あすや

※本コンテンツは「東方Project」の二次創作です。

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マガジン

  • 忘れ去られし者たちの物語

    「このキャラが幻想郷に来る前に、どんな物語があっただろう?」という妄想を元にした二次創作です。

最近の記事

満月の夜に灯火を(前編)

 ここは幻想郷。外の世界で忘れ去られし者が集う場所。妖怪から神まで様々な種族が存在するこの世界だが、ここにも人間という種族は存在している。そんな幻想郷の人間は、主に人間の里で賑やかに暮らしている。 「……えー、じゃあ明日はこの宿題を提出すること! くれぐれも忘れないように!」  そんな里の一角にて、誰かが張りのある声でそう言っているのが聞こえてくる。ここは里の子どもたちが通う寺子屋。この寺子屋で教鞭をとっているのが今発言した彼女、上白沢慧音だ。彼女はとても真面目な性格であり、

    • 閉じ込めた日々を瘡蓋で綴じて

       私には、忘れられない「ある出来事」がある。  それは今まで誰にも言えなくて、自分で思い出すことすら憚られる類のものだ。  意図せず思い出した時は辛かったし、忘れてしまいたいと心の底から思っていた。どうにかして過去の痛みを消せるなら、どんな方法にでも縋ったと思う。  だけどあれから大分時間が経った今では、その傷も少し癒えたのかもしれない。時間が解決してくれるという言葉は、ちょっとだけ本当なのかもしれない。  それでもやっぱり今でも誰にも言えないし、言いたくない。だから自分だけ

      • 僕は道端の小石に話しかけている

         ぼくには、ぼくだけに見えるおともだちがいる。  その子の名前はこいしちゃん。  どこから来たのかも、ふだんどこにいるのかもぼくは知らない。  だけど、ぼくがさびしい時にはいつもちゃんと来てくれるんだ。  *  とある一軒家の六畳間。そこにはおもちゃがたくさん並んでいる。その真ん中に座っている少年は、側にあったおもちゃを一つ取って遊び始めた。特に「これがいい!」といったものもないらしく、ある時は積木をやったり、またある時は黙々と知育玩具で音を鳴らしたり。その時によって遊ぶ

        • 僕らはずっと子どものままで

           ――「16時に公園集合ね!」って約束してるのに! こんな日に限って先生のバカ!  そんな思いで少女は学校からの帰路を必死に走っていた。本来は二十分くらい前には家に帰れていたはずなのに、急遽先生に呼ばれて帰りが遅くなったのである。教室を出る頃には約束の十五分前。急いで帰ってランドセルを置かなければ遅刻は確定だった。  少女は校門を出るなり、数年間通ってすっかり慣れた道を順番に曲がってゆく。後ろに背負っているランドセルの中身がガタゴト音を立てて上下に振られていた。走る時に、ラン

        満月の夜に灯火を(前編)

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        • 忘れ去られし者たちの物語
          7本

        記事

          許されざるあの人へ(後編)

          「――ありがとう、小傘。いい時間になりました」  小傘の過去の話を聞いていた村紗は、横にいる小傘にそうお礼を伝えた。それに対して小傘は「いいえー」と答えたが、直後に「あれ?」という表情になる。 「話を聞いてもらったのは私だから、お礼を言うのは私の方なんじゃ……? あれ?」 「あはは。まぁ話させた発端は私にありますし、細かいことは気にしなくていいんじゃないですか」 「うーん……そっか、それならそういうことにしよう!」  お互いに納得する地点に落ち着いたところで、この会話は一旦終

          許されざるあの人へ(後編)

          許されざるあの人へ(前編)

          「……そろそろ見回りでもするかな」  村紗はそう独り言ちてから、命蓮寺の縁側からぴょんと飛び降りる。普段はナズーリンが見回りを担当してくれているが、現在は星の宝塔を探しに出ていて留守だ。まったく仕方のないやつだ、後でナズーリンにめちゃくちゃ文句を言われることだろう。  真っ青な空が広がる下で、村紗は寺の内外の見回りを開始する。人間も妖怪も分け隔てなく受け入れるこの寺は、人(人間も妖怪もひっくるめて、ね)の出入りがそこそこある。信仰があるのはありがたいことだが、たまーに変な人の

          許されざるあの人へ(前編)

          ずっとそばにいた僕の神様

           ハッ、ハッ、と息を短く切らす音。それと同時に、ザッ、と地面の土や砂利が靴底と擦れる音。その音たちは、一人の少年によってどんどん上方へと連れ去られてゆく。周囲の美しい緑を広げる木々も、真上に広がる飲み込まれそうな青い空も、少年はお構いなしに上へ上へと走ってゆく。  彼がひたすらに目指している場所は、ただ一つ。 「着いた……っ!」  膝に手をつき、彼は叫ぶようにそう独り言ちた。そんな少年が立っているこの場所は、とある低い山のてっぺんだ。周囲にはもっと高い山もあるのだが、いくら登

          ずっとそばにいた僕の神様