出来ていないですし、
そのためには、言語を整理する時間と対話が必要です。
✅書き留めたところ③ 断片化・不全化・表層化
組織の「断片化」が進むことで問題が見えにくくなり、変化の兆しも見出せず、組織の考える能力が著しく落ちていく。その結果、新たな戦略や施策を実行することもできないという「不完全化」に至り、それを紐解くことができない「表層化」によって、悪循環が生まれる。これが構造的無能化のメカニズムである。
一方、ワイクは、組織を多様性の認知と削減の過程から意味が形成されていくセンスメイキングのプロセスとして捉えた。この考え方は、それまでの組織理論とは大きく異なる。
彼が導き出した重要な結論の1つに、「組織は多様性を認知し、削減し、解釈の枠組みを保持するという一連のプロセスを経て環境適応を果たすと、新たな多義性の認知が難しくなる」というものがあり、その現象を彼は「適応が適応可能性を排除する」と表現している。
「適応が適応可能性を排除する」
組織は、その成功に至る過程で、衰退の萌芽を抱えている。
完全な組織はない。
組織をメタ認知することの重要性がここでは記載されています。
✅書き留めたところ④ 直線の論理と曲線の論理
一人ひとりは仕事をする中で様々なものに出会い、それに応答しながら、その人の仕事人生を構築していこうとする。その応答が持続可能であるためには、「直線の論理」(例えば、戦略や資源配分、制度、分業などの経営上の論点)と「曲線の論理」(例えば、個人の機会の発見や問題意識)との間で、互恵的な関係が築かれる必要がある。
そして、直線の論理と互恵的関係がうまく構築できれば、それが社内で広がり、変革的な動きにつながる可能性がある。そこでは、性質の異なる2つの線の接点をいかに接続できるかということが、活動の持続性の決め手となるだろう。
例えば、変革を推進する立場の人々が直線側にいることが多いとするならば、直線側の学習能力が問われていると言ってよい。つまり、「そのような活動は取るに足らない活動だ」「よいと思うけれど、正直よくわからない」といった解釈にとどまっていれば、曲線的なアイデアを適切に直線的なアイデアにつなげることはできない。その結果、アイデアを事業化したり、変革的な動きへのとつなげたりすることも難しくなる。
もちろん、曲線側からのアプローチもありうる。例えば、直線側の論理に沿うものとして、自分たちの活動を構築できれば、その活動に対して必要な支援を得やすくなる。とはいえ、支援を受ける側にも継続的な学習の積み重ねが不可欠である。
以前取り上げた本「心理学的経営: 個をあるがままに生かす」の中で、「カオスの演出」という言葉が使われていました。
環境の変化に適応するということは、本質的には、それ以前の環境に適応していた自己を破壊することからはじめなければならない。バランスのとれた、安定した、形式の整った状態は、環境の変化に対して強い抵抗を引き起こすことになり、そのことは結局は変化についていけず、自滅の途を転がり落ちる結果になってしまう。・・・こうした現状の自己否定が組織に葛藤と緊張をひき起こし、組織内の均衡状態を崩していく。これがカオスの演出という活性化のための最初の戦略として認識されなければならない。
組織のタテマエと個人のホンネ、この2つに互恵的な関係が築かれること。
この互恵関係を築く上での方法として、「ストーリーテリングの力」があげられています。
リーダーが語り手となり、メンバーに対して「ストーリーテリング」を行うのも1つの方法だろう。ストーリーテリングとは文字通り、語り手が「身近な物語を語る」ことである。
一見すると、このストーリーテリングは語りかけの行為であり、応答ではないのではないか、と思われるかもしれない。
だが、これは協応行為の中で最初の応答として位置づけられるものだ。なぜなら、聞き手にとって意味のあるストーリーを語るためには、聞き手の視点に立って捉え直すというプロセスが必要であるからだ。これはある意味、聞き手の「声にならない声」に対する応答であるとも言える。
ここまで見ていくと、この本の考え方を組織に実装するためには、前述した本「心理学的経営: 個をあるがままに生かす」にある「戦略的活性化の4ポイント」が必要ではないでしょうか。
私は企業の戦略的活性化のポイントを「一に採用、二に人事異動、三に教育、四に小集団活動、五にイベントにまとめられます。これに共通しているのはカオスの演出です」と述べた。
✅読後メモ まとめ
企業変革に向けて、
構造的無能化が変革を阻害する状態から抜け出すため、
対話的な思考と実践を行うこと。
これがこの本に書かれています。
変革のプロセスは、
全社戦略を考えられるようになる
全社戦略へのコンセンサス形成
部門内での変革の推進
全社戦略・変革施策のアップデート
の4つであり、
これを組織内で共通言語化しつつ、
これが実現されるには、
既存事業の慣性力をメタ認知する能力
組織における不変の価値観の共有
メンバーを巻き込むストーリーテリング
が求められ、
本書外のことであるが、
これらが、下記人事制度と整合していること
採用
人事異動
教育
小集団活動
イベント
が企業変革の際に求められると感じました。
これって結局は、
具体と抽象を認知で行き来すること、
自己と他者を対話で行き来すること、
という日常での思考のトレーニングが重要な気がします。
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