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【読書ノート】他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論

読んだ本の気になる部分を書き留めていきます。
今回採り上げる本は、『他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論』著.宇田川元一です。


✅本を手に取ったきっかけ

HRアワード2020 書籍部門最優秀賞受賞と書籍の帯にありますが、至るところで、この本の話題を耳にすることがあり、手に取りました。

人と人との関係性について、大切なことが、丁寧に描かれている印象を頂いた本です。

組織論という観点で、関係の矛盾に向き合うことの大切さ、をこの本から得ました。

以下、書き留めた部分と読後の感想を記載していきます。

✅書き留めたところ① 適応課題と対話

ロナルド・ハイフェッツ。
彼は、既存の方法で解決できる問題のことを「技術的問題」(technical problem)、既存の方法で一方的に解決ができない複雑で困難な問題のことを「適応課題」(adaptive challenge)と定義しました。

他者と働く p.4-5

見えない問題、向き合うのが難しい問題、技術で一方的に解決ができない問題である「適応課題」をいかに解くか ー それが、本書でお伝えする「対話」です。
・・・
 対話とは、一言で言うと「新しい関係性を構築すること」です。

他者と働く p.5-7

 その一歩目として、相手を変えるのではなく、こちら側が少し変わる必要があります。そうでないと、そもそも背後にある問題に気がつけず、新しい関係性を構築できないからです。
 しかし、「こちら側」の何が変わる必要があるのでしょうか。
 それはナラティブです。「ナラティブ(narrative)」とは物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のことです。・・・・
 ナラティブは私たちがビジネスをする上では、「専門性」や「職業倫理」、「組織文化」などに基づいた解釈が典型的かもしれません。

他者と働く p.32

「対話」を通じた「新たな関係性の構築」により、「適応課題」を乗り越えていくことが、この本の中で記載されています。

この考え方は、職場だけでなく、家族、友人との関係性についても役に立つ考え方ではないでしょうか。

この考え方を関係者全員が共有できていれば、関係性がより良いものになっていきそうです。

✅【読後メモ】組織構造上の問題について

この部分を読んでいて、感じたことは、

職場において「適応課題」と認識したことが、
実は組織構造上の「技術的問題」でもある

ということがあり得るのではないかという点でした。

例えば、

・ゴミ箱が満杯であると気づいた人がゴミ箱のゴミをまとめて捨てる。

・手が空いている人が外線電話に出る。

という暗黙のルールの職場で、

・いつも自分ばかりがゴミを捨てていて、あの人は気づいてもやらない。

・あの人は手が空いていても外線電話を取らない。

といった、問題があった時に、

これを

(前者)「適応課題」と捉えて対話をするのか、

(後者)「責任の所在が曖昧」という「技術的問題」として捉えて、
「ごみ捨て当番」「電話当番」を日替わりで設けて管理者が管理するのか、

どちらが望ましいかで言えば、後者の方が望ましいように感じます。


また、営業部門と新規事業部の間でコンフリクトがある場合、
両方の事業部を統括する事業本部長を設けて、
営業部門に、新規事業部門への協力を定量的な目標として設定する、
といった、
両部門に跨る責任者の設定と、営業部門と新規事業部門の目標の整合を図ることを前段として取り組む必要があると感じました。

職場における問題は、組織デザインと密接に関わるため、

・責任の所在
・公式なコミュニケーションライン

の2点を組織上の技術的問題として手を打った上で、
適応課題に対処する流れが必要ではないでしょうか。

また、

技術的問題か適応課題か、ではなく
技術的問題も適応課題も、対応する

取組が求められます。


✅書き留めたところ② 私とあなた、私とそれ

友達ではなく、仕事の関係なのですから、私情は抜きにして、立場や役割によって「道具」的に振る舞うことを要求する。人間性とは別のところで道具として効率性を重視した関係を築くことで、スムーズな会社の運営や仕事の連携ができます。
 逆に期待していた機能や役割をこなせなければ、信用をなくしたり、配置換えにあったり、解雇されたりします。これ自体は悪いことではありません。そのように私たちは社会を営んできました。これが「私とそれ」の関係性です。
 一方で、「私とあなた」の関係とは、相手の存在が代わりが利かないものであり、もう少し平たく言うと、相手が私であったかもしれない、と思えるような関係のことです。
 例えば、上司と部下という関係はときに上下関係や対立を生み出すものです。しかし、優れたチーム、困難な問題に挑むチームは、上司と部下という公式的な関係を超えた、ひとつのまとまりとして動いているように見えるときがあるものです。そうした状態は、「私とそれ」の関係性から個々の違いを乗り越えて「私とあなた」の関係性へ移行したものとして捉えることができると思います。

他者と働く p.21-22

しかし、「私とあなた」であるはずの組織メンバーを道具として「私とそれ」の関係性のみで用いようとすれば、どこかに現場をうまく動かす方法がないかと思案を繰り返すようになります。そうしたことは、現場には思っている以上によく伝わります。そして現場は、その結果として、道具として経営陣を見るようになります。面従腹背や仕事に対する低いモチベーション、足を引っ張る文化などはこうして生み出されます。
常に「私とあなた」でいる必要は当然ありません。とりわけ実行が重要なフェーズでは、道具としての関係性は非常に重要です。しかし、その道具的な関係性の中で何かがうまくいっていないことがあったときには、対話を実践することが必要になります。

他者と働く p.128

職場の場合、会社が順調な時には、「私とあなた」「私とそれ」の関係性の違いは表に出てくることは少ないですが、

会社が上手くいっていない時、「私とあなた」「私とそれ」の関係性の違いが表面化してきます。

「私とそれ」の関係性の場合、
会社が上手くいっていないと、
他人事のような「社内評論家」や「批判者」の増加、
組織内での足の引っ張り合い、
業績悪化理由の擦り付け合い

が発生します。

常に「私とあなた」の関係性ですと、組織の進むスピードが遅くなりますが、

物事が上手く進まない時、
まず、こちらが変わる。

という認識が共有されている「私とあなた」の関係性が出来ていることは、困難を乗り越えて、組織を継続していく上で必要な要素です。


✅書き留めたところ③ 溝に橋を架ける

 対話のプロセスは「溝に橋を架ける」という行為になぞらえることができます。
・・・
 この「溝に橋を架ける」ためのプロセスを大きく4つに分けることが出来ます。

1.準備「溝に気づく」
相手と自分のナラティブに溝(適応課題)があることに気づく

2.観察「溝の向こうを眺める」
相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティブを探る

3.解釈「溝を渡り橋を設計する」
溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る

4.介入「溝に橋を架ける」
実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く

他者と働く p.38-39

「相手の立場で物事を見る」という言葉にすれば簡単なことですが、
実際に実行するとなると、自分に余裕がないと難しいことです。

自分が苦労してきた経験や、
映画や小説での他者の経験の疑似体験、

がないと、なかなか「溝に気づき」「橋を設計すること」が難しいのではないかと思いました。

✅【読後メモ】コミュニティをずらして想像する

要はとにかくムシが好かねぇ
何かって言やぁすぐにムシ返すタネ
アイツと違って粘着じゃねぇ!
と自分じゃエバってんのに
ぶり返す邪念

あるいは立場を交換すると
ヤツにさえかすかに共感する
どころかヘタすりゃ共通項ばっか
だったりして、ちょういとこいつは困った

こちらから見りゃサイテーな人
だがあんなんでも誰かの大切な人
ならいいじゃん?と思えた不思議
風向きだって変わるさそのうちに

RHYMESTER「POP LIFE」の歌詞より

相手が所属しているコミュニティをズラして想像することが、観察の切っ掛けを与えてくれるように感じます。

職場では関係性の問題を抱えている相手も、
家庭では、子育てや介護で頑張っていたりする。

それぞれの事情や立場があって、
それぞれ必死に頑張っている。

視点をズラすことができると、少し、相手への見方が変わり、溝に橋が架けられそうです。


✅【読後メモ】組織における矛盾と向き合う

組織が永続するためには、
組織の構成員は代替可能であることが求められます。

その人がいなければ組織は回らない

そのような状態に陥ってしまうと、
組織の継続は困難となります。

一方で、この本にあるように

「私とあなた」の関係とは、相手の存在が代わりが利かないものであり、もう少し平たく言うと、相手が私であったかもしれない、と思えるような関係のことです。

他者と働く p.21

代替不可能な存在として組織の構成員を認識することでしか、解決が難しい問題もあります。

このような組織における矛盾について、組織の構成員が同じように向き合いながら、仕事を進めることが出来ると素晴らしい職場になるかもしれません。

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